無白≪むはく≫
私は今、真っ白な場所にいます
此処には何もありません
誰もいません
何も聴こえません
何も見えません
私自身すら存在しません
でも私は此処に“いる”のです
此処が何処なのか、私にもわかりません
いつから此処にいるのか、いつまでいるのか
そも、此処にいる私とは“何”なのか
存在しない私が何故、いるのか
それすらもわからないのです
何も知らない私は
此処にずっといたいと思ったことはなく
けれどもいたくないと思ったこともまた、ありません
存在しない私は
考えるということもしないのです
だから私はいつまで経ってもわからないままなのです
それが良い事なのか悪い事なのか
その様な事はさほど重要なことではなく
私にとっては事の良し悪し、軽重などは係わりなく
存在しない私は
姿形などの確たる“器”などは持たず
この茫洋たる空間にて
ただ静かにこの瞬間を漂っているのでしょう
ここにいる
私が私について知っているのはそれだけで
そしてこれからもそれ以外の事を私が知ることはありません
“私”とは何?
その答えを私に与えるモノはなく
私はこの果てのない白の世界で
ひとり