<03:八神 愛>
「圭、今日のことは内密に…いいな?
システム上の誤作動として報告処理しておく。」
「YA…では、お先にお疲れ様です。」
厳重に封印された地下プールを離れ、
エレベーターに乗り込む。
ポケットからお守りのぶら下がった端末を取り出し、
写真データをスマホに送る。
「見間違えだったかもしれないからな?
端末の分も一応残しとくか。」
「いつの日か?この夜に。」_誰の声?
その夜。
研究者が滞在するシェアハウスに戻った僕は、
深い眠りの中で、遠い昔、
記憶の淵に刻まれた声を耳にしていた。
と同時に、水の中に放り込まれた。
僕は息も出来ないまま、
下へ下へと落ちていった。
水底に横たわる僕。
「あれっ?息してないぞ?でも苦しくない。
そうか無呼吸睡眠でとうとう死んでしまったか?
ちょっと待てよ…
でもまだ水の中にいる?
ということは、これは夢…もしくは
金縛り状態の幽体離脱中かな。
そうと分かれば、まず自分の手を見て…、
ちゃんとあるなあ?
おっ端末にお守りも。
これは明晰夢というやつだな。
ということは、
イメージを操作して夢をコントロールできる!
水の中の夢?
これは今日の地下プールが関係してるよな。
よし、スーパーカミオカンデを
意図したイメージを創って…?
おやっ?夢の景色に変化なし?
うん暗かったから全体のイメージが湧かない…。」
ふと、端末にぶら下がって
ゆらゆらと揺れるお守りが目についた。
「そうだ。確かあの時、
端末のカメラで撮影したんだっけ?」
端末を操作して写真データを検索、
今日の日付を打ち込む。
「このデータか…
漢字で何か書いてあったんだよな…
なんだっけ?
…確か
…人の名前、
八神 愛!」
突然、アラートが鳴り出し、
水の中が緑の光に包まれた。
「――超新星ニュートリノ検出。
位置、該当タンク
8G3ブロックA1……
反応値オーバーラン。」
明晰夢の中から緑の閃光と共に
最初の言葉が浮かび上がった。
「いつの日か?この夜に。」
八神 愛が発した最初の言葉だった。




