28.寮まで徒歩10分
「先ほどは取り乱してしまって失礼。私は堀口冴という。生徒会役員の会計で新2年生だ。」
「初めまして。菊原陸といいます。」
俺は今日何度目かの挨拶を堀口先輩と交わした。
因みに堀口先輩はショートカットで俺より少し低いくらいの身長である。基本はクールな振る舞いなのだが、さっきのようにガラッと雰囲気が変わることもあるようだ。
「それにしても、来るときも思いましたが本当に広いですね、ここ。」
寮は年齢別で分けられているが、校舎は全学年が共通で使うようでかなり広い。
俺たちは寮の食堂に向かうために中庭を歩いていた。
若林先輩と十六夜先輩は2人でおしゃべりに興じながら数歩前を歩いている。とても仲がよさそうだが付き合ってでもいるのだろうか。
「あの2人は昔付き合っていたんだぞ。」
「え、そうなんですか?」
俺の考えていることを見抜いたかのように堀口先輩が教えてくれた。
「去年の12月ころだったな、突然別れたんだったよな、美保先輩。」
「ええ、たしかその頃でしたね。それまでは仕事中にもいちゃつくような関係だったのですが。」
「でも、年明けには仲直りしたみたいで、付き合ってはいないが仲は良いみたいだ。」
なるほど、あの2人にもそんな過去があったのか。
「ところで菊原君は今年から二野坂に通うのだろう。入試組か?」
「え、入試組?」
「そうだ、この学園には自頭で入ってくる入試組とスカウトなどスポーツで入ってくる推薦組やつもいる。ということでお前はどっちなんだ?}
「えっと……」
言えない。引きこもっていたら突然手紙がきたなんていえない。俺は過去を捨てるんだ。最高の高校デビューするんだ!
でもこの質問には答える必要があるだろう。さて、なんというべきか。
と悩んでいると、
「そういえば2人ともこの花壇に生えている花はチューリップっていうんですよ。」
と花園先輩が誰でも知っていそうなことを言い出した。
「どうした花園先輩。そんなことは該当アンケートをとったら100人中95人は知っていると答えると思うぞ。」
「そ、そうですよね。」
花園先輩も「えへへへっ」と笑っている。
でもおかげで話がそれてくれた。
と心のなかで感謝をしながら、
「残り5人はチューリップを知らないのかー。」
とものすごくどうでもいいことを1人で考えていた。




