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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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日々の中で思わぬ発見

朝は、決まって同じところから始まる。


セキシャク鳥の囲いに向かい、水を替え、餌を足す。

一羽一羽の様子を見て、怪我がないか、動きがおかしくないかを確かめる。


(……よし、今日も元気だな)


次は掃除。

集めた糞は、そのまま捨てない。乾かし、混ぜ、発酵させ、肥料にする。


(量も、質も、悪くない)


それが終われば、各畑の見回りだ。

硬豆、じゃじゃ芋、小麦。

芽の色、葉の張り、土の湿り具合。


途中で農家に声をかけられれば立ち止まり、話を聞く。

要望、愚痴、小さな違和感。

それらを頭の中で整理しながら、合間に書面にも目を通す。


夕方前に、もう一度セキシャク鳥の世話。


――それが、今のエドワルドの日常だった。


(……忙しいけど、悪くない)


誰かに言われたわけでもない。

だが、体が自然に動く。



一通り終えた後、エドワルドは書庫へ向かった。


(他に、何か出来ることは……)


そう思うのが、もはや癖になっている。


だが、その前に――


(……そうだ)


脳裏に、思い出すものがあった。


「じゃじゃ芋の酒」


試しに仕込んだものだ。

量は少ないが、発酵は順調だったはず。


(そろそろ、頃合いだよな……)


書庫の奥、ワイン造りに使われている部屋。

そこに、問題の壺は置いてある。


蓋を開けた瞬間、鼻を突く匂い。


「……お?」


明らかに、アルコール臭。

中では、小さな泡がぷつぷつと立っている。


(発酵してる……成功?)


少しだけ、柄杓ですくう。


「……一口だけだ。一口」


自分に言い訳しながら、口に含んだ。


――次の瞬間。


「ブフォーーッ!!」


思わず、噴き出した。


「な、なんだこれ……!」


喉を焼くような刺激。

強烈な酸味と苦味。

ワインとは、似ても似つかない。


「確かに酒……っぽいけど……」


顔をしかめ、咳き込む。


「……不味い。これは、不味い……」


失敗か?

腐ったわけではなさそうだが……。


その時だった。


「坊ちゃん!何をしてるんですか、こんな所で!」


振り返ると、そこにいたのは――

領内でワイン造りをしている農家の一人だった。


「あ……」


少し、気まずい。


「いや、その……酒を作ってみたんだが……」


「酒?」


男は、興味深そうに壺を覗き込む。


「……何か、別の物が出来てしまって」


「別の物、ですか?」


エドワルドは、黙って柄杓を差し出した。


「これです」


男は、匂いを嗅ぎ――

にやりと笑った。


「ほぉ〜……アルコールの匂いは、確かにしますな」


「え?大丈夫ですか?」


「どれどれ」


ためらいなく、口に含む。


エドワルドは、固唾を飲んで見守った。


「……」


男は、少しだけ目を細め、


「ほぉ〜!」


声を上げた。


「これは……」


「……失敗、ですよね?」


恐る恐る聞く。


だが男は、首を振った。


「癖は、強い」


「ですよね……」


「だが、力強い!」


思いのほか、声が弾んでいる。


「ワインとは、全く違う味わいですな!」


「……え?」


エドワルドは、思わず聞き返した。


「美味しい、んですか?」


「ははは!」


男は、豪快に笑った。


「坊ちゃんには、まだ早い味ですなぁ」


「……あ」


その一言で、腑に落ちた。


(そうか……)


酒が失敗したわけじゃない。

単に――


(俺の体が、子供なだけか)


前の人生の感覚で考えていたが、今は十歳。

この刺激を「美味い」と感じるには、早すぎる。


「なるほど……」


「坊ちゃん、これは立派な酒ですよ」


男は、壺を叩く。


「じゃじゃ芋から、こんな物が出来るとは……」


「……本当に?」


「ええ。好みは分かれますがな」


「でも、酒としては……」


「十分以上です」


男は、急に真剣な顔になった。


「これは、早く領主様に知らせるべきです」


「父上に?」


「ええ!」


男は、力強く頷く。


「一緒に行きましょう!」


「ちょ、ちょっと待って下さい!」


エドワルドは、慌てた。


(まだ、整理もしてないのに……!)


だが、男はもう歩き出している。


「これは面白いぞ……」


その背中を見ながら、エドワルドは小さく息を吐いた。


(……研究、って言われてたな)


失敗だと思ったものが、別の価値を持つこともある。


今日もまた、積み上げた日常の中から――

予想外の芽が、顔を出したのだった。

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