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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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知らない作り方

これで、数ヶ月もすれば結果は出る。


畑は嘘をつかない。

土が変われば、作物が応える。


だが――待っているだけでは、足りない。


時間は、限られている。


十二歳の豊作。

十三歳の豊作と小麦暴落。

十四歳の凶作。


頭の中で、年表が勝手に並ぶ。


「……間に合わないな」


呟いた声は、幼い。

だが、焦りだけは大人のそれだった。


次に手を打つべきは、分かっている。


小麦だ。



前の人生で、忘れられない光景がある。


侵攻してきた隣国軍。

その補給部隊が運んでいた食糧。


乾燥した、細長い塊。


最初は、ただの保存食だと思った。

だが、違った。


軽い。

腐らない。

水と火さえあれば、すぐ食える。


――補給が、異様に楽だ。


あれを見た時、背筋が冷えた。


戦は、剣だけでは無く、胃袋で決まる。


後で聞いた。

小麦を練り、乾かしたものだと。


乾燥パスタ。


言葉だけは、覚えている。

だが――作り方は、知らない。



現物は見たことがある。


形。

硬さ。

匂い。


だが、製法は不明だ。


小麦粉と水?

塩は?

どれくらい乾かす?


失敗すれば、ただの硬い団子だ。

腐れば、意味がない。


九歳の俺が、いきなり作り始めれば、不審がられる。

肥料以上に、目立つ。


「……厄介だな」


前世の知識は、万能ではない。

断片的で、不完全だ。


だからこそ――慎重になる。



まずは、調べる。


書庫へ向かう。


農書。

料理書。

軍記。


「乾燥食」


「携行食」


「保存」


目に付く限り、読み漁る。


似たものは、ある。


乾燥パン。

干し肉。

穀物粥を乾かしたもの。


だが、あの形はない。


――まだ、一般的ではない。


つまり、先行できる。


だが、方法が分からない。



部屋に戻り、考える。


敵軍が持っていた。

軍用。


なら、目的は明確だ。


・軽い

・腐らない

・大量生産できる

・味は二の次


味は、後でいい。


まずは、保存性。


小麦を、どこまで水分を抜けばいい?

完全乾燥?

半乾燥?


……いや。


いきなり答えを出そうとするな。


前の人生と同じになる。


正しさを急ぐな。



俺は、台所を覗いた。


料理人が、生地をこねている。


「それ、何?」


「団子用です」


小麦粉と水。


単純だ。


「乾かしたら、どうなる?」


料理人は、首を傾げる。


「硬くなります」


「腐らない?」


「……分かりません」


それでいい。


分からないなら、試すしかない。



ただし――俺が前に出ない。


肥料の時と同じだ。


「遊び」に見える範囲で。


団子を、細く伸ばす。

日陰に干す。

風通しを良くする。


失敗しても、問題ない量。


誰にも、命令しない。


料理人が、興味を持てば、それでいい。



数日後。


干した生地は、石のように硬くなった。


折れる。

砕ける。


……これでは、食えない。


だが、腐ってはいない。


一歩だ。


「……まだだな」


夜、布団の中で考える。


敵軍は、どうしていた?


形が揃っていた。

工房があったはずだ。


だが、今は再現でいい。


完全な答えでなくていい。


「使えるかどうか」だ。



時間は、待ってくれない。


肥料の結果。

乾燥食の試行。


並行して進めなければならない。


前の人生では、俺は一つずつ潰そうとした。

結果、全部遅れた。


今回は、違う。


完璧を求めない。

失敗を、前提にする。


九歳の子供が、遊びで作ったもの。

それくらいの扱いでいい。


本当に価値があるなら、

周りが、勝手に拾い上げる。


俺は、ただ種を撒く。


土に。

そして、時間に。


処刑台へ向かう道を、

少しずつ、遠ざけながら。


まだ、形にはならない。


だが――確かに、次の戦いの準備は、始まっていた。

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