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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。【発売日12/15!ネトコン14入賞】  作者: 稔


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土の下の選択

次に考えるべきは、作物だった。


肥料が形になり、保存食の芽も出始めている。

だが、それだけでは足りない。


穀物は、不作に弱い。

一度天候を外せば、すべてが崩れる。


――別の柱が必要だ。


俺の頭に浮かんだのは、前の人生で何度も目にしたが、最後まで広まらなかった作物。


じゃじゃ芋。


土の中で育つ、塊根作物。

この領内では、今のところ栽培されていない。


理由は単純だ。


「土の中から掘り出す食い物など、下賤だ」


貴族の評価は低く、見た目も地味。

宴向きではなく、税の計算もしづらい。


だが――実際は違う。


料理の幅は広い。

煮ても焼いても、粉にしても使える。

痩せた土地でも育ち、多少の暑さにも耐える。


そして何より大きいのは、


年に二度、収穫できる。


一度失敗しても、やり直せる。

量も、そこそこ取れる。


これがあれば、飢えを「完全に防ぐ」ことはできなくとも、凌ぐ確率は確実に上がる。


◇


問題は、どう手に入れるか。


俺が突然「新しい作物を育てたい」と言い出しても、話は進まない。

種芋の確保には、領主の許可と金が必要だ。


なら――正面から行く。


今回は、父に頼む。


書庫に籠もり、地方領の記録を洗う。

地図。

作物の記述。

交易品の一覧。


あった。


南寄りの地方領で、細々と栽培されている記録。

保存性は低いが、飢饉の年に役立ったとある。


十分だ。


◇


父への報告は、簡潔にした。


「新たな作物を試したいと考えています」


「名前は?」


「じゃじゃ芋と呼ばれています。地方領では栽培例があります」


父は、即座に否定しなかった。


それが、今の俺にとっては大きい。


「特徴は?」


「痩せた土地でも育ちます。暑さにも比較的強いです」


「収量は?」


「年に二度、収穫可能です」


そこで、父の指が止まった。


「……二度?」


「はい」


帳簿をめくる音。


「商人経由で、種芋を入手できるか調べてほしいのです」


父は、少し考え、頷いた。


「量は?」


「最初は少量で構いません。私が育てます」


◇


畑は、すでに頭に入っている。


肥料を試した区画の一部。

日当たり。

水はけ。


最初から農家に任せる必要はない。


俺が育てる。

失敗も、成功も、全部見せる。


収穫できたら――試食。


いや、違う。


少量の試食では意味がない。

まとまった量を作り、食事として成立させる。


その上で、農家に渡す。


「これだけ取れる」

「こうやって食える」

「次は、あなたの畑で」


順番は、それでいい。


◇


土の下にあるものは、見えにくい。


だからこそ、評価されない。

だからこそ、備えになる。


前の人生で、俺は見栄えのいい改革ばかり追った。

数字と制度ばかりを。


今回は、違う。


目立たない。

だが、確実に腹を満たす。


じゃじゃ芋は、英雄にならない。

だが、人は救う。


土を掘り返しながら、俺は思った。


反乱を防ぐのは、剣でも言葉でもない。


――まず、飢えさせないことだ。


そのための一歩が、今、土の下に埋まろうとしていた。

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― 新着の感想 ―
善政の基本は民を飢えさせないこと、とどっかの軍人さんが言ってたな
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