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書き散らし  作者: 露岐
1/8

美しい人

 


 


抜けるような白い肌が

 

濡れたような紅い唇が

 

誰もが褒めそやす美しいその姿が


 




人ならざるモノのようで

 

近付き難く


 



少し怖いと思う


 





形の良い口角が静かに上がり

 

笑みが作られたその瞬間


 



釘付けられたように眼が離せなくなった


 




切れ長の眼がほんの少しこちらに向けられただけで

 

魂が吸い寄せられるように





 頭が真っ白になり




 身体が動かなくなる







 顔は微笑っているのに


 その眼はどこまでも冷たくて


 言葉を発することすら出来なくなってしまう









 ふと





 音もなく立ち上がる気配がして


 思わず肩が揺れる



 その反応に


 氷のような無表情がちらとこちらに向けられたことなど


 眼をそらしたこの時には気付きもしなかったけれど








 その美しい人は


 白く光るような繊手で僅かに障子を引き開け


 花の咲き誇る庭を見詰める







 艶やかな黒髪の後ろ姿が


 徐々に遠ざかっていくことに


 ほっとしているのに


 名残惜しくも感じる

 






 その眼で見詰められると身が縮む思いがするのに


 視線が外されると寂しくなる






 会うことを恐れているのに


 何度でもここへ足を運んでしまう







 離れれば良いと思うのに


 傍にいることを止められない






 それは






 あの美しい人に


 疾うに魅入られているからなのだろう







 その人はいつも何も言わない







 ただ







 顔を僅かにこちらへ向けて


 軽く目配せをして


 薄く微笑う







 そして






 ただの傀儡と成り果てて


 誘蛾のように


 ふらふらと引き寄せられてしまう







 傍に立つと


 徐ろに腕を引かれ


 緩く絡められる








 その腕の感触に


 昏い愉悦が湧き上がってくる






 この人にまだ求められている


 囚われている






 そのことに恐れながら悦んでいる







 この歪んだ卑しい心を


 この人は気付いているのだろうか






 気付いているのかもしれない


 それでも何も言わない

 






 それを良いことに


 未だこの位置に立ち続けている







 この心に穢れた澱を抱え込みながら







 互いに何も言うこともなく


 傍らの細い肩をゆっくりと抱き寄せてみると






 再び眼が合った







 冷めたようだったその眼差しが








 ほんの少し和らいだ気がした








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