第7節 埋まりし推薦枠
「ありゃ?寺嶋さんやないですか。今日は何しにここへ??」
ヒョロっとした人がこちらに気づき声をかけてきた。
「ああ、本当だ。って、子供連れってことは推薦枠連れてきたってことですか!?」
「ええ!?そんなこと困るよ!!寺嶋さん子供いないし電脳戦争に否定的だったからてっきり連れてこないと思ってたのに」
後の2人の大人もこちらに気づき、俺がいることで寺嶋さんがここにいる理由もわかったようだ。
「そうだ。俺はこの子を推薦枠に入れて参加パスを取らせるつもりで来たのだが…どうしてここに3人いるんだ?」
「使わない推薦枠なら権利をスルーするより、欲しがってる人を誘った方が良いと思いましてな。私が誘うたんですよ」
「勒音、そういうことは俺に確認とってからにしろ…」
このことは勒音という方の独断で起きたことみたいだ。
「え…えっと…誘ってもらったけど、枠が埋まってるなら私の娘は一般の方で登録しますね…」
「え!!嫌だよお母さん!!テストは適当にしてれば良いって言うから今日まで何もしてこなかったんだよ!?」
「でもね、私達は譲ってもらおうとしただけで、元々の権利はここにいる3人の物だから我儘言えないのよ」
「そんなぁ…むり、無理だよ…」
女性の方の娘がショックを受けている。
「ていうか、こいつ見覚えあるぞ!!すっごく残酷な方法で幼稚園児を刺し殺した殺人犯だ!!」
推薦者の内の1人がこちらを指差して言ってきた。
「え…?あ!本当だ!!私も知ってる!私の住んでる地域の隣の中学校の子だよね!?」
メディアには顔出ししてないが、人の噂は広がりやすく、個人情報なんてものはネットですぐに拡散するからな。
近くの学校なんかなら簡単に伝わったのだろう。
(ああ、面倒い…冤罪だったってニュース見てないのか??)
「おい、君た…」
「あの君たち?警察の子どもでありながら、間違った情報を語るのを辞めてくれないか?僕まで同じレベルだと思われてしまうだろ?」
勒音という人の側にいた子どもが寺嶋さんの言葉を遮って発言した。