15.はじめまして、でいいのかな?
「また、何で俺なんですか?」
「それは・・・」
それから花園先輩は顔を下に向けて黙りこんでしまった。
校門が見えてきた。
やべ、ちょっと強く当たりすぎたかな。
ちょっと反省しなくもないが、それにしたって話が飛びすぎている。
俺が生徒会に?何故だ?
生徒会とは生徒の模範となるような生徒が所属するものだ。
で、俺はというと。
現在不登校のニート。
模範となる要素ゼロ。
それとも、俺は花園先輩から優秀に見られたのだろうか?
花園先輩とは今日初めて会ったわけだから、俺がニートであることは知らないだろう。
ならば、ここではっきり言っておこう。
「実は俺…。」
と言いかけたことで俺は口を閉じた。
「?」
しょんぼりしていた花園先輩が少しだけこちらに顔を向けた。
「あ、いえ、別に。」
俺は言葉を濁した。
なぜ俺は黙ってしまったのか。
俺は今の生活から脱却するためにこの学園に転入することにしたんじゃないか。
つまり俺はニートじゃなくなる訳だ。
今ここで自分がニートだということを告白すれば、その情報が学園内に知れ渡り、俺の編入は失敗してしまうのではないのか?
花園先輩のような人がそんなことをするとは考えにくいが、ゼロとも言えない。
だから俺はこの場で自分がニートであるということは言うべきではないということだ。
でも、これでは俺が生徒会の誘いを断る理由がなくなってしまう。
理由なく断ることも後に引ける。
で、結局俺の答えは。
「前向きに検討させていただきます。」
保留ということにしてもらった。
正直中途半端な答えだが、花園先輩はどう反応してくれるか。
「本当ですかっ!」
花園先輩はこのまま断られるとでも思っていたのであろう。
突然立ち止まったかと思うと、今までの落ち込みが嘘のように、桜満開のような表情をしてこちらに振り返った。
「それでは、連絡先の交換をしましょう。」
そういって花園先輩はスマホをポケットから取り出した。
俺も自分のスマホをポケットから取り出し、お互いの連絡先を交換した。
「それでは、何かありましたらこちらからご連絡を差し上げます。菊原さんも何かございましたら御遠慮なく連絡してきてくださいね。」
語尾にハートでもつきそうなセリフを最後に俺たちは再び歩き出した。
中庭の桜はまだ枝が丸見えだ。
その足元にはパンジーが植わっている。
俺は二ヶ月後、桜が満開のこの中庭で制服を着て入学式に臨むのだろう。
「おにーちゃん!」
そんなことを考えていると、近くから巫女の声が聞こえてきた。
どうやら、待ち合わせ場所である校門についたようだ。
ぼーとしていると周りが見えなくなることはよくあることだ。
だから、俺も今まで気がつかなかったのだ。
巫女の隣にいる一人の少女に。
「はじめまして、でいいのかな?シアン。」
俺はその一言でこの少女の正体を見破った。




