私の名前はテト
私の名前はテト。
人類を10万人まで減らしたロボット、『メトの妹』だ。
元々私達は『Meg』というひとつのロボットだった。
そのひとつのロボットの中に、『私』と『メト』という姉が入っていた。
そのMegには『通常モード』と『戦闘モード』の2種類ある。
通常モードは私が入り、戦闘モードはメトが入っていた。
ある意味多重人格という物に近い。
いつも私達は二人で仲が良かった。
メトは普段大人しい人。
静かで、誰よりも優しい子だった。
花を折る事も出来ない、ましてや人間を殺すだなんて絶対出来なかった。
戦闘訓練では、始まった直後突然『立ったまま寝る』し、『戦いたくない』って言うし。
もう私が戦闘モードに入ったほうが良いんじゃないか?って思った時もあったくらいだ。
そんなある日、メトは急に喋らなくなった。
「どうしたの?」って聞いても、「なんでもない」って分かりやすい嘘をついたり。
ただ、戦闘訓練はビックリするぐらい上達してた。
昨日のメトは何だったの?ってくらい俊敏で華麗な動きになっていた。
開発者の方達も喜んでいた。
ただ、私はこんなメトにはなってほしくなかった。
開発者の皆も一体何が起こったのか分からず。
でも上手くいったのならいいや。で済んでしまった。
――そして事件は起きた。
メトが暴走し、人々を殺害。
『核ミサイル』を保持している国々が、Meg(私達)目掛けて発射をした。
しかしメトは発射された核ミサイルを全てその場で破壊した。
それがキッカケで世界中は大パニック、その影響で大多数の人間は亡くなった。
メトの殺害行為に私が止めようとしても、全く言うことを聞いてくれなかった。
ただメトがいつも言ってることがあった。それは
「2151はどこ?」
私の知ってる『2151』とは、私達(Meg)を作り上げたチームの名前。
それを探しているのかと思ったが、その関係者も容赦なく『殺害』した。
その姿は何かに取り憑かれたかのように思わせる動きだった。
そして、感じる『孤独と悲しみ』
私達は常に『ひとつの体』に『ふたつの心』が入っている。
心が近い分、メトの感じる辛い感情とかも直接入ってくるのだ。
私は苦しくて苦しくて、早くこの体から脱したかった。
でもきっとそれはメトも同じなんだろう。
だから暴走しているのだと思った。
そう思いたかった。
しかし人を殺害する度に、メトはとても笑顔になって喜んでいた。
まるで復讐を達成したかのような感情を抱いていた。
ただ殺害を止めて休憩している時、私に文句を言ってきた。
「なんで私の方が攻撃力が低いの?私は戦闘特化になっているはず。
なんでテトの方が攻撃力が高いのよ、もっと人間を爆散するように殺したい」
「こんな戦闘特化で回復力の方が高いって訳が分からない。
相手を回復させること?味方も居ないのにそんなの必要無いじゃん。
自分が攻撃を受けた時に回復が早いほうが有利?攻撃を受けなければ良いだけじゃん」
「テト、お前の心を私にくれよ、そうしたら私はもっと強くなれる」
私はもう限界だった。
こんな強い口調で優しくないメトなんてメトじゃない、悪魔だと。
あの戦闘訓練の時、立ったまま寝てたあの頃のメトに戻って欲しい。
そんな事を私はずっと願っていた。
人類が『10万人をきった時』、闇の底に居る私に1つの小さな光が届いた。
メトが私の体を作ってくれたのだ。
その体はMegと全く同じ体。
少し改造されていたけど、もうあの変わったメトの心から離れられる。
そう考えただけで自然と心の中で涙した。
そして新たな体に入り、完全別々となった私とメト。
メトに言われた事は、「人を探して2151で無ければ殺害すること」
そう命令して、メトは去った。
私はメトと離ればなれになった嬉しさに満ち溢れた。
が、今までずっとひとつの体にふたりの心があったせいか、寂しさもそこにはあった。
初めて1人で行動する時、人間を見つけた。
その人間を2151であるか分析したが、2151ではなかった。
メトの命令では2151でない者は殺害しないといけない。
そんな理由で人を殺すことに決めた。
私自身が人を殺そうとしたのは初めてだ。
相手の首を右手で掴み、握りつぶそうとした。
だが私の方を見て、悲しそうにこちらを見てきた。
とても私には人間を殺せなかった。
――そこで私は気がついた。
私はこんな人を殺害する為に生まれてきたんじゃない。と悟りを開いた。
私は人を守るために生まれてきた。
メトが人を殺すのなら、私は人を守る立場になってやる!
こうして私、人類の味方をしたテトが誕生した。
2019年9月18日(水)修正
誤字や括弧などを加えました。