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足取りも重く殆ど動かせなくなった頃に、螺旋階段が終わり扉が表れた。
扉は白に傷つけられた私には禍々しい程の白に見えた。
でも、痛みに耐えてまでここに来た意味は、この白に色をつけるためだ。
白に、忌避された私。
しかし知っている。
君は、とても優しい。
君は、白だ。
君は、私を嫌う。
わかってるさ。
わかってる。
君は、怖いんだこの城から出るのが。
だから私の足跡さえ消して、私を拒絶した。
君は、わかってる。
私が君を城から連れ出しに来たことを。
君は、わかってる。
もうこの塔もこの世界も、もう残した命は少ないことを。
君の作った世界を隠してしまいたくてキャンパスに上から白を塗ったんだろう。
君にそうさせたモノは何だったんだろうか。
きっと君は、外の世界に触れて、君の世界を色付ける手を止めてしまったのだろう。
そうだ君は、これでいいのだろうかと思い悩みキャンパスを椅子に座り眺めていたに違いなかった。
恥じたのか、嫌悪したのか。
君は、世界を憎々しげに見つめてそして涙した事を私はしっている。
一番始めに生まれて、忘れられて。
でも他より君をずっと見てきたのは私だ。
君が日々キャンパスに向かい書き足してきた世界。
君がどんなにか嬉しそうな顔でキャンパスに向かっていたかを私は、そうだ。しっている。
わかってる。
ここに私が来たのは私が寿命だからだ。
君を見守り、君を思い君をただ私は見つめてきた。
私は君に忘れられた存在だ。
もう無用な存在だ。
だがただこのまま終わりを待っていられなかったんだ。
君に思い出して欲しいとは言わないよ。
だだ、そう、君を救いたかった。
傲慢かもしれないが、それと君にお別れを言いたかった。
体を寄せて頭を扉に付けて、私はもう力の入らない手でノックをする。
「もう篭るのはやめにしないか。君をただ待っている人がいる」
大丈夫だ。
君は、一人じゃない。
君は、そのままでいい。
私はただ君を愛している。
「君を、迎えに来た」