ここはどこ?雨宿りのつもりが帰れなくなりそうです。風鈴の音は運命を呼ぶ
今朝は初雪がちらついたから、思いつきました
空は青いのに雪がちらつきキラキラしている真っ昼間、それが急に雨に変わり慌てて屋根の下らしきところに身体を滑り込ませた。
どうやらカフェのようだと気づき、扉を開けた。
チリン、チリン……
なんだか気の抜けた季節外れの風鈴のような音がした、と思ったら店内は想像とは違う雰囲気だった。
「いらっしゃい」
手を止めてこちらを見たダンディーなマスターらしき人は、落ち着いた様子のまま、
「珍しいお嬢さんがいらっしゃいましたね」
と言った。そういう趣向なのか、場違いを指摘されたのか理解できなかったが、こんな場所にコンセプトカフェなんてあったかしら? と内心首をひねった。
なにしろカウンターの中にいる綺麗なお姉さんの耳は長く尖っていたのだ。よく見ると店内のお客さんもエルフやドワーフ、出で立ちがアニメで見る冒険者みたいな人ばかり。
「近くでイベントがあったのですか?」
「とりあえずカウンターへどうぞ」
にこやかにマスターが勧めてくれたまま腰を落ち着けると、カップが置かれた。
「外は寒かったでしょう。生姜入りのミルクティーをどうぞ。サービスです」
と、マスター。一口飲むとポカポカと心も身体も温まってくる。
「マスターの料理はうまいからな、何か食べていくといい」
その声に振り向くと冒険者風のおじ様と目があった。にこやかにしていた目が私の首元に留まると、チッと舌打ちをされた。
「まさか、こんなところにあったとは。お嬢さん、そのネックレスはどうしたんだ?」
「これは……」
言いよどんだものの、隠すことでもないと思いなおし、話すことにした。
「子供の頃、公園の土管の中で眠ってしまっていたことがあったんです。その時に握っていたらしいのですが、離し難くいつも身につけているんです。もはやお守りみたいなもので……」
「それでこのカフェに来れたんですね。謎が解けましした」
マスターが声をかける。
「このカフェは、日本側からは見えない扉があって、アイテムを持っていればその限りでもないんですよ」
マスターの言葉を引き継いで、おじ様が説明する。
「そのネックレスは15年前に倅が持ち出して、失くしたとか抜かしやがった花晶石だ」
「時が満ちたら再会出来るって言い伝えがあってな……」
その時、風鈴の音がして風とともにおじ様を若くしたような青年が現れた。
つかつかと足音を立てて近づくと、ガバリと抱きしめられた。驚いて微動だに出来なかったその時、幼い日の記憶が流れ込んだ。
お読みいただきありがとうございます。
オープンチャットでは風花と名乗っております。
短いのなら書けるかなとチャレンジしてみましたが、難しかったです。
クセを込めてあるので、少しでもお楽しみいただければ本望です。




