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アクアミネスの勇者  作者: 佐倉真稀
第一章~宇佐見編~

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バーダット魔法学院

バーダットは王都から馬車で約1日の場所にある。魔法学院で栄える学徒の都市だ。

近くに”緑の迷宮”という難度の低い迷宮もあって、冒険者でも賑わっているそうだ。

バーダット魔法学院の実力試験というのはいわゆる、対人戦闘の模擬戦だ。

魔法を主体に戦って、降参か、戦闘不能になった方が負け。予選は全員が出てその中から上位8名を選出、トーナメントを行い、成績優秀者を決める。当然、順位はそのまま成績だ。

予選は一般は見られないがトーナメントはイベントだ。各関係団体やら貴族やらが押し掛け、優秀な人材を青田買いする…のが、この実力試験と呼ばれている年に1度の試験らしい。

今年は11月の最終週に一週間かけて行われて、最後の4日間にトーナメントを行う。特に決勝戦は最終日、学年ごとだ。表彰式はアーリアも顔を出さないといけないらしく、それでこの仕事が俺に回ってきたのだ。

とはいえ、アーリアと一緒に馬車に乗っている時点で俺は特別扱いなわけだが。

いいのですか王様。怪しい男がそばにいるんですよ?

今日は朝から王都を出発、閉門ぎりぎりにバーダットに到着、宿に入って翌日からトーナメントを観覧する。特別席でマルティナと一緒に見るらしい。もちろん警護の騎士も一緒だ。俺も側近として後ろに控える。

この試験には例のタツト君とフリネリアの弟、”ウォルフォード・アクア・レングラント”も見られるかもしれない。最終日には父親である騎士団長も視察に来るらしいから、貴族というのは大変なんだと思う。

「アーリア様。馬車って王族の馬車だったんですね…」

きょとんとした顔で首を傾げる。今俺達は向かい合って座っている。アーリアの隣にはお付きの侍女さんが座っている。俺の隣は何故か誰もいない。

「私は王族なので公務には当然この馬車を使うのですが…」

不思議そうに言ってくる。

「あーいえ、俺までこの馬車に乗るとは思ってなかったので…」

アーリアはああ、という顔で頷いて微笑む。

「私の側近兼護衛なのですから傍にいないといけないでしょう?」

あ、ハイ。

「あ、その、クッションがよくてよかったなあって。」

嬉しそうに微笑むアーリアに俺は何も言えず。とりあえず、今後の迷宮攻略の話を延々とした。

アーリアは今後、許可が出た時だけ参加できればと話した。


宿について荷物だなんだと整理して、アーリアはさすがに疲れたのか早めに床に就いた。

俺はかねてからの約束でマルティナに面会依頼を出していた。

会うなら、トーナメントが始まる前がいいかなと思って今夜にした。

マルティナが住んでいる屋敷にやってきた。マントをかぶって、不審者のようだ。

学院の近くの大きな屋敷に住んでいた。

俺は執事さんに案内されて、マルティナの待つ応接間に通された。

「お久しぶりです。師匠。」

俺はマントを取って、顔を見せた。


「!!え?何、その髪と、目…アキラよね?」

俺の髪は今銀髪。そして眼が金色だ。

「あ、これかつらです。目は魔眼仕様になってます。黒目黒髪はまずいと思って。今の俺はアーリア様の護衛です。」

「眼の色変えられるんだー。凄いなあ。」

俺は肩を竦める。

「実は俺、幻術もいけるかと思ったんですが、見破る人がいそうなのでこっちに。まあ、不自然に見えないように軽くそれもかけてるんですけど。」

マルティナは好奇心丸出しの顔で頷く。

「いいわね。二重の変装ね。トーナメントはあなたも見ていくんでしょう?タツト君とあなたの兄弟子がどんなものか、よく見ていって欲しいの。兄弟子の方は勇者のパーティー候補になっているはずよ?」

