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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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利用と代償

夜。砦の一室。

レオンが壁にもたれ、腕を組んでいた。


「……上手く行った様ですな?」


エドワルドは静かに頷く。


「ああ」


机の上には、例の男からもたらされた報告書。


「向こうに流させた」


「何を?」


「俺が敵将に一騎打ちを望んでいる、と」


レオンが吹き出す。


「ふふふ。本気で一騎打ちを?」


「いや」


エドワルドは肩をすくめた。


「兄上が“大穴を掘れ”と指示していたよ」


レオンの口元が歪む。


「相変わらず性格が悪い兄弟だ」


「まあな」


二人の視線が交わる。だが笑いは、長く続かなかった。


罠の成功


翌日、敵将側から返答があった。


“日没。平地にて一騎打ちを受ける”


黒鎧は乗った。自信か、侮りか。

指定の平地。

中央に、何も無いように見える草地。


その下には、兄クラウス特製の落とし穴。


深さ三間。底には逆茂木。


日没。


敵将が重装騎兵で現れる。


堂々とその馬が——


ズブリ、と沈んだ。


地面が崩れる。落下。馬の悲鳴。


黒鎧が地面に叩きつけられる。

周囲の兵が騒然。


伏せていたクロスボウ隊が一斉射。


敵将護衛は数名倒れる。

混乱。


そして——撤退。


黒鎧は重傷を負いながらも救出された。

だが威信は大きく削がれた。


砦に戻ったレオンが笑う。


「見事ですな」


「兄上に礼を言わないとな」


「敵は怒り狂っておりますぞ」


「それでいい」


怒らせれば判断を誤る。


だが——異変、三日後。

例の男が、再び報告に来た。


「敵が兵を再編しています」


「どの程度だ」


「二千は……」


レオンが眉をひそめる。


「増えているな」


男は汗をかいている。

様子が妙だった。

エドワルドは静かに観察する。


呼吸。視線。間。


「……他には?」


「い、いえ」


一瞬の間、レオンが背後に回る。


「震えてますな」


男の目が泳ぐ。


「……敵将は生きているか?」


「は、はい」


「誰が治療している?」


沈黙。


「答えろ」


「……分かりません」


嘘だ。エドワルドは確信した。


「レオン」


「は」


レオンが男の襟を掴む。

中から、もう一枚の羊皮紙が落ちた。


そこには、砦裏手の抜け道。


そして。


“夜半、火を放て”


再発、男は崩れ落ちた。


「違う! 違うんです!」


「家族か?」


男は泣きながら叫ぶ。


「敵は家族を殺したと……!

もう守る意味が無いと……!」


静寂。


「だから」


エドワルドの声は冷たい。


「今度は復讐か」


「違う……私は……」


「二度目は無いと言った」


男の顔が凍る。


「お前はもう、誰も守れない」


レオンが剣を抜く。

だがエドワルドは手を上げた。


「俺がやる」


男が這いずる。


「ま、待って——」


エドワルドの剣が閃いた。


一閃。


静かに首が落ちる。

血が地面に染みる。

誰も声を出さない。


その後、レオンが口を開く。


「……惜しい駒でしたな」


「ああ」


エドワルドは血を払う。


「だが腐った駒は盤面を壊す」


夜風が冷たい。


「利用は出来る」


エドワルドは呟く。


「だが信頼は出来ない」


レオンが小さく笑う。


「段々と貴族らしくなってきましたな」


エドワルドは答えない。

闇が、少しだけ深くなった。

だが砦は守られた。

内側の火種は、消された。

——今のところは。

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