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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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積み重ねの先に

少しずつだが、確かに結果は付いてきている。

数字はまだ小さい。だが、嘘はついていない。


肥料を使った畑は、他より明らかに育ちが良い。

乾燥パスタは、失敗の山を越えて「食糧」として数えられる量になった。

じゃじゃ芋は、試作から作付けへ――ほんの一部だが、領内に根を下ろし始めている。


(これで……変わるはずだ)


エドワルドは、そう思いながら畑を眺めていた。


一度に大きく変えようとすれば、必ず歪みが出る。

前の人生で、それは嫌というほど学んだ。


だから今は、小さな結果を積み重ねる。

誰かが「失敗だった」と切り捨てられない程度に。

誰かが「偶然だ」と言い張れない程度に。


小麦の増産。

乾燥パスタの安定生産。

じゃじゃ芋の定着。


どれも、まだ「切り札」ではない。

だが、切り札に育てるための土台にはなる。


(時間は、まだある)


そう思えたこと自体が、以前とは違っていた。



その日の夕方。


屋敷は、いつもより少しだけ慌ただしかった。


豪華な飾り付けはない。

招待客もいない。

使用人たちも、いつも通りの仕事をしている。


だが、厨房だけは、わずかに違った。


「坊ちゃま、こちらを」


差し出されたのは、小さな焼き菓子だった。

小麦粉と、蜂蜜と、ほんの少しの果実。


「……ありがとうございます」


「今日は、10歳のお誕生日ですから」


料理人は、そう言って穏やかに笑った。


(そうか)


エドワルドは、一瞬だけ立ち止まる。


10歳。

前の人生では、何も知らず、何も考えず、ただ守られていた年齢だ。


今は違う。


だが――


(それでも、10歳なんだな)


そう思うと、少しだけ肩の力が抜けた。



夕食の席は、家族だけだった。


父と、兄と、そして自分。


派手な乾杯はない。

だが、父はエドワルドを見て、短く言った。


「10歳だな」


「はい」


「最近、よく動いていると聞いている」


褒めるでも、責めるでもない声音。


「結果も、出始めている」


兄が、横で軽く頷いた。


「無理はしていません」


エドワルドは、そう答えた。


「積み重ねているだけです」


父は、しばらく黙ってから言った。


「それが、一番難しい」


その言葉に、えどあは驚いて顔を上げる。


「焦らず、だが止まらず。それができる者は、そう多くない」


父は杯を持ち上げた。


「誕生日の祝いだ!派手なものはないが……」


一瞬、言葉を探し、


「よくやっている」


そう言った。


胸の奥が、じんわりと熱くなる。


「ありがとうございます」


それだけで、十分だった。



夜。


部屋に戻り、エドワルドは小さく息を吐いた。


10歳の誕生日。

何かが劇的に変わるわけではない。


だが――


肥料は土に残り、作物は畑に根を張り、考え方は、人の中に静かに広がっている。


(間に合え)


声に出さず、そう願う。


次の豊作まで。

次の凶作まで。

そして――まだ見えない未来まで。


小さな結果を、積み重ね続ければ。


この領地の運命は、きっと。


10歳の少年は、静かに灯りを落とした。


その背中は、まだ小さい。

だが、進んでいる道だけは、もう戻らなかった。

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