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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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言葉を間違えた日

レオン団長からの報告を聞き終え、俺はしばらく言葉を失っていた。


各地方。例外は、ほぼ無い。

どこも同じ様に痩せ、動けず、耐えている。


「……そうか」


それだけ言うのが、精一杯だった。


レオンが退出した後も、俺は執務室に残り、机に広げた地図を見下ろす。

赤い印が、点在している。


——保護対象村。


だが今となっては、その呼び方自体が間違っていた。


「……保護、か」


思わず、鼻で息を吐いた。


保護とは、余力がある者に対して行うものだ。逃げて来れる者。動ける者。

助けを“求めに来れる”者。


だが、現実は違った。


来れない。歩けない。

助けを求める声すら、出せない。


「……俺の認識が、遅かったな」


呟いた声は、誰にも届かない。


俺は最初から“流入”を想定していた。

保護民が来る。受け止める。南町へ流す。


その前提が、もう破綻している。


「これは……」


地図の端を指でなぞる。


「保護じゃない。救助だ」


言葉にした瞬間、胸の奥が重くなった。


救助とは何だ?

危険な場所に、こちらから踏み込む事だ。

現場判断が必要で、責任が重く、失敗すれば——死ぬ。


それを、俺は避けていた。


意識的か、無意識かは分からない。

だが、事実だ。


「……甘かった」


予想より、遥かに悪かった。

“まだ間に合う”という判断そのものが、楽観だった。


救助に切り替えるなら、やる事は変わる。


人手。

馬車。

食料。

医療。


そして——優先順位。


「……全部は、無理だな」


その現実を、ようやく受け入れた。


守ると言った。助けると言った。


だが、救助とは、選ぶ事だ。


「……それでも」


俺は、椅子から立ち上がる。


「ここで踏み込まなければ、意味が無い」


既に越えた線を、今さら引き直す事は出来ない。ならば、進むしかない。


机に向かい、新しい紙を取る。


表題には、こう書いた。


——救助行動指針(暫定)


この瞬間、俺の中で何かが切り替わった。


保護する側ではない。

待つ側でもない。


踏み込む側だ。


「……遅いかもしれない」


それでも、やらない理由にはならない。


俺は筆を握り直し、最初の指示を書き始めた。


この日、エドワルドの中で“言葉”が変わった。


それは、小さな修正であり、

同時に——取り返しのつかない転換だった。

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