幻術を見破ろうとしたのか、金色の目が光る。


「へ?パーティー候補?そんなのもう選んでいるのか?」

俺は初めて知った情報に驚いた。よくアーリアが選ばれるようにと呟いていたのは知っているんだが。

「もちろんよ。それは確か、魔術師団団長と騎士団団長が主導で選んでいるから余り知られていないわね。私もどうかといわれているわ。でも理事長がいなくなったらこの学院困るわね。」

と妖艶に微笑むマルティナだったが、少し眉を寄せた。

「あなたが勇者だったら喜んで駈けつけるわよ?でも、タツト君かもしれない気もするの。」

そんなに優秀なのか。


「あの子が使う魔法をよく見て欲しいの。今まであなたに教えた魔法とは違う、あの子独自の魔法を。」



実力試験は一般の人々には予選といわれる彼らの本当の試験の各学年上位8名がトーナメントに残る。

それが昨日まで行われ、結果、トーナメント一日目、初学年の準々決勝と準決勝が行われる。

準決勝に残ったものが最終日の決勝に出る。

競技場は2つあり第一と第二に分かれる。


トーナメントの対戦表はこうだ。


第一競技場 第一試合

タツト・タカハ・レングラントVSトラム・ヘテ・ワーミルド

第二競技場 第一試合

ダニーVSエルミラ・セリオ・ユーディーム

第一競技場 第二試合

マーク・ラシッドVSサリード・サン・マードック

第二競技場 第二試合

アデイラVSネッド・ラフ・ベネフィット


我らがお姫様、アーリアは第一競技場での観戦となるので当然、俺もそこだ。

よかった。噂のタツト君が見られて。


すでに観客は満員で歓声がうるさいほどだ。

これが試験なんて、本当、世界が違う。


「いかがですか?アーリア王女様。わが学院は。」

マルティナがよそいきの顔をする。そしてアーリアもよそいきの顔だ。

実は王族用の特別観覧室は第一にしかないらしく、警備の関係でこちらだ。マルティナがホステス役。他に学院関係者が後ろに控えている。

俺はアーリアの席の背後のやや左手側に立っている。楕円の競技場半分あたりの観客席の一番上、ガラスに囲まれた特等席。やや張り出して、競技場が見やすくなっている。


飲み物を載せたトレイを手にした侍女がやってくる。アーリアはそれを俺に見せて、俺は頷く。

毒は入っていない。

もっとも、入ってても、俺があげたアクセサリーで無効化するけどね。今アーリアの胸元を飾る大きい魔石のネックレスがそれだ。

「あら、見ただけでわかるなんて、凄腕の毒見役ですわね、アーリア王女様。」

アーリアは嬉しそうに頷いて、微笑んだ。

「ええ、とても優秀な側近で得難い人材だと思っております。」

やめてくれ!!なんか恥ずかしいんですけど。わかっててふってるでしょ、マルティナ師匠!


「さあ、始まりますわ、特に”タツト・タカハ・レングラント”がこの学年の見所ですわね。」

わーっという歓声がひときわ大きくなり、審判が名前を読み上げると、両端から選ばれた生徒が審判のいる中央へと歩みよって立ち止まる。


”タツト・タカハ・レングラント”

黒髪黒目の170センチくらいの細身で、童顔。髪がくせ毛で少し跳ねている。

俺が見たところ、もろ日本人の中学生か高校生1年くらい。

視る(・・)と…

高波達人 15歳、○×高校1年…決定だな。

ステータス鑑定は隠蔽がかかっているから見ると気づかれそうだ。

とりあえず、勇者候補には違いない。

” トラム・ヘテ・ワーミルド”

男で少しがっしりした、身長の高い、男らしい男だ。茶色の髪が短く揃えられていて精悍な顔つきだ。どうも、タツト君と向き合っていると大人と子供くらいの体格差がある。彼の属性は水と土。鑑定能力はないようで隠蔽はしてないようだ。


「開始!」


審判の合図で試合が開始された。



次回は実力試験になります。

”フラグを折り続ける勇者”と重複箇所がありますのでご了承ください。

明日更新したい、です。

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