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砂
さらさらと微かな音がする
それは私のほかには誰にも聴こえない音
砂が少しずつこぼれ落ちる音
手にいっぱいすくった砂が指の隙間から流れ落ちていく音
その砂が落ちていく音のように
私の中の大切な記憶も
少しずつ 少しずつ
さらさら さらさらと
流れて
やがて消えてしまうのだろう
時が経つにつれ手の中の砂は減っていく
私が私で在るための知識や思考も
薄くなる
小さくなる
私が私でなくなったら
わたしはどうなるのだろう
怖くはない
何故なら私でなくなった時のわたしの事を
今の私は知らないのだから
やがて音が止まる時が来る
手の中の砂が全てこぼれ落ちてしまう時が
私が
消える
時が