独立編 【12】
「双葉殿、報告に参りました。」と下っ端忍び。
「承りましょう」
「信長は明智光秀に四国長曾我部の調略を命じたのち、その役を解任。
現在の所領地、丹波地方を没収し毛利家の領地を新たに切り取り領地とせよと。
そのため、羽柴秀吉の援軍として中国地方に向かうよう命じられたとの事。」
「ご苦労様です。引き続き動向を探ってくだされ。」
「承知!」
「翔平! これってかなりの無茶フリじゃね?」
「確かにかなりの無茶フリじゃねです! 明智殿に早急に連絡を取るべきかと」
そのとき、ハゲタカが丹波より書状を届けに来た。
読んでみると「時は今、天が下しる五月かな」と書いてある。
「翔平、これってあれなのか?」
「間違いなくこれってあれなのかです!」
もはや、二人以外には理解できない会話になっている。
だが、風雲急を告げる状態なのは確かだ!
「戦闘要員は全員レベル5装備で京の町に向かう、急げ!」
「了解、少佐!」草薙素〇の出番がついに来た。
「本職を忘れるなよ、芸人三人衆!」
「そうだった!」 ボーっとしていた三バカ衆が我に返って慌てて支度を急ぐ。
「ハゲタカ、堺の町のベラさんと勘三を京の更科に呼んできてくれ」
「承知!」
双葉は直感的にベラを呼ぶべきだと判断したのだ。
ついでに勘三も呼んでやらないと後でうるさいからな。
見栄晴は足手まといなので来ない方がよいが、付いてくるかもしれない。
京の町で更科に入ると小梅がテテテと寄ってくる。
「小梅さん、何か伝言はありませんか?」
「大久保長安さんの繋、昆吉さんより硝石の鉱脈を見つけたと報告。
村正さんに硝石を持ち込んで火薬の加工を始めるって言ってたよ」
「それは超朗報! もう南蛮商館のぼったくり硝石を買う必要がなくなった!
あんな商売は、例え神が許してもこの私が許さん!」
どの口が言うのかな?
そのとき、光秀からのもう一人の繋、ガマガエルが伝言に来た。
「明智殿より伝言。 敵は本能寺にあり! 現地にて待つ」と。
「承知! 家康殿の所在は?」
「少数の家来と堺の町を見物中とのこと」
「ガマよ、家康殿に直ちに浜松に帰るように伝えてくれ!
私の名前を出しても構わない」
「承知!」
「三平! 秀吉殿に毛利と講和し急ぎ姫路に戻るように。
理由は...言わなくてよい」
「承知!」
今打てる手はこれぐらいか? いざ、本能寺に!
その前夜、本能寺の寝所で信長は飛び起きた。
全身に冷や汗をびっしりとかいていた。
最近、自分でも制御できないぐらい憎悪や怒りが湧き上がり、
気が付けば目の前に地獄絵図が広がっている。
これは、本当に自分が命じてやらせたことなのか?
分からない...時折り記憶が飛んでしまい何も覚えていないのだ。
岐阜城にいた頃に、もし日本を統一できたなら、あとは信忠に任せて
藤吉郎や双葉たちと大陸に渡り気楽な旅などが出来るなら最高に楽しいに
違いない! そんなとりとめもない夢物語を思ったことさえあった...
それが今やどうだろう? 双葉が去り、藤吉郎にもしばらく会っていない。
心の底から大笑いしたことが遠い昔の出来事...
気が狂いそうな焦燥感! 誰かこの儂を救ってくれ...
一夜明けて、運命の日
夕方ごろには、明智軍が着々と配置につき本能寺を、二重三重に取り囲んだ。
光秀の号令で一斉に鬨の声を上げた明智軍が攻めかかった。
「蘭丸、何事ぞ?」
「桔梗の紋の旗印! 明智光秀の謀反でございます⁈」
「そうか、光秀なのか...是非に及ばず!」
「早くこの場から抜け出してくださいませ!」
「駄目だ! 他の者ならいざ知らず、光秀が相手だと...無駄なこと⁈」
信長は屋敷に火を放つよう命じて、数名の近習と共に応戦する。
だが、多勢に無勢。
信長は蘭丸にしばらく時を稼ぐように命じて奥の部屋に入った。
「もはやこれまでか... 腹を切るつもりで着物を開けた。
「信長殿に申す! 腹を切ってはなりませぬ!」
「双葉か、双葉なのか?」
「はい! 信長殿の魂を救うために参上しました!
ベラさん、お祓いを始めてください!」
ベラはお札を取り出し、呪文を唱え始めた。
「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり!」
「駄目です!ベラさん⁈ それだと、悪魔が呼び出されるのでは?」
「間違えちゃった>< では改めて...
「エコエコアザラク、エコエコザメラク...(黒井ミサかよ!)
信長はとたんに苦しみだし、喉をかきむしる。
見る見るうちに信長の表情が変わってきた。
まさしく魔人そのものに変貌を遂げた!
双葉は背中の宝剣・神風を抜刀し、変わり果てた信長に切っ先を向けた。
「お前の一族は昔から、我らの邪魔ばかりする。
口惜しや、菅公の末裔よ⁈ 必ずやこの恨み晴らさずにおくものか...
「浦見魔太郎かよ! いざ、悪霊退散⁈」
掛け声とともに魔人に切りかかる。
「グエエエエエエ...
断末魔の悲鳴と共に魔物は黒い霧となって消えていった。
「信長殿! お気を確かに!」
「おぉ、双葉よ。 儂は一体...
「魔に取りつかれていたのですが、どうやら祓えたようです。」
「そうか、儂の魂を救ってくれたのじゃな?」
「ですが、この場から救うことはできません、お許しを...
「わかっておる、気に病む必要はない...が、最後に一つだけ頼みを聞いて欲しい。
この首を光秀の前に晒したくないのじゃ...分かってくれるか?」
「承知致しました。 誰一人ここには近づけませぬ!」
「蘭丸よ、ともに旅立ってくれるか?」
「もとよりそのつもりでございます!」
「さらばじゃ、双葉! お主に会えて良かった...わが友よ!」
「さらば、友よ!」
天正10年6月2日 本能寺の変により織田信長の物語は炎の中で幕を閉じた。
―以下に続く―




