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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。【発売日12/15!ネトコン14入賞】  作者: 稔


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権力側がそれを認識する

異変に、最初に気づいたのは数字ではなかった。


人の動きだった。


「最近……畑が静かだな」


そう呟いたのは、領内を巡回していた代官だった。


例年この時期は、小さな不満が必ず上がる。

肥料が足りない。

種が悪い。

今年は先が見えない。


だが今年は、それがない。


報告書は、平坦だった。


「不満、特になし」

「要望、特になし」


それ自体が、違和感だった。


◇


代官は、倉の番人を呼び出した。


「今年の出入りはどうだ」


「はい。特に変わりは……」


番人は言いかけて、言葉を止めた。


「いや、正確には――」


「慌てて出す者が減りました」


「減った?」


「ええ。去年までは、少し貯めるとすぐ売る農家が多かったのですが」


「今年は、様子を見る者が多いです」


代官は、眉をひそめた。


売らない。

慌てない。

溜め込んでいるわけでもない。


「理由は?」


「……理由を聞くと、皆、似たようなことを言います」


◇


畑を回った。


農家たちは、以前よりも落ち着いていた。


「今年はどうだ」


「ええ、悪くありません」


「作柄は?」


「まあ……去年よりは」


誰も、声を荒げない。

誰も、悲観しない。


代官は、気づく。


彼らは、「今年」だけを見ていない。


「先を考えている」


それは、領内では珍しい空気だった。


◇


話の端々に、同じ名前が出てくる。


「坊ちゃまがな」


「エドワルド様が、言ってたんだが」


「直接言われたわけじゃないがよ」


命令はない。

指示もない。


だが、


「こうしたらどうなるか」


「これを使うと、どう違うか」


そういう“考え方”だけが、伝わっている。


「……厄介だな」


代官は、独り言ちた。


抑え込めない。

違反でもない。

むしろ、成果は出ている。


◇


評議の席で、話題に上がった。


「最近、農家が落ち着いているようです」


伯爵は、書類から目を上げた。


「問題は?」


「ありません。それが、問題です」


一瞬の沈黙。


「坊ちゃまの影響だろう、と」


誰かが口にする。


伯爵は、すぐには否定しなかった。


「数字は?」


「急な増減はなし」


「ただし、倉の残量は安定しています」


伯爵は、ゆっくりと息を吐いた。


「……前に出ていないな」


誰もが、その言葉の意味を理解した。


前に出ない。

命じない。

だが、結果だけは残る。


◇


結論は、穏やかなものだった。


「様子を見る」


「止める理由はない」


「だが、見逃すな」


領内の権力側は、エドワルドという少年を、“子供”から、“無視できない存在”へと、

静かに認識を改めた。


まだ、評価でも警戒でもない。


だが――

確かに、目は向けられ始めていた。


そして当の本人は、そのことを知らないまま、今日も畑で土を触っている。


それで十分だと、まだ、この領地は思っていた。

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― 新着の感想 ―
継嗣問題について厄介と言ってるのかな おにいやんを蹴落とすのではないかと
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