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真・東風吹かば⁈  作者: ケロボッチ


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放浪編 【2】

 (目指すは井ノ口の町、確か堺からは北東の方角だな。

 急いでも2日はかかるし、ここは自腹を切ってでも馬を使うべきか。)


 町の住民と思しき娘が洗濯物を干していたので、近づいて馬屋の場所を聞くと指さしながら、すぐそこだよと教えてくれた。


 馬屋につくと髭面の親父が熱心に馬の世話をしている。


 その様子からは馬への並みならぬ愛情が見て取れる。


 「ご免!馬を見せてもらえないか?」


 「いいぜ、好きなだけ見ていきな。」


(わりといい馬が揃ってるな。何より手入れが行き届いてる。でもさぞかしお高いんでしょうな。)


「ちなみに値段はいかほどに?」


「貸し出しと買取で違ってくるが、買取のほうが断然お得だ。


 貸し出しは一日につき馬の値段の4分と4割の保証金が必要となる。


 能力や年齢、気性などからわしの独断で値段を決めている。


 今、ここには50貫から200貫まで8頭の馬がいるが、どれが一番良い馬かわかるかい?」


「勿論、わかりますとも。」厩舎の奥を指差して、「あの栗毛が群を抜いていますね。」


「ほう、馬を見る目はあるようだな。で、馬の扱いは得意かな?」


「それがし、不思議と馬には好かれるようで馬のことなら何でもお任せあれ。」


「それなら好都合だ。一つ相談があるのだが、いいかい?」


「承りましょう。」


「実は最近、若駒を一頭手に入れたのはいいのだが、どうにも気性が荒すぎて買い手が付きそうになくてな。儂の目に狂いがなければ能力はピカイチなんだが。


 もしあんたが乗りこなせるなら、格安で譲るが見てみるかい。」


「是非、拝見させてください。」


 厩舎の裏手に回ると、縄で木に繋ぎ止められたまま伏せていた若駒が私たちの気配を察したのか、立ち上がり背を向けて戦闘態勢に入った。


(寄らば蹴るぞ)と言わんばかりに威嚇している。


 無造作に若駒に近づく双葉に「危ないよ!」と声を掛けた馬主に振り向きもせずに右手を上げてひらひらと振った。

 心配ご無用とでも言いたげに。


 若駒は間合いに入ってきた双葉に鋭い蹴りを一閃!


 双葉は後ろには下がらず間一髪で蹴りをかわし横をすり抜け、素早く両腕で若駒の首を抱え込み耳元に、穏やかな声で「それがしの勝ちだ。」と囁いた。


 一瞬の出来事、例えるなら風のように鮮やかな動きか。


 若駒は先ほどとは打って変わり、目を閉じてじっとしている。


「今からそれがしがおぬしの主じゃ。末永くよろしく頼むよ。」


「こいつはたまげたな。」馬屋の親父は髭をなでながら感心したようにうなずくと、

「ようがす。この馬はあんたに仕入れ値の半額30貫で譲るが買うかい?」


「有難く買わせていただきます。早速ですが少し乗ってみたいのですが。」


「いいぜ。鞍と手綱、あぶみはまけといてやるよ。」


 自ら若駒に馬具一式を装着して馬に跨がった。


 首元をポンと叩くと、歩みだした。


 いわゆる常歩なみあしから両足で馬の腹をたたくと、速歩はやあしになり、気合を入れると駆歩かけあしから全力疾走になった。


(これは速い!凄いな!)


 手綱を少し引くと、速度を緩め、もう一度引くと、ゆっくり止まった。


(反応もいい!じっくり育てれば物凄い名馬になるやもしれぬな。


 堺に着いてすぐにこんないい馬が手に入るとは。

 ご先祖様・道真公のご加護やもしれぬな。)


 馬屋に戻り親父さんにもう一度礼を言って京に向かうことにした。


 美濃に行く途中で北野天満宮を参拝するつもりだ。


(そうだ!この若駒に名前を付けてやらねば。


 こ奴はすぐに蹴ろうとするから...


 ケロ!今日からお前はケロだ。


 嬉しいか?嬉しいよな?嬉しいだろ!)


