一章 社会への絶望、希望への道筋
この作品は小さな頃の憧れが、色々な作品に感化された物です。明らかに他作品のネタであったり、設定がだだ被りだったりしますが、生暖かい目で見てもらえると助かります。
中学3年の春、漆寄 遼は希望を失った。
身に覚えのない殺人の冤罪とそれを騒ぎ立てたメディアによって、自分自身の将来も今働いている両親の生活も全て潰されたのだ。
「これからどうすんだよ……手持ち道具は自慢のアウトドアセットと来月まで使えるスマホだけ。一人で暮らしていけるほどの金も無いし、こんな子供を住み込みで雇ってくれる仕事なんてあるわけないし……」
メディアに人殺しと騒ぎ立てられた後、真犯人が捕まり冤罪だったと証明されたのに、周りの住民の態度は変わらなかった。
周辺住民の嫌がらせが止まる事はなく、住んでいる家を出て行かざるを得ない状況にされ、遼は都会の街で野宿をしていた。
(なんで俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ!!)
(何の証拠もない話を勝手に騒ぎ立てて皆で石を投げるのがそんなに楽しかったか!?)
(大体警察もメディアも責任とって俺たちに何かしらの賠償してくれよ!!)
寒い夜の暗闇で今にも爆発しそうな思いを胸に、寝袋の中で眠りについた。
「こんなところで野宿させて悪いな」
寝ていた遼に突然話しかける人物がいた。
「悪いと思うのなら、もっと世論に僕の平和性を広げ回ってくださいよ」
「そもそも、問題の起きているその時に助けを入れてください」
話しかけたのは寺嶋という刑事、遼の容疑をただ一人疑い続けた男だ。
「いや、あんな環境でまともな人生を取り戻すことなんてできないだろ?」
「そりゃそうですよ、個人では勝ち目が無いんですから」
どうしようもないやる瀬無さをこめて遼は語る。
「周りは全員、僕を罪人だと決めつけ有りとあらゆる攻撃をしてきました」
「共働きだった両親も会社から悪い評価をつけられ、半ば強制的に退社させられました」
遼は自然と涙が止まらなくなっていた。
「犯人が捕まり、僕の罪が冤罪だと判明しても周囲の人達は自分達の間違った行いを認めたくないために、僕たち家族を悪人として攻撃を続けてきたのです」
寺嶋は自らを罰するかのように謝る。
「すまないな、メディアの勝手な報道に加え、ネット上での情報の拡散。俺には何もしてやれなかった」
「仲間が間違った方向に進んでいき、俺一人が間違った答えを追っているとさえ思わされたのさ……」
寺嶋さん自身も相当、葛藤などがあったのは僕も知っている。
「いえ、寺嶋さんが事件を追い続けて犯人を見つけてくれたおかげで、憎悪と呼ばれる物……ですかね? 復讐心みたいな危ない心が少しは収まりましたから」
本当に寺嶋さんには感謝している。
だがこんな夜中に何故俺の所に来たのだろう?
「そう言えばこんな夜中に何の用事ですか? 中学生の野宿が間違ってるのはわかりますが、こちらの状況もわかってますよね?」
どう考えても中学生が野宿なんて補導案件まっしぐら100%アウトである。
「まあそれはそれで確かに子供がこんなことしてれば警察としては動かんとなぁ?」
ニヤニヤする寺嶋、呆れる遼。
そして突然の誘い。
「しばらくはウチに泊まっていけばいいじゃないか」
「へ? 俺が寺嶋さんと暮らすんですか?」
「そうだよ。ウチで安全に生活をしろ」
一瞬どういうことなのか認識できず、理解できた途端に、空になった涙腺から涙が流れないまま泣いてしまった。
しばらく攻撃的な心しか向けてこられなかったために、ストレートな優しさが心に刺さったのだ。
「でも、中学生の俺なんかを養ってもらうなんてそんな迷惑はかけられません……」
こんな優しい人だからこそ迷惑はかけたくない。
「あ……悪いんだが、養うほど財布は暖かくないんだ…」
情けなさを隠すことも無く寺嶋は笑った。
「ぐっ、聴取の時も俺は安月給だーって愚痴ってましたもんね」
「おう、そのとおりなんだ。なのでお前には自分のお金は自分で稼いでもらう!」
俺が生活費を稼ぐ? 中学生が?
「いや、今が中学生なんですよ? 俺なんかを雇ってくれ……違う、『雇うこと』のできる会社なんて存在しませんよ! 憲法違反ですからね!」
「当たり前だ、お前に仕事なんてさせられる訳がないだろう。だが、お金を稼ぐ方法はあるだろ?」
色々と危ないことや不純な稼ぎ方を思い浮かべたが、すぐに別の方法を思いだした。
「電脳戦争ですか?」
「そう、電脳戦争だ」
こうして俺は電脳戦争に出ることになったのだ。