当選
翌日、学校に行く途中に凛と合流した。凛との今朝の会話は専ら「origin status online」のことだった。凛に聞いてみると凛も登録だけはしてもいいとのことだったようで凛も応募したようだ。これで二人とも採用されればいいんだけどそんなことはないだろう。と思っていると凛が話を変えて来た。
「それはそうと昨日は相当いいの手に入れたんそうじゃない?昨日奈々にキルされたプレイヤーが掲示板で愚痴ってたわよ」
「まぁそこはPVEに固執しすぎてPVPをおろそかにした自分たちのせいだからなぁ」
「まぁそうだけど。でも奈々の不意打ちから逃げれる人も少ないと思うんだけど」
「いつもはそうだけど、今回は事前に声かけたもん」
「そういえば昨日はそうだったって話だよね。女の声が聞こえたと思ったら死んでたっていう書き込みしてあったし」
その書き込みはどうやら最初にキルした弓使いの人の書き込みだろう。それに昨日のPKは本当にボーナスだった。なにせ普段は不意打ちで全て倒しているのに今回はちゃんと声を掛けてから攻撃を開始していたのだから。
そんな話をしながらも数日が経過しベータテストの募集が終わった翌日。学校の昼休みいつもどおりレトロゲームの縛りプレイをしていると携帯が揺れた。私は切りのいいところまで進めてから携帯を覗いてみた。
携帯を確認してみるとメールの受信が1件と表示されていた。
届いたメールを確認してみるとロキからのメールだった。
メールの内容を確認してみるとそこには以前応募したベータテストの申し込みの結果通知だった。そのメールの始まりを見て私は自身の目を疑った。
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赤名様
この度は弊社の新技術のテストにご協力頂きありがとうございます。
保護者の許諾の確認が取れました。
また厳正な抽選の結果、未成年テストプレイヤー100名に選ばれたことを報告いたします。
後日、VRマシンとともにインストールメディアを送付致します。
origin status onlineの詳細は下記URLより確認いただけます。
URL
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という内容だった。URLはまぁ後で確認するからいいとして、何故ロキは赤名のことを知っているのだろうか。応募する際は特にプレイヤーネームなどは求められていなかった。それに、ロキ製のゲームもやっていなかったはずだ。そんなことを考えていると凛が私の席にやってきた。
「奈々、難しい顔してどうしたの?」
「ひひゃひ、ひょっほ」
凛が私のほっぺをむにむに動かす関係でうまく言葉をしゃべることができていない。なのでしゃべりづらいながらも講義の声をあげる。
「ひゃヘリひゅらいからひゃめへ」
「あぁ、ごめんごめん。奈々のほっぺぷにぷにで触り心地良かったから」
「どうせ太ってますよ」
「そんなこと言ってないって。それでどうしたの難しい顔してたけど」
「あぁ、実はさっき、ロキからメール来たんだけど、赤名って名指しで来たんだ」
「ふーんそうなんだ・・・。それって、まさか」
「うん、そのまさか。ベータテストに選ばれた」
凛にそう告げると凛は自分の携帯を確認して落胆する。それを確認し、すべてを察したので凛を慰めることにした。
「凛、大丈夫。凛の分も楽しんでくるから」
「それは当選しなかった私へのあてつけなのかな」
そう話しながらお昼は過ぎていった。正直この頃には赤名と言われたことにはもう気にすることはなくなっていた。何故知っていたのかは気になるが、そこまで問題が起きないからだ。放課後はすぐに帰って詳しいことを調べようと思ったが今週は残念なことに今日の掃除当番だった。
掃除を手早く済ませ、さぁ帰るかと廊下に出ると凛が待っていてくれたので一緒に帰ることにした。帰りながらも携帯のメールを見ていると凛が私の肩を叩いてくる。