(嬉しいわけねえだろが、ボケェ⁉)


 なんとなく、心の声を聞いたような気がした。


 春風ケロ(若駒)のおかげで思ったよりも早く京に着くことができた。


 ちなみにケロと呼ぶとそっぽを向いて無視されたので、姓に春風とつけてやったらどうやら気に入ったみたいだ。


 この日の出会いから別れの日まで、双葉は日課として朝晩の餌と水、毛並みの手入れを自らの手で行い、欠かすことはなかった。


 上方に着いた早々、最速の移動力を手に入れることができた。


 これでまた一歩野望に近づいた⁈ かも?(猿マンより抜粋⁈)



 そろそろ昼前だ。


 朝から何も食べていないのでかなりの空腹を感じる。


 京の町には馬屋がないらしいが、世話をしてくれる預かり所のような場所はあるみたいだ。


 辺りを見回すと2、3頭の馬をつないでいるそれらしき小屋を見つけたので、行ってみると、確かに預かって餌や水などの世話をしてくれるという。


 ケロを預けて昼飯を食べてから、座によることにした。


 預かり所の主にはくれぐれもケロの後ろには立たぬように言っておいたが。


 相も変わらず隙があれば蹴ろうとする。困ったやつだ。


 京の町を歩いてみると堺の町とは雰囲気が違っていて、あまり忙しそうにしていない。

 戦乱の傷跡があちこちに残ってはいるが、どこかのんびりした風情がある。


 蕎麦屋があったので喜び勇んで飛び込んだ。蕎麦は大好物なのだ!


 店の中はまだそれほど混んでいなくて、落ち着いて食べられそうだ。


 壁の目立つところに品書きが張ってある。


(ふむふむ。かけそば、ざるそば、たぬきそばにかも南蛮まである!

 ジュル。いかん!よだれが...)


 小柄な看板娘に声を掛けると「いらっしゃい!おきまりですか。」と笑顔で近寄ってきた。

 なかなかの美人べっぴんさんだ。


「取りあえず、ざる5枚とかも南蛮、あと握り飯を5個頼みます。」


 娘は目をパチクリさせて、「わ、わかりました。」と返事をして、店主の方へ小走りで立ち去った。


 双葉は蕎麦が来るのが待ちきれず、割り箸を割って口にくわえたまま、周りの人たちが蕎麦を食べている様子をキョロキョロ見ている。


 その様子を見て、看板娘はクスッと笑って何やら店主にささやくと、握り飯と沢庵、お茶をお盆に乗せて運んできた。

 

 「うちは注文が入ってからそばを切って茹でるので、少し時間がかかるのでお先にこれをどうぞ。」と握り飯と沢庵だけ運んできた。


 「かたじけない、そなたは気が利く...」言い終わらぬうちに握り飯にかぶりついた。

 お約束で喉につかえては、お茶で流し込み瞬く間に全部平らげた。


 「握り飯を追加であと5個と、お茶のおかわりを頼む。」

 

 「すぐに持ってきますね。」あらかじめ余分に作ったみたいでとんぼ返りで追加分を持ってきた。


 「はい、お待ち!」


 「おお、早いな!やはりそなたは気が利くな。きっといいお嫁さんになるよ。」


 「いやだあ、お侍さんたら。」言うと同時に双葉の背中を叩こうとした。


 かわすまでもないと高を括っていた双葉だが、直感的に危険を感じ咄嗟に身をかわすと、ヴゥンと凄まじい空振りの音!さらには強い風圧!


 喰らっていたらやばかったな。

 看板娘侮り難し! 

 

 待望のざるが5枚運ばれてきた。


 握り飯の時とは打って変わり、落ち着いて両手を合わせ「頂きます。」


 蕎麦を適量箸で掴んで高く持ち上げ、そばつゆに少しつけて、一気にズズーとすすった。

 見惚れるほどにきれいな食べ方だ。


 5枚目のざるを食べ終えると同時に、かも南蛮が運ばれてきた。


 何度も息を吹きかけ恐る恐る食べている。


 どうやら相当な猫舌のようだ。


 食べ終えるのにはかなりの時間がかかりそうだ。


 今まさに昼時になろうとしている。


 店の中はほぼ満席でごった返している。看板娘の奮闘ぶりが見事だ。


 蕎麦を運んでいるときは両手がふさがっているのをいいことに、やたらと尻などを触ってくる輩がいて、「触った人はお代倍払いね!」と看板娘。


 それでも大半の客は触ろうとするようで売上5割増し!


 今風に言えばプリけつ⁉ これぞまさしく黄金の尻‼

 

 うまい蕎麦と良い尻に巡り合えて上機嫌な双葉は、代金を払うときに、尻の名前じゃなくて...看板娘の名前を聞いた。


 「更科の娘、小梅と申します。以後ごひいきに。カモネ...上客様。」


 「小梅!それは縁起が良い。それがしの家系は代々梅を家紋とするぐらいに梅の花を愛でるが故に。


 その名に免じて喜んでカモネギになってやろうぞ。」


 「失礼ぶっこきましてございます。何卒よしなに。」

 なかなかにしたたかな娘だ。


 蕎麦屋を後にして座に向かった。


 ここの蕎麦屋が後の双葉たちの拠点になり、看板娘が連絡網の要になるのはまだ先の話だが。


 ―以下に続く―

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