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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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夜明けを待たずに

次の日のエドワルドは、朝早くから動き出していた。


——いや、正確には。


ほとんど眠れなかった。


横になっても瞼の裏に浮かぶのは、あのオレンジ色の空。

ならばせめて、早く夜が明けてくれと。

そう思いながら、薄明かりの中で身支度を整えた。


最初に向かったのは、南町だった。


「建築の進捗はどうなっている?」


滞在している文官に声を掛ける。

帳面を開いた彼は、即座に答えた。


「現状、想定より順調です。空き家もまだ多く、余力は——」


「……足りない」


遮るように言った。


「更に、速度を上げろ」


「え?」


文官は思わず顔を上げた。


「ですが……まだ空き家の方が多いかと。急ぐ理由が……」


その困惑は当然だ。

数字の上では、確かに余裕がある。


だからこそ、エドワルドは歩みを止めず、状況を一つ一つ説明した。


昨夜見た空。

王都方面の火災。

暴動の拡大。

連絡断絶。

そして——


「流れが、変わる」


静かに、だが断定的に言った。


「これまでの“点”の救助じゃない。

線になり、面になる」


文官の顔色が、みるみる青くなる。


「……そこまで来ていますか」


「来ている。いや、もう来ている」


しばらく考え込んだ文官が、やがて口を開いた。


「……それなら、一つ案があります」


「言ってくれ」


「王都の建築方式です」


「王都?」


「土地が狭いため、横長の集合建築が多いのです」


文官は、指で簡単な図を描いた。


「壁を共有し、部屋を横に繋げる。

隣の壁は一枚で二部屋分。

台所と便所は共同で一箇所にまとめます」


なるほど。


「個々の快適さは落ちますが、短期間で大量収容が可能です」


エドワルドは、即座に判断した。


「それを採用する」


「よろしいのですか?」


「今は“住めるか”が全てだ。“快適か”は後でいい」


迷いは無かった。


「設計を簡略化しろ。資材も共通化する。

手が空いている職人は、全て建築に回す」


「……了解しました」


文官は深く頷いた。


南町の空気が、少しだけ変わる。

穏やかな開拓地から——

受け入れの拠点へ。


エドワルドは、まだ低い太陽を見上げた。


「……夜明けを待っている暇はないな」


動くべき時は、もう来ていた。


南町の建築現場では、思わぬ追い風もあった。


「……そう言えば」


と、年嵩の職人が口を開いた。


「俺もだが、あいつもだ。保護民の中に、王都で建築に携わっていた者が何人か居る」


その言葉に、周囲の職人達が一斉に振り向く。


「王都、ですか?」


「ああ。土地が狭くてな。縦にも横にも詰める建て方ばかりやってきた」


先程文官が説明した“横長の建物”。

その話を聞いた王都経験者の職人達は、顔を見合わせ——


「成る程な」


「確かに、それなら早い」


と、次々に頷いた。


「だったら、こうだ」


床に枝で線を引きながら説明が始まる。


「片側に五部屋。反対側にも五部屋。

背中合わせで一棟にする」


「中央に通路。壁は共通。屋根も一枚で済むな」


「台所と便所は端にまとめれば、配管も減らせる」


次々と意見が出て、形が固まっていく。


——結果。


五部屋×二列、計十部屋を二階建てで、一棟とする方式で建てる事が、その場で決まった。


設計は単純。

作業は分業。

資材は統一。


「これなら、慣れれば一気に行けるぞ」


「人数さえ居ればな」


「居るだろ。今は」


誰かがそう言うと、周囲から低い笑いが漏れた。


領内の職人。保護民の職人。

そして、王都で揉まれてきた者達。


立場も過去も違う者達が、今は同じ図面を囲んでいる。


南町は、静かに——

だが確実に、“受け入れる準備”を現実の形に変え始めていた。

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