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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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芋酒

商人に、あの酒を飲ませた結果――評価は、想像以上だったらしい。


「かなり、いい反応だったぞ」


そう報告してきたのは、父だった。


じゃじゃ芋酒。

荒く、癖が強く、ワインとはまるで違う酒。


だが、商人は顔色一つ変えず杯を空け、しばらく黙った後で、こう言ったという。


「……これは、売れる」


その場で、五キロ分。

現物での買取が成立した。


値は、決して安くない。

むしろ、初物としては破格だったらしい。


「今後、この地で量産する話も、出ている」


父は、淡々とそう続けた。


量産。

つまり――継続的な生産。


エドワルドは、胸の内で小さく頷いた。


(新しい産業、か)


本来の目的は、違った。


小さい芋。

傷がついた芋。

保存に向かないもの。


それらを、無駄にしないための手段だった。


食べられないものを、酒に変える。

それだけのつもりだった。


だが、結果は――想像以上だった。



「それとだ」


父は、一枚の書付を差し出した。


「今回の売り上げの一部を、お前の予算として渡す」


「……俺に、ですか?」


「正式に、だ」


書付には、金額が記されている。

子供が自由に扱うには、明らかに大きい。


「条件は一つ」


父は、視線を向ける。


「新しいものに使え」


「報告は?」


「予算内なら、事後でいい」


一瞬、耳を疑った。


「領主の了解は、不要だ」


「……商人とのやり取りは?」


「直接、話して構わん」


父は、少しだけ口角を上げた。


「その辺りは、私が話をつけておいた」


つまり――


「自由に、使っていい」


その言葉が、はっきりと胸に落ちる。


(……これは)


正直、嬉しい。


いや、それ以上に――重い。


「ただし」


父は、すぐに釘を刺す。


「農具や設備の類は、こちらの管轄だ」


「分かりました」


「お前が手を出すな」


「はい」


それは、領主としての線引きだ。

権限の所在を、曖昧にしないための。


(……なるほど)


父は、試している。


どこまで考え、どこまで動くか。


「この意味、分かるな?」


「……はい」


エドワルドは、静かに答えた。


「“探してみろ”という事ですね」


「そうだ」


父は、短く頷いた。


「この金は、結果を出した者への褒美でもあり――次を見るための、投資でもある」


エドワルドは、書付を見つめた。


(自由に使える……)


好き勝手に、ではない。

責任付きの自由だ。


だが。


(悪くない)


これなら、出来ることが増える。

書庫だけでは届かない所へ、手を伸ばせる。


新しい作物。

加工。

保存。

流通。


(……次は、何だ?)


胸の奥が、わずかに熱を帯びる。


「分かりました」


エドワルドは、深く頭を下げた。


「無駄には、しません」


父は、それ以上何も言わなかった。



執務室を出ると、風が心地よかった。


自由な予算。

商人との直接交渉。


子供としては、破格の扱いだ。


(ラッキー……ではないな)


これは、期待だ。


期待されている。

“次”を。


「さて……」


エドワルドは、空を見上げる。


「何を、見つけに行こうか」


小さな成果を、積み重ねてきた。

その延長線に、まだ見ぬ選択肢がある。


派手さはいらない。

だが、意味のあるものを。


エドワルドは、ゆっくりと歩き出した。


次の一手を、探すために。

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