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第4話『二つ目のユニークスキルの習得』

 一か月が経った。俺は無詠唱魔法の習得など様々なスキル獲得に成功した。流石は主人公補正というべきか。やたらと技術の習得が早い。ユニークスキル【深淵】もスキル熟練度はおそらく三つくらいにはなっているだろう。


 そして、本日遂に、魔石の色が黒になった。それと同時に【身体強化】の基礎魔術を発動させたら、脳内でスパークが起こり、ユニークスキル【究極突破】を習得した。


 ついに最後のユニークスキル【破壊】を獲得するときがきたのだ。


 これには銅の剣とオリハルコンを入手する必要がある。それも難しいことではない。我が家の宝剣がオリハルコン製なので、【複製】のエクストラスキルを使えば、容易に代替品を作れる。


 今日もいつもの如く、父が出張に出かけているため、武器庫に忍び込めば、オリハルコンの宝剣をコピーすることも可能だ。


「よし。最後の仕上げといくか」


 俺はまたお茶会の時間を狙うことにして、午前は読書でもして適当に過ごした。読んだ本の内容は前世で死ぬほどみた魔女に姿を変えられてしまうお姫様とか、ありきたりな話だった。


 それなら、もう少し大人な小説でも読んで、刺激的な時間を満喫するべきだったか。


 こんな邪な発想が生まれる時点で、やはり俺はおっさんなのだ。


 俺は読み飽きた本を直し、瞑想でもすることにした。


 この世界の瞑想は馬鹿にできない。魔力量の増加にとてつもなく効果的なのだ。


 前世でも上司にすすめられて、瞑想をよく行ったものだ。


 俺は気息を整えて、全神経を丹田へと集中させた。


 そこに魔力の元となる器が存在するのだ。


 俺は丹田から魔力を練り上げて、習得したばかりの【究極突破】を試してみることにした。


 その瞬間――全身から膨大な魔力が溢れ出て、俺の身を焦がしてしまうほどの暴走を見せた。


 これは不味いと瞬間的に悟り、俺は【究極突破】を中止した。まだ制御面で不安定さが残っているようだ。


 おそらくスキルレベルが低いせいだろう。もう少し訓練してからオリハルコンの剣を割った方が良さそうだ。そう判断して、俺は【究極突破】のスキルレベルを上げるためにひたすら反復練習を行った。



 ☆☆☆



 数日が経過した。母と一緒にお茶をしていると、推しのミーナが遊びにきた。今日はわりとおめかししているようで、街娘にしては綺麗な服を着ている。


 母は俺に一言だけ告げた。


「今日はミーナちゃんがクッキーを焼いてきてくださったそうよ。クレイも食べるわよね?」


 ミーナは料理上手なので、文句を言うつもりはないし、たとえ不味くても美味しいと嘘を吐いてでも、彼女の笑顔を守るだろう。


 何故ならミーナは俺の推しのヒロインだからだ。俺は喜んで頷き、ミーナに語りかけた。


「ミーナ。クッキー焼いてきてくれてありがとう」


 ミーナは少しはにかみながら無邪気にとんでもない発言をしてきた。


「だって大好きなクレイ君のためだもん。そりゃ頑張るに決まってるでしょ?」


 そのあまりにも大胆な発言に俺は脳が沸騰しそうになった。横目で見ると、母は微笑ましそうに笑い、少し茶化してきた。


「あらあら。クレイはモテモテね。可愛いお嫁さん候補が見つかってよかったわね」


「ちょ、母さん。気が早いってば! ミーナも気にしなくていいからな?」


 俺が必死に母の暴走を抑えようとしていると、ミーナはまたしても爆弾発言を投下してきた。


「わたし。クレイ君のお嫁さんになってもいいよ?」


「は、はいぃぃぃぃぃぃぃッ!?」


 突然の幼馴染の告白に、俺は戸惑いを隠せなかった。母はますますにやにやしながら追い打ちをかけてきた。


「あら。クレイったら罪な子ね。もうミーナちゃんを落とすなんて、流石は母さんの子ね」


「も、もう! 母さん! 変なこと言うなよな!」


「別におかしなことではないわ。十歳と言えば恋をしてももう不思議な歳ではないわよ?」


「ああ。もう! まだ俺たちは子供なんだぞ? 変なこと吹き込むなよ!」


 俺が変なことという言葉に敏感に反応したミーナは涙目になった。


「え? もしかしてクレイ君はわたしがお嫁さんじゃ嫌なの?」

 

