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真・東風吹かば⁈  作者: ケロボッチ


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尾張編 【3】

 三人が丹羽宅に着くと、すぐに昨日の奥座敷に案内された。


 丹羽長秀、前田利家と信長の代理で来たという若い武士、東海龍之介。


 双葉に勘三、藤吉郎を加えて六人。


 おそらくは織田家の命運を担う者たち。


 今日も様々な意見が交換され、皆かなりの手ごたえを感じていた。


 問題点があれば皆で知恵を出し合って解決していく。


「今川家の偽伝令、旗印が必要かと」龍之介の進言だ。


 さすがに鋭いな。ここに呼ばれるわけだ。


「作るにしても見本がいる。岡崎城から盗むしかない。」と利家。


「となれば忍びの者を雇うのが上策。どこに依頼すればいいのだろうか。」長秀の言。


「甲賀衆は六角家、伊賀衆は松平家、根来衆は本願寺家と懇意なため控えた方がよいと思います。」藤吉郎が続けた。


「少し遠いのですが越後の国、軒猿の里に優れた忍びがいると聞き及んでおります。加藤段蔵、通称飛び加藤と申す者」と龍之介。


「それがしが行きましょう」双葉が申し出る。


「ほかの方々にはやらねばならぬことが山積み、それがしなら4日で戻れます」


「お頼み申します。」即断の長秀。


「勘三は残って街道沿いの抜け道を作る手伝いを。


 藤吉郎殿、留守の間も風呂場を開放してくだされ。


 例の件もお願いしまする。」


「わかりました」 「承りました」と二つ返事。


 双葉は立ち上がり、会合を抜けて出発した。

 この行動の早さが双葉の持ち味である。


 馬小屋のケロに「頼むぞ、相棒」と声をかけると、ブヒヒーンと嬉しそうにいなないた。


 越前なら隠し蔵元によってもさほど回り道にならないし、手土産に酒があった方がいい。


 それに翔平がいれば伝手つてがあるかも。


 久しぶりの遠出にケロの張り切りようが凄い!


 ほとんど休まず一気に駆け抜けた。


 蔵元の長老に挨拶にいくと、あんたはうちの恩人だから特級酒は格安で、1級酒と2級酒はただで欲しいだけ持っていって良いとの有難いお言葉。


 今回は1級酒を二壺甘えさせてもらった。


「双葉兄ちゃん、来てたんだ!」と翔平。


「おお、翔平。いてくれたか」


「何か用事?」


「越前の軒猿の里って知ってるか。」


「知ってるよ。酒を届けたことがあるし。」


「知ってるんかい⁉」突っ込まざるを得ません。


「懐が温かいときは、頭が配下の忍びによく買いに来させてたよ。


 最近は不景気なのかとんとご無沙汰だけど。」


「里まで案内を頼めるかな。」


「もちろん、いいよね長老?」


「双葉さん、相談があるのですが。」


「承りましょう。」


「翔平のことなのじゃが、もともと天涯孤独でここで育ててきたが、このまま埋もれさせるのも不憫な気がするでの。


 どうじゃろ、身内として連れて行ってもらえないか。」


「承知いたしました、養子ではなく弟として。それでよいか、翔平?」


「ありがとう、双葉兄ちゃん、いやさ兄貴。」


「兄貴はやめて。」


「双葉さんのお役に立つよう頑張るんじゃぞ、翔平。」


 すでに十二分に役になってるけどね。


「東風翔平よ。軒猿の里へ案内を。」


「はいな、あんさん!」豆たんかい⁉


「あんさんもやめて。」


「翔平にはこれからも人脈を広げてもらいたいのがひとつ。


 特に商人と顔をつなげてもらいたい。


 もうひとつはお孝さんと協力してわっちの里の運営を任せたい。


 しばらくはこの二刀流に磨きをかけて、ゆくゆくはメジャーで...」


「めじゃあ?はよくわかりませんが、わかりました、親分!


「親分も却下。」


 ケロが全力疾走をしたくてうずうずしてるみたいだ。


「飛べ!ケロよ。」合図と号令に反応して、ブヒヒーンといななくと、

 凄まじい勢いで走り出した。


 (飛べないけどな、ぼけえ。)心の声が?


 ある程度の間、全力疾走して満足したのか速度を緩め、今は並足ぐらいで進んでいる。


 名馬というより化け物じみてきたな、こやつは。


「翔平、軒ざるの里の加藤段蔵を知っているか?」


「飛び加藤のあんちゃんね、知ってるよ。」


 愚問だった。


「なんでもうちの酒を飲むために仕事をしているって言ってた。」


 それはそれで少し引くな。


「2級酒一壺で3人まで殺すリストに載せられるって。」


 かつてのビザンツ=タクゼンを彷彿させるな。


 今となっては懐かしい。


 惜しい人を亡くしたものだ。

(多分まだご存命だよ、失礼な奴だな。)


 身内ネタで申し訳ない。

 失礼ぶっこきましてございます。


 少し上り坂が続いたが登り切ったところで、急に視界が開けた。


 日本海が見える。

 心なしか海風が潮の香りをここまで運んで来ている気さえする。


 風が心地よく、木陰で弁当を食べることにした。


 翔平に3個与え、双葉は残り7個を瞬く間に平らげた。


 おにぎりの具は梅干しと刻み昆布の2種類で、どちらもべらぼうに美味かった。

 沢庵とお茶も有難い。


 翔平はまだ2個目の握り飯を食べているところだ。


 双葉の視線は明らかに残り1個の握り飯。

 

 それに気づいた翔平は残りのほうもかじり始める。


 チッと舌打ちする双葉に握り飯をほおばりながらにっこり笑った。


 十分な休息を取り、元気溌剌!双葉と翔平だ。


 この分だと日暮れまでに富山の町まで行けそうだ。


 富山の町に着いたときは日暮れまで一刻はあったが、直江津の町までは到底行けるはずもない。


 今日はここで宿をとることにするか。

 

 宿を決め、女将さんには朝一番で出立の旨を伝えて、朝餉4人前と握り飯11個を弁当で頼んでおいた。


 日課のケロの世話を済ませ、夕餉の前に翔平に稽古をつけた。


 筋は悪くないが翔平の才は武芸ではない。

 

 受けに徹して身を守る術を教え込む方針でいく。


 今日も一日が終わろうとしている。


 今日最大の収穫は海よりも広い顔を持つ人事部長が身内になったことだ。


 これでまた一歩野望に近づいた⁈ かも?


 ―以下に続く―

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