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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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先手の影

「それでは俺も一度戻るか」


エドワルドがそう言いかけた時だった。


「いえ」


グレゴールが静かに首を振る。


「お兄様より、こちらを預かっております」


差し出された文。

嫌な予感しかしない。


「……読むぞ」


封を切り、中を確認する。


一瞬、沈黙。そして。


「……は?」


思わず声が漏れた。


「馬鹿弟へ。お前はそっちをしっかりやれ。こっちは気にするな。俺様に任せとけ!」


「詳細はグレゴールに話してあるし、父上にも伝えてある!」


エドワルドは文を閉じた。

そしてもう一度開いた。


「……いや、意味が分からん」


レオンが横から覗き込む。


「随分と……豪快な内容ですな」


「豪快で済むか」


エドワルドは額を押さえた。


「兄上らしいと言えばそうだが……」


「詳細って何だ」


視線をグレゴールへ向ける。


「説明しろ」


「はい」


グレゴールは淡々と答えた。


「敵国へ商隊を組んで潜入し、内部で工作を行うとの事です」


「……は?」


一拍。


「は?」


もう一度、同じ言葉が出た。


「既に潜入している可能性が高いかと」


「は??」


エドワルドは完全に固まった。


「……ちょっと待て!何を言っている?」


「敵国だぞ?潜入?しかも——」


目を見開く。


「領主の息子が?」


「はい」


グレゴールは表情を変えずに頷く。


「……何を考えているんだあの人は」


エドワルドは頭を抱えた。


「いや、考えてはいるのか。考えた結果がこれか?」


レオンが苦笑する。


「思い切りましたな」


「思い切りすぎだ」


即答だった。


「捕まればどうなると思っている。処刑どころの話じゃないぞ。間違いなく情報を抜かれる」


「いや、その前に殺される可能性の方が高いか……」


ぶつぶつと呟く。

グレゴールが静かに続けた。


「目的は三つ」


「一つ。敵国の備蓄状況の詳細把握」


「二つ。流通の混乱工作」


「三つ。侵攻準備の遅延」


エドワルドは顔を上げた。


「……破壊工作か」


「はい」


「商人として入り込み、価格操作や物資の流れを歪めるとの事です。それにより、備蓄を乱し、侵攻時期を遅らせる」


「……」


理屈は分かる。

むしろ、かなり理にかなっている。

だが。


「やる人間が間違ってるだろうが……」


エドワルドは低く呟いた。

レオンが肩をすくめる。


「ですが成功すれば。敵の準備は大きく狂いますな」


「ああ」


エドワルドは頷く。


「こちらの防備時間も増える。最悪、侵攻そのものを鈍らせる事も出来る」


だが同時に。


「リスクが高すぎる」


グレゴールが静かに言う。


「お父上様も同じ事を申されておりました」


「だろうな」


エドワルドは苦笑した。


「で?父上は何と?」


グレゴールは少しだけ視線を逸らした。


「……文を読まれた後。目頭を押さえて、天井を見上げておられました」


「……ああ」


想像できた。


「それで?」


「私にこう聞かれました」


グレゴールは少し間を置く。


「“私は育て方を間違えたのか?”と」


一瞬。

沈黙。


そして——レオンが吹き出した。


「ははは……!」


「笑うな」


エドワルドは即座に制した。

だが、自分も少し口元が緩む。


「……いや、まあ気持ちは分かる」


深く息を吐く。


「本当に分かる」


そして顔を上げた。


「だが——」


目が変わる。


「もう動いているなら止められないな」


「はい」


グレゴールも頷く。


「既に潜入していると見て間違いないかと」


エドワルドは机に手を置いたまま、しばらく動かなかった。


視線は書状に落ちたまま。


「……やってくれる」


ぽつりと呟く。


呆れか。

感心か。

その両方だった。


「兄上は昔からそうだ。思いついたら、やる。しかも一番面倒な所に、自分で突っ込む」


レオンが肩をすくめる。


「止めても無駄でしょうな」


「ああ」


即答だった。


「止まるなら最初からやっていない」


エドワルドはゆっくりと顔を上げる。

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