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彼氏彼女達の恋愛四重奏  作者: ルマ
Chapter1 久米誠吾編with水谷奈緒  「また走りだす日まで」
1/1

1-1

文章力には自信がないのですが、楽しんでいただければ嬉しいです。


あらすじに書いた通り、この1章は誠吾視点で進んでいきます

屋上の扉を開けるとさわやかな風が流れ込んできた。俺が最後にここに来たのは3学期の最後、つまりは3月上旬だったためか、その風がかなり暖かいものに思えた。

俺はそのまま屋上に入り、いつもの場所に寝転んだ。その途中で3限の開始を知らせるチャイムが鳴ったが、俺にはどうでもいいことだった。授業が始まったことにより、一気に喧騒は消え、聞こえる音といえば、風によって揺らされる葉の音か、あるいはグラウンドの方から聞こえる体育をやってる生徒たちの声だけだった。

もちろん、俺のクラスメイト達は今頃3限の数学の授業を受けているだろうが、おそらく今更俺がいなくても驚くやつはいないはずだ。去年までのクラスメイト達はもちろん、新しくクラスメイトになったやつだっておそらく俺たち『4人組』を知らないやつはほとんどいないはずだ。残念ながらいい理由で知られているわけではないが。

『4人組』とは俺と拓也と怜と良介のサボリ常習犯4人組の総称である。ちなみにこの学園は中学と高校がつながっているため、1つ下の学年である良介は今日高校に入学したにもかかわらず、高校の生徒の大半からも知られている。

また、ほかの生徒たちからすると俺がまさに今いる場所、この屋上の主たちということになっているらしい。全く持ってそんなつもりはないのだが、確かに休み時間の前から授業をさぼってたむろっているところに来にくいのは確かだとは思ったりもする。そうでなくてもなぜかこの屋上は人気がないのだけれども。


俺が何もせずただ寝転びながら空を見上げてから10分ほど経ったころ、ふいに屋上の扉が開き、怜がやってきた。

「お、誠吾、もういんのかよ」

「逆にこの時間にやってくるほうがおかしくないか?」

さすがに授業が始まってるにもかかわらず校内を歩き回っているところを誰かに見つかったら説教は免れないだろう。なので俺はここに来るときは絶対に休み時間中に来るようにしている。

「しゃーないだろ。購買で昼飯買ってたんだよ。あ、これやるよ」

そういって怜が俺にふわりと下手投げで投げてきたものをキャッチすると、それは焼きそばパンだった。

「この時間ならまだ全然残ってるからな。ありがたく食えよ」

そういって怜は自分の分の焼きそばパンかぶりついた。授業を屋上でサボっている姿を含め普段の姿からはあまり想像ができないが、怜はいわゆるお坊ちゃんであり、日本でも有数の企業の御曹司だったりもする。こうしてサボっているにもかかわらず成績は常に3位以内をキープしており、ほかの生徒たちからも信頼されている。

当然のことながら狙っている女子も多いのだが、残念ながらある理由で怜に告白する女子は少ない。

「拓也はどうした?」

俺は焼きそばパンを食べるのを一旦やめて尋ねた。

「今日は来てないよ。どうせいいアイデアが浮かんだからサボってるんだろうな」

今日発表された高校2年のクラス分けでは俺がA組で、拓也と怜がC組だった。去年は3人バラバラだったし、中学時代も1度も3人が同じクラスになったことはなかった。

「あいつも大変だねぇ~」

俺は他人事のように言いながら再び焼きそばパンにかぶりついた。

拓也はこちらもまた見た目からは想像できないが、これでもそれなりにファンのいる人気作家だったりする。拓也曰くこの屋上は「人がいないからアイデアや構想をまとめるのにちょうどいい」だとか。実際俺たちのほかには数人しかこの事実を知らず、教師陣も知らない。

「あいつはもう自分で自立して生きてるからな。俺には数年後に自分で会社を動かすなんて想像できないな」

怜は肩をすくめてそう言って、いつの間にか焼きそばパンを食べ終わっていたのか、今度はおにぎりを食べ始めた。そのおにぎりは外の包装からして購買で売ってるものではない。

「優ちゃんのか?」

俺は質問したものの答えはほとんど確信していた。

「まあな。購買で買うのは1つまでに止められてて、相変わらずあとは弁当だ」

そう言ってカバンの中から弁当箱を取り出した。といっても、さすがはお金持ちといったところか弁当箱からして威厳のあるオーラを放っているようにも感じられる。要するにかなり高そうな弁当箱なのである。

「いいなぁ、怜にはお弁当を作ってくれるかわいい女の子がいて」

美澤優、俺が優ちゃんと呼んでいる少女は、学園内でもおそらくトップ5を争う美少女だ。ほかの女の子と比べて少し長めの黒く艶のある髪、スタイルも抜群で胸もDカップくらいはあり(By怜談)、性格も常に自分よりも相手を思いやり、家事全般はプロレベルである。

そんな彼女が怜にお弁当を作ってくるのは、彼女は怜に仕えるメイドだったりするからである。正確に言うなら幼馴染兼メイドだろうか。

まあどちらにしろ、怜に告白してくる女の子が少ないのも、優ちゃんに言い寄る男子がいないのもこの関係があってこそである。

俺から見ても2人は割り込む隙間もないくらいお似合いに見える。

「誠吾も作ってもらえばいいじゃん。頼んだら作ってくれるんじゃない?」

「そう言ってもここ1か月くらい話してないしなぁ」

そう、俺があいつと話したのは終業式のときだから1か月弱前のことだった。その時に話したのもほんの1分にも満たなったような気がする。

「おいおい、誠吾。春休みも終わってまだ喧嘩してるのか?」

怜は本当に心配そうな目で俺を見ていた。

「まあな」

「せっかく同じクラスになったのに、今日1言も話してないのか?」

そう、俺は拓也や怜と同じクラスにならなかったものの、あいつと同じクラスになった。まあ、小学校以来違うクラスになるほうがかなり珍しかったので去年が異常だったのだろう。

「俺と違ってあいつは人気者だから。話しかけられる雰囲気じゃないさ」

俺は自虐的に笑いながら空を見上げた。

空は雲一つなく晴れ渡っており太陽の光が直接目に降り注いだ。俺はまぶしくてすぐに目を閉じると、顔に暖かさだけを感じられた。

「・・・そうか」

怜はそのときどんな顔をしていたのだろう?おそらく納得のいかないような顔をしていたに違いない。

だが、俺は目を開けてその表情を確かめようとはしなかった。



それよりも俺はこの暖かさから、全てを失った夏、俺たちがすれ違った秋、冬を経て、また暖かな季節がやってきたことを感じていた。

拓也も怜も自分の将来が見えている。あいつも瑠璃も優ちゃんもそうだ。良介は・・・・・・よく分らないが。

そんな中で俺の将来だけが真っ暗で先が一切見えない。周りで灯りを探そうとしてもその灯りを見つけることすらできない。俺は手探りでまっすぐ進んでいくしかない。

そして、何かに躓いて、起き上った時には前も後ろも右も左もわからなくなってどうしようもなくなる。


なんと笑える最期だろうか。走ることを、前に進むことをやめた人間にはちょうどいい結末なのかもしれない。

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