「奈々、歩きスマホは危ないよ」
「あぁ、ごめん。ちょっとメール見てたんだ」
「メールってロキの?」
「そう、見てみる?」
「うん、見せて見せて」
私が凛に聞くと凛は嬉しそうに話にのってきた。なのでメールを開き凛に渡す。凛はメールを読み終わり私に携帯を返すとともに
「今日遊びに行くね」
といって「たたたっ」と走って帰っていってしまった。
凛が走って帰っていってしまったので、私も帰路を急ぐことにした。凛の目的は間違いなくゲーム情報なのでその準備を進めておかないと。
私は家にたどり着きパソコンを起動させた。起動するまで待っているあいだに凛がやってくる。そんな凛を自室に招いてから居間で麦茶を入れて部屋に戻る。凛は私が部屋の前にきたのに気づいたのか、部屋の扉を開けてくれたので苦もなく部屋に入ることができた。
「それで、件のサイトというのは」
「ちょっと待ってね。今パソコン上がってきたところだから」
私は携帯に送られてきたメールをパソコンのアドレスへ転送し、ロキが送ってきたURLに接続した。接続した先は普通のオンラインゲームのサイトだった。そのサイトで世界観等を確認していったがよくある設定だった。
ただゲーム名にもなっているステータスだけは特殊なものだった。
まぁここら辺はゲーム開始時に詳しく説明が入るだろう。一緒に見ていた凛の感想としては
「メインはMMORPGって事なんだろうね。ステータスの概念は独特だけど」
といったものだった。
その後は私がサブで使っているノートPCを貸してふたりでエネミーハンターオンラインを一緒にプレイした。凛の名誉のために言うけど今回は普通にモンスターを相手に遊びました。
夜になると私は今日の異様に上がったテンションを下げるために、手当たり次第PKをし続ける。時間が日付を回る頃になると眠たくなるぐらいまでテンションが落ち着いたので、今日は寝ることにした。その時の掲示板では「赤名ご乱心どこどこに近寄るべからず」というキルしたプレイヤーの速報で作られた掲示板が出来上がるまでになっていた。
ーーーーーーーー某ビルにてーーーーーーーーーーーー
ベータテスト募集期限最終日の夜、都内にあるビルの1室で20代後半の男性がPCを見ながら楽しそうにしていた。そんな時、気になる名前があったので即座に行動を起こした。
「この子は親の了解が取れ次第、採用のメールを送っておいてくれ」
「主任、そんな勝手な事していいんですか?」
「構わない。なんせ私がこのプロジェクトの主任なのだから」
そんな馬鹿なことを言っている主任と言われた男性に、女性社員が丸めた雑誌で頭を叩いた。そこで女性社員が主任に取り出した書類に記載された中学生について聞いてみた。
「それで、彼女は何者なんですか?」
「あぁ、美香君は知らないのか、彼女は赤名。やってるオンラインゲームはそこまで多くはないがエネミーハンターオンライン、開戦の幻想譚では有名なレッドネームプレイヤーだよ」
「その二つ我社のゲームじゃないですよね。なんでそんなゲームのプレイヤー情報持ってるんですか。まさかハッキ・・・」
「ちょ、美香君人聞きの悪いこと言わないでくれ。彼女の友人が赤名と言ったあとに訂正させているのを聞いただけだよ」
「それならいいですが。それでそんなプレイヤーを招いて何が目的なんですか?」
「僕はね、PKプレイヤーには3種類いると思うんだよ」
「どんな人たちですか」
「返事がおざなりになってきているね。まぁいいや。純粋にPKをしたいだけの人、ストレスの発散に使う人、そしてモンスターに対し苦戦をしなくなって更に難易度を求める人」
「主任の考えが正しいとしてこの子は3つめに該当するってことですか?」
「確証はないけどね。まぁほかの理由でもいい刺激になっていいでしょ。いい子ちゃんだけだと面白くないし」
主任の男性がそんなことを言ってのけたので仕方なく主任のいうことを聞くことにした。ただ、赤名という名指しでメールを送ったのは純粋に女性社員のミスだった。