第8節 勒音 陽というナニカ
「僕の名前は勒音 陽。不快な思いをさせてすまないね」
勒音 陽は深々と頭を下げた。
「あの事件は僕個人も調べていたんだよ。そして聞き込みしてみれば周囲の人の声は君を擁護する声ばかりだったんだ」
外を歩けば睨みつけられて物を投げられるような状況だったのだが…
「ん、また不満そうな顔をする。おれの周りには敵しかいなかったのに何言ってんだコイツってところかな?」
ほとんど考えを読まれた俺は…
「まじそれな」
何故か軽口で返してしまった。
「ふふ、君は親や知人に迷惑をかけたくないからと自分から離れたのだろう?それが悪手だったよ」
俺の覚悟を悪手呼ばわりされてイラっとした。
「お前に何がわ…」
「まあ、わからなくもない。マスコミに煽られネットで火がついた人間は厄介そのものだ。身内のことを考えるならB級の良手かもだ」
「お前ひ」
「人の話を聞くのは君だ。とにかく君に罪は無い、これから先君の悪評を流すような奴がいたら言ってくれ、僕が対処してあげよう」
「…!?」
「君のように他者のために優しくできる人と僕は友人になりたいんだ。半端な知識で相手からマウントを取ろうとする有象無象なんか切り捨ててね」
(なんだコイツ…俺に対する好感度高いのはなんとなく理解したけど…ナニ??)
「というわけだ父。僕の分の推薦枠を漆寄君にあげてほしい。僕は自力でも余裕だと思うからね」
陽は推薦枠の譲渡を提案したのだった。