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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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19/62

農家側からの反応が増え始める

変化は、声にならないところから始まった。


畑の端で、農家同士が集まって話している。

以前からあった光景だが、話題が少し違う。


「最近、土が扱いやすい」


「鋤の入りが、前よりいい気がする」


「一日終わっても、腰がまだ動く」


誰かが声高に主張するわけではない。

だが、同じ言葉が、別々の口から何度も出てくる。


エドワルドは、少し離れた場所でそれを聞いていた。


(数字じゃないな……でも、確実だ)


畑仕事は、感覚の積み重ねだ。

毎日触るからこそ、僅かな違いに気づく。


「坊ちゃま」


年配の農家が、声をかけてきた。


「何かありましたか?」


「いえ……その鋤の形ですが」


やはり、そこだった。


「鍛冶屋に持っていけば、同じ形にしてもらえると聞きまして」


「はい。修理のついでなら」


「新しく作り直すより、安いですね」


それだけ言って、農家は畑に戻っていった。


無理に広める必要はない。

聞かれたら答える。

それだけでいい。



別の日。


今度は、別の話題が出てきた。


「この畑、去年より育ちがいい気がする」


「肥料の量、変えたか?」


「いや、同じだが……」


肥料の効果は、すぐには出ない。

だが、数値としては出始めている。


葉の色。

背の揃い方。

枯れる株の数。


「今年は、無駄が少ないな」


それは、期待ではなく実感だった。



エドワルドは、帳面を手に畑を回る。


収量の見込み。

畝ごとの差。

肥料の量。


農家の一人が、不思議そうに尋ねた。


「坊ちゃま、そんな細かく見て意味があるんですか?」


「あります」


即答だった。


「来年、同じ事をするために」


農家は、しばらく考え込み――


「なるほどな」


と、短く答えた。


否定ではない。

理解だ。



数日後。


鍛冶場に、列ができていた。


鋤。

鍬。

刃の欠けた道具。


「直すなら、あの形で」


誰かが言い出し、

それが当たり前になり始めている。


鍛冶師は、何も言わない。

だが、作業の手は止まらなかった。



じゃじゃ芋の畑も、順調だった。


葉は青く、茎は太い。

まだ掘るには早いが、期待は持てる。


近くで見ていた農家が、ぽつりと呟く。


「……これ、他の畑でもやれますかね」


その言葉に、周囲が静かになる。


エドワルドは、すぐには答えなかった。


「収穫を見てからにしましょう」


「ですよね」


焦りはない。

だが、関心は確実に芽生えている。



夕方。


畑を離れる時、エドワルドは振り返った。


誰かが命じたわけでもない。

規則を変えたわけでもない。


それでも――

農家たちは、自分から動き始めている。


(ようやく、だ)


押し付ければ、反発される。

早すぎれば、潰される。


だが、結果が先にあれば――

人は、自分で納得する。


エドワルドは、帳面を閉じた。


まだ、大きな成果は出ていない。

だが、土の中では、確実に根が張り始めている。


それでいい。


この領地は、

静かに、しかし確実に変わり始めていた。

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