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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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受け止め続ける領地

あれから、数日。

特別な出来事は——無い。


だが。


「……今日も、来たか」


朝一番の報告書を見て、エドワルドは小さく呟いた。


「本日の流入、八十三名。内、自力歩行可能が六十七。馬車搬送が十六です」


グレゴールが淡々と読み上げる。


昨日は七十。一昨日は九十。


微妙に上下しながら——

確実に、増えている。


「救助便とは別だな?」


「はい。噂を聞きつけ、自力で辿り着いた者達です」


つまり。


「……まだ歩ける連中が、先に来ているだけか」


「恐らく」


グレゴールは頷いた。


「本当に厳しい地域は、まだ後ろに控えているでしょう」


エドワルドは窓の外を見る。

南町。

煙が上がり、槌音が響き、人が動く。

止まっていない。


「吸収は?」


「まだ余裕があります」


「食料は」


「今月分は確保済み。蕪の畑も順調です。黒麦の備蓄も削っていません」


「医療は」


「回っています」


一つずつ確認する。

崩れていない。詰まっていない。

流れは——保たれている。


「……よし」


胸の奥の緊張が、少しだけ解ける。

以前なら。

二十人増えただけで慌てていた。


今は違う。


八十人来ても、百人来ても、

すぐに割り振り先が決まる。


三箇所の村へ。領都へ。南町へ。

水路のように、人が流れていく。


「形になってきましたな」


グレゴールが静かに言った。


「ああ」


「最初はどうなる事かと……」


「俺もだ」


正直な本音だった。場当たり的に始めた保護。越権と分かって踏み込んだ救護。


だが今は違う。


「……もう“非常対応”じゃないな」


「ええ」


グレゴールは帳簿を閉じる。


「これはもう、“運営”です」


運営。その言葉が、妙にしっくりきた。

戦場でもなく、奇跡でもない。


ただ毎日、受け入れて、割り振って、食わせて、働いてもらう。


地味で、泥臭い。


だが——

一番強い形だ。


昼過ぎ。


南町の入口。

ふらふらと歩いてくる一団が見えた。


老人を背負った若者。

子供の手を引く母親。

荷物は、布袋ひとつだけ。


警備兵が声を掛ける。


「保護を求めるか?」


全員が、迷わず頷いた。


「……お願いします」


それだけ。余計な言葉は無い。

取り入ろうともしない。嘘もつかない。

ただ、生きたいだけ。


「……通せ」


エドワルドが言う。自然と、門が開く。

それを見て、若者が呟いた。


「本当に……入れてくれるんだな……」


疑っていたのだろう。当然だ。

このご時世だ。


「勘違いするな」


エドワルドは言った。


「助けるが、働いてもらうぞ」


「……はい!」


力強い返事。それで十分だった。



夕暮れ。


増えた名前が帳簿に書き込まれていく。

一人、また一人。紙の上の数字。


だが、その裏には——

確かに人生がある。


「……後、どれだけ来る」


誰にともなく呟く。答えは無い。


百か。千か。それとも——もっとか。

分からない。


だが。


「来るなら、受け止めるだけだ」


それだけは、決めている。

線は、もう越えた。


今さら引き返す気も無い。

窓の外。南町の灯りが、また一つ増えた。


「……まだいけるな」


小さく笑い、次の報告書を手に取る。

今日も。

明日も。


この領地は——黙って人を受け止め続ける。

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