キャラクリ
ベータテスト採用の通知を受け取ってから半月ほど経過した。その間に何度かサイトにいき追加情報などがない確認していると新しい情報が掲載されていた。
「今週末からベータテスト開始か。それで、明日からキャラクタークリエイトができるようになると」
「奈々はいいな。私は結局当選なかったし」
「これもなにも日頃の行いの差だね」
「PKプレイヤーが日頃の行いね~」
「ゲームの中はまだしも現実ではいい子だもん」
そんな会話をしながら帰路についた。気候も春から梅雨の時期に変わろうとしているので少しずつ湿度が高くなってきている。そして今週末はゴールデンウィークとなる。
家に着くと宅配便の不在票が入っていたので確認してみるとロキからの荷物のようで携帯で今すぐ再配達するように依頼して荷物が届くの待っていた。
「お届け物でーす」
「はーい」
というわけでロキからVRマシンとゲームソフトが届いた。私は届け物を確認すると早速VRマシンの機動準備をすすめることにした。今回送られてきたVRマシンはチェアタイプのようで、普段PCを使う際のイスと取り替える形で設置した。LANケーブルは今PCにつながっているのを利用しPCは無線に切り替える。
そうしてマシンのセッティングは完了した。
「よし、今できることはなんだろうな」
今現在できることを確認してみると、転売防止用の生体情報の登録と同封されている「origin status online」のインストールしかできないようだった。なので、生体情報の登録をすすめることにする。説明書に従って腰掛ける。
生体登録は簡単に終わった。登録するのは二つで声紋と指紋となる。指紋は肘掛のところに指紋を読み取る機械がありそれに付いているボタンを押すことで登録ができた。声紋はチェアに付いているマイクに入るように声を出すと登録ができる仕組みになっていた。
これでログインするときは肘かけの指紋認証から指紋を確認しログイン時に発生することで声紋認証を行う仕組みのようだ。
「ふ~。思ったより時間かかったけどなんとかセット終わったかな。この椅子どうしよう。お父さんたち使うか聞いてみよう」
「ただいま~」
「お母さん、おかえり。私が使ってた椅子いる?」
「どうしたの急に」
「この前話してたVRマシンが椅子の形状だったから普段使ってる椅子をこれに取り替えたんだ。その結果今まで使ってた椅子が余っちゃって」
「なるほどね。茶の間に出しときなさい。誰か使うでしょ」
「は~い」
お母さんに言われたとおり今まで使っていた椅子を茶の間に持っていき空いている場所においた。そうしているとお父さんも帰ってきたようで3人で夕食を食べる。夕食の時に週末からベータテストが始まると言うとお父さんよりゲームも程々にしろよと釘を刺されてしまった。
お風呂に入った後今日はゲームせずに寝ることにした。
翌日の夕方。学校から帰ってきた私は早速キャラクリを実施するためにゲームを起動する。起動すると白く何もない空間にいた。
「ようこそ、origin status onlineへ。本日はまだorigin status online内での寄り代となるアバターの制作のみ可能です。制作を開始しますか?」
白い空間の中、周囲をキョロキョロしていると背後から女性の声がしたので振り返った。振り返った先には白いゆったりとしたワンピースを着た20代ぐらいの女性が立っていた。
(声も合成音声とかじゃないみたいだったし、すごく自然だな)
「?どうかしましたか」
「ごめんなさい、予想以上にクオリティ高かったので」
私が様子を見ていたらナビゲーション担当している彼女が聞いてきた。それに対し素直にクオリティに驚いていたことを伝えると彼女は微笑みながら答えてくれた。
「まぁ、驚きますよね。私はorigin status online以降はOSOといいますね。OSOの入退場。赤羽様がわかりやすいように言うとログインとログアウト、初回ログイン時のアバター作成を主に担当しているAI-30でございます」
「なんて呼べばいいのかわからないんですけど、名前とかないんですか?」
「基本私たちは管理番号で呼ばれるので名前はありません」
「それなら名前つけていいですか?」
「名前いただけるのですか?」
「もしかして嫌だった?」
「とんでもない。ぜひ付けてください」
ナビゲータさんにそう言われてしまったのでAI-30の数字部分からミオと付けてあげることにした。安直だけどね。
「ミオって言うのはどうかな」
「ミオ」
「うん、ミオ。30の語呂合わせだから捻りもなにもなくて申し訳ないんだけど」
「いえ、とても嬉しいです」
「それじゃ、改めて宜しくねミオ」
「はい、よろしくお願いします」
AI-30さんあらためミオさんの名づけタイムという突発イベントは終わりミオさんの本来の仕事キャラクリへと移行していった。
「それでは、順番に決めていきましょう。まず赤羽様のプレイヤーネームをお決めください」
ミオさんがそう言うと私の目の前に半透明のキーボードが出現した。私は普段から使っているプレイヤーネームである「赤名」と入力し完了を押した。するとミオさんが私と同じように何かを操作しニコリと微笑み問題ありませんと言ってくれた。最近のMMOにはよくあることだけど同一名は利用不可なのでその確認をしてくれていたのだろう。
「それではアバターの見た目の設定お願いします。ただしリアルそのままは控えるようお願いします」
「これって一から決めないとダメですか?」
「リアル情報を元に素体を出せますがそうしますか?」
「はい、お願いします」
私はミオさんにお願いしてリアルの自分が目の前に出来上がった。身長は150センチほどでいじれるのは上下10センチ程度。なので私はリアルの身長より10センチ低くする。ほかは髪の色を深紅に変更、瞳の色を髪よりは明るい赤にした。これでだいぶん見た目は変わるだろう。胸のサイズはリアルのままで問題ない胸が大きいと隠密の邪魔になるし。
「それではこれにもう少し手を加えて大丈夫でしょうか」
「はい、いいですけど。まだ足りなかったですかね」
「そうですね、髪型などを少しいじれば大丈夫ですがどうしますか」
「そうだね、それなら、髪をポニーテールにできますか?」
「はい、可能です。こんな具合でどうでしょう」
そう言って私のアバターを見せてくれたアバターは深紅の腰ぐらいまでのポニーテールに真っ赤な瞳をもった幼女となった。
「それでは現在の姿をアバターに変更します」
「いいよ」
わたしが了承すると視界が一段階下に下がった。それによってアバターに変わったのだと判断できる。いつもより10センチ低い状況であたりを走ったり、飛び跳ねたりした。それによって身体の具合を確かめてみるとリアルより動きやすいと感じるほどだった。
身体能力の具合を確かめたあとこのゲームのメインコンテンツの選択に移っていくことになった。
プロローグは後1話で終わります。