次の手
さて。
資金は、手に入った。
思いがけなく、話が早く進んだ感は否めないが――問題は、次だ。
自由に使える金。
商人と直接話せる権限。
(……で、何をする?)
エドワルドは、厩舎の脇に立ち、家畜たちを眺めていた。
牛。
鶏。
そしてこの領地いない豚。
(やっぱり、こいつだな)
豚は、増える。
一度に産む数が多い。
成長も早い。
何より、餌の融通が利く。
残飯。
加工の副産物。
人が食べない部分。
雑食という特性は、この領地に向いている。
(増やすなら、今だ)
数が少ないうちは、管理も目が届く。
病気も、性格も、癖も――把握しやすい。
増えてから手を打つより、最初から“仕組み”を考えておくべきだ。
(豚は……商人と相談だな)
価格。
頭数は、慎重に決める必要がある。
無闇に増やして、餌や場所で詰まっては意味がない。
「……それと」
ふと、別の家畜の姿が頭に浮かぶ。
セキシャク鳥。
前回、導入した鳥だ。
卵も肉も取れる、扱いやすい家禽。
だが――
(雄同士、相性悪かったな)
実際に見て、思った。
縄張り意識が、想像以上に強い。
(増えてから対策するのは、遅い)
今のうちなら、細かく手が入る。
隔離。
配置。
群れの作り方。
問題が小さい段階で、最適解を探すべきだ。
「……もう一度、買うか」
前回と同じ羽数。
条件も同じ。
意図的に、雄を混ぜる。
衝突を見る。
抑えられるのか、無理なのか。
(実験、だな)
家畜は、感情で増やすものじゃない。
だが、数字だけでも回らない。
性質を知ることは、立派な管理だ。
(豚と、セキシャク鳥)
派手さは、ない。
だが、確実に積み上がる。
酒で出来た“余剰”を、次の循環へ。
「よし……」
エドワルドは、軽く息を吐いた。
「商人に、会いに行くか」
相談すべきことは、決まった。
聞くべきことも、揃っている。
次の手は、もう見えている。
後は――どう打つか、だ。




