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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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土の下の選択

次に考えるべきは、作物だった。


肥料が形になり、保存食の芽も出始めている。

だが、それだけでは足りない。


穀物は、不作に弱い。

一度天候を外せば、すべてが崩れる。


――別の柱が必要だ。


俺の頭に浮かんだのは、前の人生で何度も目にしたが、最後まで広まらなかった作物。


じゃじゃ芋。


土の中で育つ、塊根作物。

この領内では、今のところ栽培されていない。


理由は単純だ。


「土の中から掘り出す食い物など、下賤だ」


貴族の評価は低く、見た目も地味。

宴向きではなく、税の計算もしづらい。


だが――実際は違う。


料理の幅は広い。

煮ても焼いても、粉にしても使える。

痩せた土地でも育ち、多少の暑さにも耐える。


そして何より大きいのは、


年に二度、収穫できる。


一度失敗しても、やり直せる。

量も、そこそこ取れる。


これがあれば、飢えを「完全に防ぐ」ことはできなくとも、凌ぐ確率は確実に上がる。



問題は、どう手に入れるか。


俺が突然「新しい作物を育てたい」と言い出しても、話は進まない。

種芋の確保には、領主の許可と金が必要だ。


なら――正面から行く。


今回は、父に頼む。


書庫に籠もり、地方領の記録を洗う。

地図。

作物の記述。

交易品の一覧。


あった。


南寄りの地方領で、細々と栽培されている記録。

保存性は低いが、飢饉の年に役立ったとある。


十分だ。



父への報告は、簡潔にした。


「新たな作物を試したいと考えています」


「名前は?」


「じゃじゃ芋と呼ばれています。地方領では栽培例があります」


父は、即座に否定しなかった。


それが、今の俺にとっては大きい。


「特徴は?」


「痩せた土地でも育ちます。暑さにも比較的強いです」


「収量は?」


「年に二度、収穫可能です」


そこで、父の指が止まった。


「……二度?」


「はい」


帳簿をめくる音。


「商人経由で、種芋を入手できるか調べてほしいのです」


父は、少し考え、頷いた。


「量は?」


「最初は少量で構いません。私が育てます」



畑は、すでに頭に入っている。


肥料を試した区画の一部。

日当たり。

水はけ。


最初から農家に任せる必要はない。


俺が育てる。

失敗も、成功も、全部見せる。


収穫できたら――試食。


いや、違う。


少量の試食では意味がない。

まとまった量を作り、食事として成立させる。


その上で、農家に渡す。


「これだけ取れる」

「こうやって食える」

「次は、あなたの畑で」


順番は、それでいい。



土の下にあるものは、見えにくい。


だからこそ、評価されない。

だからこそ、備えになる。


前の人生で、俺は見栄えのいい改革ばかり追った。

数字と制度ばかりを。


今回は、違う。


目立たない。

だが、確実に腹を満たす。


じゃじゃ芋は、英雄にならない。

だが、人は救う。


土を掘り返しながら、俺は思った。


反乱を防ぐのは、剣でも言葉でもない。


――まず、飢えさせないことだ。


そのための一歩が、今、土の下に埋まろうとしていた。

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