独立編 【6】
うまくいけば今日中に温泉に入れるかもしれない⁈
それを一番喜んでいるのは他ならぬ双葉だ。
清州の名物屋敷を出てから長い間、風呂に入っていないからだ。
せいぜい井戸水を汲んで体を拭くぐらいしかできなかった。
ぶっちゃけ、臭うのである…つまり臭い⁈
匂い鑑定士の資格を持っている忠犬、勘三の判定によると、今の双葉は
五臭、中位の乙!(鼻をつまむ級) これは上から五番目の判定である。
濡れ雑巾を三日間放置したぐらいの臭いと言えばお分かりいただけるでしょうか?
ここで、臭い判定の基準について説明の必要があると筆者は考える。
え?そんな説明はいらない?
そう言わずに聞いてやってケロ⁈
臭さの判別は上から上位、中位、下位の三段階のそれぞれに、甲、乙、丙を組み合わせて9段階となる。 ㊟胸判定に似ているが当然全くの別物⁈
ちなみに、上位の甲(殺人級)が一臭、ねずみ男の屁。
上位の乙(昏睡級)が二臭、スカンクの最後のいたちっぺ、と続いていくが残りの解説は今はあえて触れずに、上記以外の判定が出たときに詳細を述べることにする。
(勘三はねずみ男の屁を嗅いだことがあるのか?とつっこまないでおくんなまし⁈)
「双葉殿、報告に参りました。」と下っ端忍び参上。
「承りましょう。」
「上杉謙信が上洛を開始!
織田信長が柴田勝家の居城、北ノ庄城に羽柴秀吉を援軍として送り迎撃態勢をとりましたが、羽柴秀吉が柴田勝家と口論になり、秀吉は兵を引き、長浜城にて蟄居。
その後、加賀の国、手取川にて上杉軍と柴田軍が激突!
柴田軍は大敗して敗走。
ところが上杉軍は撤退! 謙信病死の噂があります⁈」
「なんと! 信玄と同じく謙信までもが上洛途中に倒れるとは⁈
して、秀吉殿の様子は?」
「信長に謹慎を命じられたにもかかわらず、連日連夜、酒宴を開きバカ騒ぎとか⁈」
「わかった! 引き続き動向を探ってください!」
「承知!」
秀吉は信長に二心無き事をアピールするためのバカ騒ぎ?
まさか秀吉を処分するほど信長は愚かではないだろう⁈
それにしても信長の天運、凄まじいものがあるな⁈
いまや、悪運か⁈
今の我らは、ただ天下の動向を見守るのみ!
今のうちに力を、蓄える以外の道はなし⁈
「双葉さん! 露天風呂が使える程度には完成しましたぞ⁈」
「おお! すぐ行きます⁈」
見れば未完成ではあるが立派な露天風呂がそこにあった!
「素晴らしい! これって凄くね?」
「確かに、これって凄くね?です!」と翔平。
「もう我慢ならん! 入っても良いか? 良いよな?」
「姉者、待ってください!」
「なぜ止める、わけを言え!」
「みなが注目の記念すべき初湯は、残念ながら姉者では役不足です、胸不足です⁈」
「ぐぬぬ、では聞くがその大役に誰が相応しいのじゃ?」
「それはもちろん...お色気臥竜鳳雛の他は考えられません⁈」
「おお、確かに私が間違っていた、許してくれ!」
「わかればいいのです、ではその手はずでいいですね?」
「是非もなし、慈悲もなし、銭もなし!」
「韻を踏むのはストップハンド(㊟止めて)⁈」
パンパカパーン♪ パッパッパ、パンパカパーン♪
ファンファーレ(㊟口頭での)が鳴り響く中、颯爽と現れたのは、
フェロモン全開のお色気シスターズことお亮とお雛!
ヒュー、ヒュー⁈ ヒュー、ヒュー⁈ 口笛と拍手喝采が鳴りやまない⁈
片手を振り振り、お尻を振り振り、三方にお辞儀!
実に堂に入っている!
二人は手をつなぎ、体を反らしてクルクル回りだすと、徐々に着物が開けていく⁈
ゴクリ! 生唾を飲む音があちこちで起こる。
パサリと着物が地面に落ち、見事な裸体を惜しげもなくさらしながらも、優雅に舞い続ける二人に、観衆はただただ見惚れるのみ⁈
審査員10人全員が10点の札を挙げ、100点満点のサービスシーンと認定された!
映像化すれば視聴率が跳ね上がるのは間違いない⁈
双葉は思う。もし自分が出ていたら罵声やブーイングで済めば御の字、
石を投げられていたかもしれぬと! 翔平の諫言はさすがだったな⁈
二人は露天風呂の湯に足を入れ徐々に体を沈めていく。
肩までつかると上を向き、ふう~~~⁈と長い息をついた後に
「逝っちゃう~♡」と。
たまりませんわあ⁈ わたしもいっちゃいたい⁈
観衆はふらふらと夢遊病者の如く着物を脱ぎつつ湯に浸かろうと露天風呂に向かう。
お色気シスターズの周りはやがてぎゅうぎゅう詰めになり、押すな押すなの大騒ぎ⁈ どさくさに紛れて触ってる?
