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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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噂の行き着く先

処断から、数日。

不思議な事が起きていた。


「……妙ですね」


朝の報告を読みながら、グレゴールが首を傾げる。


「何がだ?」


「三箇所の村ですが……」


帳簿を差し出してくる。


「揉め事が、ほぼゼロです」


「……ゼロ?」


「はい。盗難、物資の誤魔化し、身分の食い違い——以前は日に数件ありましたが、ここ数日はまったく」


エドワルドは静かに紙を見る。

確かに、空白だらけだった。

妙に綺麗すぎる報告書。


「隠している訳ではないな?」


「警備隊にも確認済みです。本当に“無い”と」


つまり——


「……来なくなったか」


「はい。恐らく」


二人の間で、同じ結論に辿り着く。


あの日以降。


妙に身なりの良い者。口の回る者。

立場を探る視線。


そういう連中が、ぱたりと消えた。


代わりに増えたのは——


「本日、新規流入四十八名。家族単位が三組、農民が大半です」


「……まともだな」


「ええ。最初から“働き口をください”と頭を下げて来る者ばかりで」


利用しようとする者が減り、

生きようとする者が増えた。


それだけの違い。

だが、その差は大きかった。



南町。


新しい長屋の建築音が響いている。


トントン、と木槌の音。

石を割る音。

土を均す音。


以前より、空気が違った。


「おーい! そっち材木回せ!」


「釘足りねぇぞ!」


「こっちは終わった! 手伝うぞ!」


声が飛び交う。


活気。


——生きている音だ。


エドワルドが歩いていると、道端で一組の家族が座り込んでいた。


母親と、幼い子供二人。

服は擦り切れ、足は泥だらけ。

相当歩いてきたのだろう。


「……ここが、噂の保護してくれる領ですか……?」


母親が、か細い声で尋ねる。


「ああ、そうだ」


その瞬間。

彼女は、崩れるように地面に座り込んだ。


「よかった……」


それだけ言って、泣き出した。


「……もう、逃げなくていいんですよね……?」


胸の奥が、少しだけ締め付けられる。


「ああ。嘘をつかず、働く気があるならな」


「はい……! はい……!」


何度も頷く。最初から、条件を理解している。駆け引きも、取り入りも無い。


ただ、生きたいだけ。それでいい。


「グレゴール、南町の空きは?」


「まだ余裕があります」


「長屋の三区画を回せ。食事も出せ」


「了解」


母親は、何度も頭を下げ続けていた。

その姿を見て、周囲の職人が自然と声を掛ける。


「ほら、あっちだ」


「水飲め」


「子供、寒いだろ。こっち来い」


誰も命令していない。勝手に動いている。

助けられた側が、今度は助ける側になる。

流れが、出来始めていた。



夕方。


レオンが報告に来た。


「最近、妙な連中が本当に来ません」


「ああ」


「代わりに……まともな民ばかりです」


レオンは、少し笑った。


「噂が広がっているようです」


「噂?」


「“あそこは本物だけを受け入れる領地だ”と」


エドワルドは小さく息を吐く。

随分な言われようだ。


だが——悪くない。


「恐れられてるのか、信頼されてるのか、分からんな」


「両方でしょう」


レオンは即答した。


「ですが団員は皆、言っています」


「何をだ?」


「“ここなら守れる”と」


守れる。その言葉が、胸に残る。

救っているつもりだった。


だが実際は——


この領地そのものが、人を守る“場所”になり始めている。


エドワルド一人ではない。

皆で回り始めている。


「……ようやく、形になってきたか」


遠くで、子供の笑い声が響く。

処断の血は消えていない。

線も、越えたままだ。


それでも。あの決断の先に、この光景があるのなら。


「悪くないな」


小さく呟き、南町の灯りを見つめた。

噂は、静かに広がっている。

絶望の隣領から。


——希望のある場所へと。

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― 新着の感想 ―
ここまで善良な難民ばかりで本当にいい でも、お年寄りや病人や孤児とか即戦力にならない人達を切り捨てないなら負担は増えるよなぁ その負担を背負う元からいた住民に不満も溜まるし 腐敗した職場に見切りをつ…
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