24.銀杏並木
二野坂学園は最寄駅から徒歩10分くらいのところに佇んでいる。さらに学園までは緩い上り坂が続いているのでキャリーケースを引きながら行くのは少しつらい。
そして歩道には俺達と同じように大荷物をもった私服の学生たちが大勢歩いていた。
そんな俺たちを祝福するかのように道の両脇には満開の桜が…
「咲いてねー」
「咲いてないねー」
俺と莉理亜は似たような言葉をつぶやいていた。
そう、駅と学園の間の一本道。普通だったら桜並木にしていいところをなぜか銀杏並木になっているのだ。
「秋とか臭そうだな」
「でも銀杏は炒るとおいしいんですよ」
突然聞いたことのある声がしたので振り返ってみると、そこには花園先輩がいた。
「こんにちは、花園先輩」
「こんにちは、菊原さん」
そう挨拶を交わしていると、莉里亜は俺を盾にするかのように背後に回っていた。
「どうしたんだ、莉里亜?」
すると莉里亜はボソッと一言
「この化け物め」
とつぶやいたのだ。
「あらあら、西園寺さん。化け物とは失礼ですよ?」
対する花園先輩は笑顔で対応していた。でもこれは笑顔というよりも、
「花園先輩、その作り笑顔はどうかと思いますよ?」
いわゆる怖いやつだった。
「だって陸、この化け物クラス分け試験の時に私に対してあんなことやこんなことをしてきたんだよ!」
「やめなさい莉里亜。誤解を生むようにしか聞こえないぞ」
そういえば分かれた後にどこかに連行されていたからな。その時にでも何かあったんだろう。
「その通りですよ、西園寺さん。あれは私からの精いっぱいの『個別指導』ですよ?」
この人もこの人だ。
と、そんなことを話しているうちに学園の正門にたどり着いた。
この後は寮の入り口で手続きを済ませ部屋の鍵を受け取ることになる。ちなみに寮は高校生全員で一つの建物となっており、エントランスや食堂などの共用スペースは男女共用、その他は男女別である。ちなみに建物は向かって右側が男子側、左側が女子側である。
花園先輩の案内で寮の入り口まで来たところで、花園先輩は
「菊原さん。部屋に荷物をおいて一息ついたら生徒会室に来てください。制服でお願いします。」
と言ってから女子フロアに姿を消した。
「おー、陸もあの先輩の『個別指導』受けるの?何か悪いことでもしたの?痴漢?」
「そんなわけあるか!」
と、俺は一喝して指定された自分の部屋に向かった。いつのまにか莉里亜が普段のテンションに戻っていたのは花園先輩のおかけだな。あとで感謝しておこう。