双葉は出遅れてボーとしたまま佇んでいる。
そこに、大工の頭領が近づいてきて双葉に尋ねる。
「脱衣所と囲いの塀はどんな感じで建てましょうか?」
「囲みの塀? そんな無粋なものがいると本気でお思いかな?」
「ですよね~、塀など《《邪魔》》ですよね⁈」
満面の笑みで跳ね歩きしながら去っていった。
(さては、覗く気満々だな? あの親父!)
双葉のわがままで、露天風呂以外にも名物屋敷内に大浴場を優先的に造るように指示を出した。
今日のように出遅れて、入りたいときに入れないのが我慢できないのだ⁈
いずれ造る予定なので問題ないよな! うんうんと頷き、自分に言い聞かせる。
大浴場は例の〈|極楽浄土!浮世体験⁈改〉の目玉の一つなので、絶対に手を抜けない⁈
古のローマの浴場設計士ルシウス(㊟参考文献テルマエ・ロマエ)さえも唸らせるぐらいまでに仕上げたい⁈
それには資金が圧倒的に不足している。
予約券200貫×50枚の売り上げ金、合計10000貫が入ったとはいえ、まだまだ全然足りない⁈
困ったときの財務部長、翔平に相談するとしよう。
「それなら予約券を買った助平たちに前売り割引券を残額1800貫のところを1500貫ぐらいに設定して売ればかなりの資金を集められるかと。」
「それは名案! すぐに手配してくれ⁈」
そこに勘三と見栄晴、加えて妖しげな女性の三人が馬で駆けつけてきた。
下馬した三人は双葉の前に跪き、
「エロ本、、、兵法書完売しました!」
「おお、でかした! 勘三、お手!」
「ワン!」
「それにしてもたった二日での完売とはな。」
「そのことですが、後ろに控えているこちらの女子の働きによるところが大きく、連れて参りました。」
「あっしはベラっていうケチな野郎・・・女郎でござんす。
そこのお兄さんがたに誘われてエロ本を捌くお手伝いを少々。
おかげ様でがっつり儲けさせてもらいやした。
今後とも良しなに⁈」
「これはご丁寧な挨拶、痛み入る。
二人が随分世話になったようで。
謝礼代わりにと言っては何だが、風呂にでも入って夕餉などいかがですか?」
「もうたっぷり手数料をもらいやしたが、遠慮なく受けさせてもらうとしやす⁈」
ベラ姉さんは女専用50冊と、男女兼用40冊、男専用30冊ほどを瞬く間にさばいたらしい。
合計120冊を一冊平均300貫でぼったくって、ベラ姉さんの売り上げは36000貫。
手数料3600貫が取り分。
ちなみに勘三と見栄晴の二人で男専用を20冊。売り上げは6000貫。
見栄晴の取り分が2400貫。
ほとんど、ベラ姉さんにおんぶにだっこではないか⁈
それでも追加の軍資金36000貫ほどが懐に入った!
有難いこってす、アイランドゴッテス⁈
「翔平、あのベラ姉さんをどうおもう?」
「底が見えないというか、滅多にいないタイプですね⁈
気になるなら、少し話してみましょうか?」
「そうしてくれ⁈」 翔平をもってしても底が見えないとはいったい何者?
なんにせよ、今日は記念すべき温泉発掘の目出度い日!
人数が人数だけにいつものような宴会は無理だろうが、それなりには皆で
祝宴など開きたいものだな⁈
味平に御機嫌伺いしてみると
今日は90名分なので、できる範囲の用意しかできないとのこと。
露天風呂の前の広場に二重の車座で、中央に簡易舞台を設置して宴会芸も楽しめるように配慮した。
篝火も用意して野外の祝宴は日が暮れても一刻《二時間》ぐらいは続けそうだ。
祝い膳は各自が自分で運ぶように通達した。
品書きはおにぎり(希望の個数)、刺身盛り合わせ、天婦羅の盛り合わせ、
焼き魚、だし巻き、煮物、酢の物、冷奴、味噌汁、漬け物、お茶。
お酒(希望者)。
これってできる範囲なの?
露天風呂に入り祝い膳を運んでそれぞれ車座になる。
篝火が焚かれ、中央の舞台が照らされると、そこにはお色気シスターズが
身じろぎもせず佇んでいた。
笛の音と太鼓の音に合わせて二人は舞い始める。
曲目は〈極楽浄土〉
月明かり昇る刻
灯る赤提灯
祭囃子の合図
ふわり 蝶が 誘い出す♪
(ちょいと覗いて見てごらん)
迷い込めば 抜け出せない
(楽しいことがしたいなら)
おいでませ 極楽浄土♪
脚の動きが鮮やかで他に類を見ないステップ!
優雅な動きが次第に早くなり、盛り上がっていく⁈
鼓が激しく打たれ舞が終わると万雷の拍手!
祝宴の始まりに相応しい見事な舞であった!
次は東雲姉妹による〈もすらの歌〉
バックコーラスが付いた新バージョン⁈
太陽の踊り(㊟ドラクエ参照)に似たユーモラスな動きに
歌は完ぺきなハーモニー⁈
場が温まれば乳揺らしシスターズの登場⁈
得意の乳揺らし腹踊りが披露されると大爆笑に大喝采⁈
他にも多彩な宴会芸や歌に踊りが次々と⁈
夢のようなひとときだったと大絶賛のうちに宴は終わりを告げた、、、
―以下に続く―




