尾張編 【12】
案にたがわず佐久間盛信は墨俣築城に失敗した。
次に名乗りを上げたのは織田家随一の猛将、柴田勝家!
二日目にある程度砦ができた頃を見計らって斎藤勢が打って出る。
勝家は迎撃にでて斎藤勢を追い返す。
さすがと思いきや砦に戻ると斎藤勢の別働隊に砦が跡形もなく壊されていた。
おまけに資材も丸ごと奪われている。
「誰ぞ、墨俣築城成し遂げるものはいないか?」少しイラつき気味の信長。
「その役目、是非とも拙者に!」藤吉郎の名乗りに今度は誰も異を唱えない。
「藤吉郎、任せたぞ!」
「お任せあれ!」満を持しての藤吉郎である。
評定のあと信長に呼び出された。
「双葉よ、義元を打ち取ってから皆儂を尊敬、いや憧れの目で見たものだが、
2度の墨俣築城の失敗で何やら雰囲気が変わってきたのじゃ。
次は失敗するわけにはいかぬ。
そこで藤吉郎の手助けをしてくれぬか?」
「もとよりそのつもりですのでご安心を!」
「そ、そうか。なら大丈夫だよな⁈」
家臣の前では決して見せない姿をさらけ出す信長を見て
思わず、〈役者じゃのう⁈〉と。
我が屋敷に戻ると藤吉郎と弟の小一郎に加え蜂須賀小六、全員そろっていた。
墨俣築城の作戦会議が始まった。
まずは美濃の地理に明るい蜂須賀衆が、墨俣の上流で木材を伐採して筏を組み下流に流す。
それを墨俣で受け取って組み立てる。
初日の昼は堀と土豪だけを作り柵は立てないでおけば、斎藤勢は翌日までは出てこないだろう。
ある程度砦を作らせてから襲撃し資材を持ち帰るのが狙いだからだ。
そこを逆手にとって夜のうちに一気に砦を完成させる。
大量の資材を現地調達するのがこの作戦の妙なのだ。
東雲姉妹は蜂須賀衆に同行させ周辺の哨戒をさせ、夜明け前に墨俣で合流させる。
そのあと出撃してくる斎藤勢を撃退させれば任務は完了となる。
いよいよ明日から蜂須賀衆による資材調達が始まる。
二日もあれば十分だ。
藤吉郎と双葉たちは2日後に資材なしで墨俣に向かい堀と土豪を作り始めた。
日暮れ前には上流から流された資材の筏が到着しだした。
筏をばらして柵と物見櫓を立てていく。
上流で全ての筏を名がし終えた蜂須賀衆と東雲姉妹も墨俣に合流して
砦造りを手伝った。
夜が明けた。
斎藤家の見張りが墨俣を見ると、そこには砦があった!
世に言う一夜城である。
慌てふためきながらも斎藤勢が出撃してくると、十分に引き付けてから双葉たちと蜂須賀衆で迎え撃ち藤吉郎たちにはそのまま砦を強化させる。
あっけないぐらい簡単に斎藤勢は逃げて行った。
双葉たちが強すぎるのだ。
どうやらこれで任務完了だ⁈
砦に戻り勝鬨を上げた後も砦の強化を続ける。
守備隊を残し信長に報告に向かうことにする。
「小六殿、今回の働きは誠に目を見張るものがありました。
良ければ信長様に推挙しますが。」
「いや、儂は信長には仕えぬ。性格的にぶつかりあうに相違ない。
だから藤吉郎...いや木下殿に仕えることにする。」
「これは驚いた! それが本気なら信長様にお伺いを立ててみますが、許してくださることでしょう...たぶん。」
「それでは清州に凱旋といきましょう!」
清洲城謁見の間にて
「墨俣築城成し遂げてまいりました!」
「でかしたぞ、藤吉郎! 今これより足軽大将に昇格してやろう。」
「はは! 有難き幸せ。 ですが皆の協力によるところが大きく、中でも後ろに控えている蜂須賀小六どのと東風殿のおかげです。」
「さようであったか。 蜂須賀殿、ご苦労であった。
褒美をとらせる。何か望みはあるか?」
「我ら蜂須賀衆、願わくば木下藤吉郎殿の配下として織田家に仕えたく存じます。」
「相分かった! 双葉は何か望みがあるか?」
「美濃の山奥に我らに協力してもらっている小さな里があり、今まで蜂須賀衆に警護してもらっていましたがこれからも引き続き守っていただければ幸いです。」
「蜂須賀の里を小六の預かり領地のままとすれば良いということだな?」
「ご賢察!」
「許す、良きにはからえ。」
かくして美濃攻略がまた一歩前進したといえる。
これでまた一歩野望に近づいた⁈ かも?
―以下に続く―