 ちょっと待て。なぜこうなった。というかそんな今にも泣きだしそうな顔をしないでくれ。


 俺は覚悟を決めて、大好きな推しに宣言した。


「そんなことない! 俺もミーナのことが大好きだ! できるなら将来結婚したいと思っているよ!」


 俺がそう口にした途端、ミーナは顔を真っ赤にしながら嬉しそうに微笑んだ。


「……嬉しい。クレイ君とわたしはそーしそーあいだね!」


 なんだかむずがゆくなってきたので、俺は言葉を濁した。


「は、恥ずかしいこと言うなよ。あともうこの話題禁止な?」


 ミーナは残念そうに肩を落として口を尖らせた。


「ええー。わたしはもっとクレイ君とイチャイチャしたかったのにぃ!」


 あまりにも恥ずかしいことをストレートに言う物だから、俺はちょっとだけ注意することにした。


「ミーナ。お前はもっと恥じらいを持て! 年頃の女の子が男とイチャイチャしたいなんてはしたないことを言ってはいけない!」


 俺が至極真っ当なことを口にすると、母は面白おかしく笑った。


「あらあら。なんだかお父さんみたいなことを言うのね。クレイは!」


 ミーナも同じように笑った。


「うん。いまのウチのパパにそっくりだった!」


 しまった。つい心の中のおっさんが露出してしまったか。俺はなんとか誤魔化すようにこの話題から無理やり話を逸らした。


「そんなことより早くクッキー食べようよ! せっかくミーナが焼いてきてくれたんだから!」


「そうね。せっかくだしいただきましょうか!」


 母はミーナからバスケット籠を受け取ると、包みに入っているクッキーを取り出し、テーブルの上にある皿に分けた。


「それじゃあ、メイド長。ミーナちゃんの分の紅茶を用意してくれるかしら?」


 メイド長と呼ばれる黒髪のお姉さんシャニルはゆっくりと頭を下げた。

「かしこまりました。奥様。すぐにご用意いたします!」


 そう言って、メイド長は余っていたティーカップをトレイから取り出して、紅茶を注ぎ、ミルクと砂糖をたっぷりと入れ込んだ。


 子供の客に対しての配慮は完璧だ。流石はシャニルさんである。


 お茶を渡されたミーナは嬉しそうに頭を下げた。


「シャニルさん。ありがとうございます!」


「いえ。わたくしめは当然の務めを果たしたに過ぎませんわ!」


 ちょっとお堅いところが欠点だが、それでも我が家に欠かせない超有能メイドさんである。


 ミーナは嬉しそうにカップを手に取ると、無邪気に笑った。


「それでも嬉しかったです。それではいただきますね?」


「はい。温度も丁度よいように調節しておりますので、ご安心してお飲みください」


 紅茶を一飲みすると、ミーナはほわわんと幸せそうな表情を見せた。


「ああ。とっても甘くて美味しい~~!」


 なんだか幸せそうなミーナもやっぱり可愛いな。俺がその顔を見て癒されていると、母が耳元でとんでもないことを言い出した。


「やっぱりクレイはミーナちゃんのことが大好きなのね♪ 早く恋人にしてしまいなさいな♪」


 その言葉を耳にした瞬間。俺は激しく叫んだ。


「だから、恥ずかしいこと言うの、やめろってばぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 このあと、俺は恥ずかしさで沸騰したまま、ミーナの作ってくれたシュガークッキーの味はまるでミーナへの恋心のように甘かった。


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