尾張編 【10】
清洲城 評定の間
織田家の主だったものが集まる中、信長が席に着く。
家臣一同平伏している。
信長が口を開くと全員面を上げた。
「皆に伝えておく。この度岡崎にて今川家から独立した松平家と同盟を結ぶ。
過去のこだわりはお互い水に流し、東の今川家は任せて我らは美濃を取る!」
世に言う清州同盟を結び、いよいよ美濃攻めがはじまる。
だが稲葉山城はあの斎藤道三が築いた難攻不落の名城。
力攻めでは被害も大きくなるのは必定。
果たしてどのように攻略するのか興味深い。
下知あるまで各々《おのおの》役目を全うするようにと。
(まさかまだ何も攻略法がないわけではないだろうな。
あの信長殿の事だ、凄い秘策があるに違いない。)双葉はそう考える。
一方信長の思案
(困った⁈ 皆には美濃攻めを示唆したが良策が浮かばない。
どうしたものか?)
ポンと手を打ち
そういえば義元上洛のときの東風双葉の見事な献策!
あ奴なら何か良い方策があるかもしれぬ。
「猿!双葉を呼んでまいれ」
いきなりの呼び出しに戸惑いながらも勘三と共に信長の前に座った。
忠犬は双葉のそばを離れたがらない。
「猿、人が来ぬように見張ってこい。誰にも聞かせられぬ内密の話じゃ」
「お任せを!」
(見張りながら猿は聞いても良いということだよな。)
「双葉、美濃攻めの方針が無い」
「無いんかい!」大名に思わず突っ込んでしまった!
「失礼ぶっこきましてございます。」
「許す、許す代わりに美濃攻めの献策をせよ。今川上洛の時のような見事な献策を頼む!」
(そう言われてもあれは今孔明に教授してもらったと言えようはずがないし。
困ったな。
信長殿はそれがしを皮被り...じゃなくて買いかぶっているようだ。
ここは一つ軍師っぽく適当にごまかすのがいいか。)
双葉は竹中半兵衛をイメージしつつ瞼を閉じ考える...ふりをする。
薄目を開けて懐から扇子を取り出して、トンと床をたたき
「ここが清洲城、そしてここが稲葉山城。
このふたつの間に美濃攻めの拠点を築くのが良いかと存じます」
「おぉ!さすがは双葉じゃ。実は儂もそれしかないと思っていた」
(思っていたなら献策を無理強いするなよな!)
「さすがは信長殿」
「ガッハッハ!」
二人して高笑い! 案外二人の相性は悪くない。
そのとき
「なりませぬぞ、お市さま!」
「どきゃれ、猿殿⁈」
いきなり襖を開け信長の妹、お市の方が乱入してきた。
見れば哀れ藤吉郎はお市の方に踏みつけられもがいている...が嬉しそうな顔!
(まさかのご褒美なのか?)
「市か? 猿、通してやれ。どうした。市?」
「噂の客分を見に参ったのです。」
お市の方は双葉をジロジロと値踏みしたあと
「お立ちあれ。」と有無を言わさず。
「われより背が低いのじゃな、顔は良いのに残念じゃ!」
(一体何が残念なのじゃ?)
訳が分からぬまま、お市の方を観察する。
美しい顔立ちだがかなりのじゃじゃ馬、胸はまあまあある(五類)。
よって、好感度は今一良くない。
どうやら好感度の基準は胸の大きさに反比例しているようだ。
「残念な東風双葉です。よしなに。」とそっけない。
「市、今は大事な話の途中だ。控えておくがよい。」
「ふんだ、おじゃまさま!」舌をだし、もう一度藤吉郎を踏んづけて出て行った。
嬉しそうな藤吉郎! やはりご褒美なのか?
「猿!誰も入れるなと言ったはずだぞ!たわけが⁈」
「面目ない! ですがお市の方は猿では止められませぬ」
「まあよい、明日主だった者たちを集めよ!」
「御意⁈」
―以下に続く―




