第3節 勝算と打算
「勝算…か」
寺嶋さんは勝利へのビジョンを持っている風だった。
「寺嶋さんは仕事、僕は生活を賭ける以上、ただなんとなくや同情だけで僕を推薦はしないでしょう」
自己評価をすれば、とてもじゃないが同年代の中でも強いとは言えない僕を仕事で使うメリットは少ない。
「おいおい、リアルにホームレスな中学生に心優しく手を伸ばすこの慈愛に満ちた精神をわかってもらえないのかね」
機械で再生したかのような棒読みで慈愛について語られた。
「いや、『ゲームの裏に潜むこの国の陰謀を突き詰めたい!』なんてことをさっき言ってたじゃないですか」
「国の陰謀って、そこまで言った覚えはねぇぞ」
「俺の職に響くからあんまり言うな…」
警察という国職上、国を悪く言うのは褒められたことではない。
「それで、結局のところどうなんです?」
「それがな、警察推薦枠は毎回3人とも必ず合格しているんだ。2回前の推薦者なんて見るからに身体能力が低いデ、ポッチャリ君だったのにも関わらずだ。
デブというの言葉を途中で言い換えても半分言ってしまってて隠せてないよなー。
「つまり、行けば必ず合格できる八百長テストだと?」
それならば金が無く、身体能力に自信の無い俺でも行く価値はある。
「そういうことだ、電脳戦争の参加パスが無料で手に入るこのチャンス逃す手は無いだろ?」
「是非、テストの登録お願いします」
「ああわかった、ただし登録に必要な情報の一つの居住所在地は俺の住所にするぞ」
「ホームレスな中学生ですからねー」
「国が取り仕切るテストに虚偽の情報で登録はマズいからな、今日の晩からはウチに住んでもらおう」
「え…??」
結局、その日の晩から俺は寺嶋さんの家に住むことになった。