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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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分かち合われた現実

用意した指針の写しを、俺は二人に手渡した。


レオン団長。

そして、商人代表。


紙を受け取った二人は、すぐには目を通さなかった。

互いに一瞬だけ顔を見合わせ、それから無言で内容を追い始める。


室内は、静まり返っていた。


紙をめくる音だけが、やけに大きく聞こえる。


やがて、先に口を開いたのは商人代表だった。


「……厳しい、ですな」


否定でも、抗議でもない。

ただの事実確認のような声音だった。


「だが……現実的だ」


レオンも、ゆっくりと頷いた。


「全員を助けられない前提で動く。それを最初から明文化している……覚悟のある書き方です」


俺は何も言わなかった。

言い訳も、説明も、もう要らない。


本来なら、全員助けたい。

それが理想だ。


だが。


「助ける側が潰れたら、次は無い」


ぽつりと、商人代表が言った。


「無限に食料がある訳でもない」


「無限に人手がある訳でもない」


「感情で突っ込めば、全てが共倒れになります」


それは、商人としての冷静な判断だった。

だが同時に、人を何人も見送ってきた者の言葉でもある。


レオンも、紙から目を上げた。


「……傭兵団としても、理解できます。戦でも同じです。守れない戦線を、無理に広げれば崩壊する」


「恨まれますよ?」


商人代表が、俺を見る。


「助けられなかった村からも、助けた村からすら、“もっと出来ただろう”と言われます」


「分かってる」


即答だった。


恨まれる事も。責められる事も。

歴史に残らない事も。


全部、分かっている。


「それでも、やる」


俺がそう言うと、二人はもう何も言わなかった。


レオンは静かに敬礼し、商人代表は深く頭を下げる。


「……では」


商人代表が言った。


「こちらは“運べる現実”を最大限、動かします。期待はしないで下さい。だが、手は抜きません」


「傭兵団も同様です」


レオンが続ける。


「救助出来る人数には限りがあります。だが、見捨てる判断を現場に押し付ける事はしません」


その言葉に、胸の奥が少しだけ軽くなった。


「……ありがとう」


二人が部屋を出て行った後、俺は椅子に深く座り込んだ。


理想は、もう手放した。

代わりに掴んだのは、現実だ。


冷たくて、重くて、誰にも褒められない。


だが——


「……これが、領を守るって事か」


助けられる者を、確実に助ける。

助けられない現実から、目を逸らさない。


その選択を、誰かに押し付けない。


線は、もう引いた。


後は——

その線の内側で、どれだけ多くの命を掬い上げられるかだ。


夜は、静かだった。

だがその静けさの下で、確実に歯車は回り始めていた。

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― 新着の感想 ―
この救助の試みは、最終的にどこにつながるのでしょう。現実世界の難民問題とも重なって、考えさせられます。領主としては、自分の領地と領民を固く守って、自力でたどり着いた人のみ、緩衝地帯で限られた援助を行う…
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