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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。【発売日12/15!ネトコン14入賞】  作者: 稔


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再び森へ

手引き車の軋む音が、森の入り口で止まった。


「……留守か」


エドワルドは、狩人の家を見て小さく息を吐いた。

前回、森を案内してくれた人物だ。

できれば、今回も話を聞きたかった。


だが、いないものは仕方がない。


(だからと言って、帰る理由にはならない)


目的は、はっきりしている。


名もなき――

傷に塗ると効いた草。

煎じると痛みが和らいだ葉。

腹痛を抑えた根。


どれも、前の人生で「助けられた」ものだ。

だが、名前は知らない。

書庫にも、詳細な記録はない。


(自然に増えるのは分かっている)


だが、それだけだ。


種で増えるのか。

株分けなのか。

根を残せばいいのか。

刈り取ると枯れるのか。


そこまで分かる者は、ほとんどいないだろう。


(思い込みは、禁物だな)


エドワルドは、森へ足を踏み入れた。


◇


森の中は、静かだった。


鳥の声。

葉擦れの音。

土の匂い。


足元を見ながら、慎重に進む。


(まずは……これだ)


記憶を頼りに、視線を走らせる。


低い位置。

湿り気のある場所。

木陰。


「あった……」


小さな草。

葉を揉むと、かすかに青い匂いが立つ。


(間違いない)


刃物を使わず、周囲の土を崩す。

根を傷つけないよう、慎重に。


一本、丸ごとではない。

周囲の状態も確認する。


同じ草が、少し離れた場所にもある。

だが、密集していない。


(……勝手に広がるタイプじゃないな)


種か、根か。

まだ判断はできない。


数本だけ採り、根元の土も一緒に袋へ。


◇


次は、葉。


少し背が高く、風に揺れる。

乾いた場所より、半日陰。


葉脈がはっきりしている。


(煎じると、確かに効いた)


だが、量を間違えると苦かった。

強い植物だ。


こちらも、周囲を観察する。


根元から、複数の芽。

一つの株が、広がっているように見える。


(……株分けか?)


可能性は高い。


無闇に引き抜かず、外側だけを切り取る。

残りは、そのまま。


(全部持っていくのは、違う)


森は、実験場ではない。


◇


最後は、根。


これが一番、厄介だった。


地面に目印はない。

葉だけでは、判断しにくい。


だが、場所は覚えている。

少し傾斜があり、水が溜まりすぎない場所。


掘る。


……あった。


太くはないが、しっかりした根。


(これだ)


周囲を見ると、同じ葉が点々とある。


(種か……)


根を半分だけ採取し、残りは埋め戻す。


◇


一通り終え、手引き車を引きながら、エドワルドは森を見回した。


同じ植物でも、場所が違う。


湿った土。

乾いた斜面。

木陰。

日向。


(環境が、違う)


それが、答えだ。


「育てるなら……再現するしかない」


土。

水。

日当たり。


畑の真ん中では、駄目だろう。


(森の縁、か)


使われていない土地。

人の手は入るが、自然も残る場所。


そこなら――


◇


帰り道。


狩人の家を、もう一度見た。


まだ、戻っていない。


「……次は、ちゃんと話そう」


礼も、まだだ。


今回の採取は、あくまで第一歩。

育つかどうかは、これから分かる。


だが、ベリーと同じだ。


森にあるものを、

人の手が届く場所へ。


(薬草も……同じだ)


飢えないだけでは、足りない。

痛みを和らげ、命を繋ぐ。


それもまた、領地を守る力だ。


手引き車の中で、葉が揺れた。


エドワルドは、前を見据える。


急がない。

だが、止まらない。


森で得たものは、

やがて――静かに、領地へ根付いていくはずだった。

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