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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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行動する

さて、肥料の件をどうするか。


答えは、分かっている。

分かっているからこそ、難しい。


前の人生で学んだ知識は、この世界でも通じる。

それは、書庫で確認した。


だが――知っているだけでは意味がない。

言葉にした瞬間、それは「余計な知恵」になる。


九歳の子供が、土の配合を語り始める。

そんなもの、誰も信用しない。


なら、どうするか。


「……自分で、やるか」


独り言は、小さく呟く。


幸い、この領地には余力がある。

今すぐ飢えるほどではない。

失敗しても、誰も困らない規模で試すことはできる。


命令しない。

提案もしない。


ただ、やってみる。



場所は、領館の裏手。


使われていない小さな空き地があった。

畑と呼ぶには狭く、庭と呼ぶには荒れている。


ちょうどいい。


まずは、材料だ。


家畜小屋へ行く。


「臭いから、近づくなよ」


世話役に言われるが、首を振る。


「平気」


糞尿。

乾いたものを選ぶ。


次は、木工所。


大鋸屑を分けてもらう。


「何に使うんです?」


「土」


それだけ答えると、怪訝な顔をされた。


最後に、森の縁で枯葉を集める。


手は汚れる。

服も汚れる。


だが、不思議と嫌ではなかった。


前の人生では、こんなことをする時間はなかった。

常に書類と数字に追われていた。


――土は、数字では語れない。



空き地に、層を作る。


糞尿。

鋸屑。

枯葉。


それを、何度か繰り返す。


本に書いてあった通りだ。

だが、書いてあるだけで、実感はなかった。


匂い。

湿り気。

手応え。


触れて初めて、分かることがある。


「何してるんだ?」


声を掛けられ、振り向く。


農夫だった。


「……土作ってる」


「は?」


「育てる前の、土」


農夫は、しばらく黙って層を眺めていた。


「坊ちゃん、変わった遊びしますな」


笑われる。


それでいい。


「これ、畑にするの?」


「うん」


「何植える?」


「まだ、決めてない」


嘘ではない。


何を育てるかは、結果次第だ。



数日後。


変化が出始めた。


熱。

触ると、ほんのり温かい。


分解が進んでいる証拠だ。


匂いも、少しずつ変わる。


腐臭ではなく、土の匂い。


――来た。


胸の奥で、小さく息を吐く。


農夫が、また覗きに来た。


「……不思議な匂いですな」


「そう?」


「腐ってるだけじゃない」


それだけ言って、彼は去った。


押さない。

引かない。


気づくのを、待つ。



数週間後。


堆積は、しっかりと崩れていた。


俺は、農夫に頼んだ。


「少し、使ってみてくれない?」


「どこに?」


「余ってる畑で」


「失敗したら?」


「俺のせい」


農夫は、しばらく考えた後、肩をすくめた。


「坊ちゃんの遊びに付き合うのも、悪くない」


それで十分だった。



種を蒔く。


種類は、ありふれた野菜。


特別なものではない。


特別なのは、土だけだ。


日が経つ。


芽が出る。


それだけで、胸が少し軽くなる。


だが、まだだ。


俺は、成功を信じない。

前の人生で、信じすぎた。


結果は、最後まで見なければならない。



農夫が、言った。


「……伸びが、早い」


その声は、低かった。


別の農夫も、見に来る。


「水、変えた?」


「変えてない」


「肥料?」


「分からん」


誰も、俺を見ない。


それでいい。


噂が先に歩けばいい。



夜。


部屋で、手を洗いながら考える。


これは、始まりに過ぎない。


一つの畑。

一つの例。


だが、確かに言える。


俺は、言葉を使わずに、示せた。


前の人生では、逆だった。


説明し、説得し、押し通した。

結果、反発を生んだ。


今回は、違う。


土が、語る。


人は、それを見て、判断する。


処刑台へ向かう道は、

こうして一本ずつ、潰していく。


静かに。

確実に。


まだ、誰にも気づかれないまま。

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