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18.今年のバレンタインデー その1

 その後俺と巫女は来た時とは逆方向の特急に乗って上野駅まで戻ってきた。

 ここから先はまーるい緑の山手線で他のターミナル駅まで行って、そこで一度乗り換えて自宅の最寄り駅まで向かう。

 現在時刻は午後6時30分。

 確認してから電光掲示板を見たが、そこで俺はあることに気づいた。


 まーるい緑は時間を確認する必要がないくらいの本数があることに。


 え、そんなこと常識だって?

 普段から家の外に出ないおれにとっては非常識このうえない。

 それに北海道の人とか九州とかの日本の辺境に住んでいる人は、電車なんて一時間に数本しか来ないとかが常識のはずだ。

 そもそも田舎に電車なんて走っているわけ…


 「お兄ちゃんは今すぐに北海道と九州の人に土下座するべきだと思うよ。」

 どうやら心の声がまんま口から出ていたらしい。

 「まったく、自分が非常識だからって言い訳をずらずらと。」

 「いや、だってよ…」

 その時携帯の着信音が鳴った。

 

 「…」

 あれ、巫女が携帯を取り出す気配がない。

 気づいていないのだろうか?

 「鳴っているのお兄ちゃんのだよ。」

 いわれて初めて俺は自分の携帯を取り出した。

 普段は携帯をストラップ同様としてあつかっているため、自分の携帯だとは思わなかったのである。

 ああ、悲しいな、俺。

 

 まあ、それはさておき俺は自分の携帯を取り出して着信画面をみた。

 電話帳に登録されている番号ならここには相手の名前が表示されるが、あいにく表示されているのは相手の番号のみ。

 どうやら父か母ではないようだ。

 じゃあいったい誰だろう。

 着信拒否をする理由もないので、俺は通話ボタンを押した。


 「もしもし、菊原ですが。」

 『ふふふ、やっとでたな。我が名は莉里亜。汝と契約せし時…』

 俺は通話終了ボタンを押した。

 ちょうどのタイミングで電車がホームに滑り込んできた。

 「よし巫女。さっさと帰るぞ。」

 「あれ、電話はもういいの?」

 「ああ、もちろん…」

 ふたたび携帯が鳴った。

 

 俺は通話ボタンを押して、

 「悪いが今回に限っては悪ふざけに…」

 『申し訳ございません菊原陸様。もう二度とあんなことは言いません。もう私はあなたの下僕です。なんなりとお申し付けください。』

 「…で、何で俺の電話番号を知っているんだ?」

 本当ならさっさと切って電車に乗るつもりだったが、なんかそれも悪い気がしたので話は聞くことにした。

 巫女にも次の電車にしてもらいたいということを伝えようとしたが、彼女はちゃんと察してくれて、電車に乗らずに待っている。


 『あの生徒会長に聞いたの。帰るときにダメ元で聞いたら教えてくれたの。』

 そういえば帰り際に教えたな、花園先輩には。

 「あのあと莉里亜はどうなったんだ?」 

 『まあそれはさておき』

 おかれてしまった。

 『陸って今どこにいる?』

 「今?上野駅だけど。」

 すると電話口の向こうから安堵のため息が聞こえてきた。

 『あのさ、話があってさ。私も帰るときに上野駅を通る予定だから、会えないかなって。』

 「べつにいいけど、莉里亜は今どこにいるんだ?」

 『えっと、学園の最寄り駅。特急を使えば一時間半ぐらいでそっちに着くからそれまで待っていてくれないかな?』

 「…電話じゃダメなのか?」

 話ぐらいなら電話でも十分だし、それに長時間も駅で待っているのは流石に疲れる。

 『どうしても直接がいいの。』

 「そんなこといわれても。」

 『だ・め・?』

 「う、」 

 男というのはそんな風に言われると弱いんだよ。

 くそ、仕方ない。

 「ああ、わかった。到着する時間がわかったらメールをくれ。」

 「は~い。」

 なんかめんどくさそうにリリアは電話を切った。

 メールぐらいめんどくさくもないとは思うんだが。


 あまり時間は過ぎていないとは思うのだが、早くもホームには次の電車が到着しようとしていた。

 おそるべし、まーるい緑。

 「じゃ、次こそ帰ろっか、お兄ちゃん。」

 「あ、悪いんだけど先に帰ってもらっといてもいいか。」

 巫女が乗車待ちの列に一緒に並ぼうとしたので、俺はそれを断った。

 「買い物?ま、まさか妹と一緒に行けないようなお店に?」

 「なわけあるか!このあと莉里亜が来るからそれまで待ってるんだよ。」

 すると巫女は一瞬顔を引きつらせたような気がした。

 でも気がついたときには普段の笑顔に戻っていたので気のせいだろう。

 え、笑顔?


 ホームには電車が到着して降車客がぞろぞろと降りてきている。

 俺は巫女を急かそうとしたが、

 「それじゃさ、お兄ちゃん。帰りが遅くなっちゃうかも知れないから。」

 すると巫女は急に顔を赤くしたかと思うと、カバンの中からゴソゴソと赤い包みに包装された箱を取り出した。

 そして

 「ハッピーバレンタインッ♪」

 と言ってその箱を俺に差し出してきた。

 もちろん中身はわからないはずもない。

 

 「ありがとな、巫女。」

 巫女は俺の言葉を聞くとニコッと笑って電車に駆け込んでいった。

 そして巫女が車内に入った直後に電車のドアが閉まり、妙に浮き足立っているバレンタインの街を走り出した。

もうすぐバレンタインです。

出来ればその2をバレンタイン当日に投稿したかったのですが…無理ですね。


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