第21話『謎の女視点~勇者以上の最強の存在~』
なんということだろうか。まさかこれほどの傑物がいるとは。
私はあのジャイアント戦で少年の実力を世界でも上の上の下くらいだと思っていた。
しかし、彼を監視しているうちに、彼が錬金術へと嵌っていくのを観察していた。
そこに込められた魔力総量は既に私を超えていた。勇者の四倍くらいあるだろう。
私より二割多いほどだ。魔王である私より二割も上なのだ。そんなことが信じられるだろうか。
英雄因子が高いだけで才能はあると思っていたが、まさか勇者以上の力を持っているとは。
さらに少年は短期間で金策を実行して、金貨千枚の財産を稼いでいた。そこらの行商人の百倍の商才だ。
財力だけなら魔王軍には匹敵しないものの、私が自由に動かせる金よりも持っているだろう。
しかもその資金をアテに、複製ジェルを大量に買い込み、さらに増殖して錬金術の腕前をめきめきと上げていった。
これは魔王軍四天王の邪魔法師ドレインより格上の錬金力を持っているだろう。
しかもあの少年は魔界に伝わる伝説の剣【魔剣ブラック・バースト】の錬金に成功した。
しかもその攻撃力は通常の魔剣よりも三倍ほど高めだ。あれを装備した少年のパワーは恐らく私や勇者なんて足元にも及ばないだろう。
そして、魔剣を振った時の身のこなし、あれはスピード。剣の技術もとんでもなく高い。唯一勝てるところがあるとするなら防御性能だけだ。
これは普段の魔王としての私を超えて大魔王の最終形態を身につけなければ少年には敵わないだろう。
それ以来私は来る日も来る日も修練に励んだ。その結果大魔王としての力と大魔王最終形態の力を手に入れた。
これで少年と互角に戦えるはず。私は思わず笑みが零れた。
それ以来私は冒険者ギルドのマスターの肉体を乗っ取り、ギルドマスターとして活動している。
少年はまだ完成していない。完成した少年を倒し、魂を頂かないことには、真の魔神。大魔神への道は開かれない。
大魔神にさえなれば世界も神すら超えて我が物となる。勇者など取るに足らないし、今後どんな救世主が誕生しようと私には敵わないだろう。
それより女の身体を男に憑依させると言うのは苦痛だ。見たくない触れたくない物を毎日洗わないといけない苦労は筆舌し難い苦痛だ。
それもすべては少年の魂をいただくため、そのため比較的人間にしては美形なこの男の肉体でよかったと思う。
筋骨隆々のいかつい男の肉体になるなど考えたくもないからな。
そして、案外ギルドマスターというのも悪くない。冒険者に指示を出し、芽の出そうな冒険者に高難易度任務を与えて、育てるのもなかなかに面白いものだ。
この中で一番育った奴の魂は少年と戦う前のメインディッシュとしていただくつもりだ。それまで近隣の街の外を襲わせているモンスターたちから、人間の魂を献上させて、我慢しておくことにしている。
最高のメインディッシュが目の前にいるのだ。多少の空腹など問題にならないし、いざとなれば育てた冒険者の魂を頂き空腹を癒すのが最善の方法だ。
さて、そろそろ少年に試練を与えるとするか。私は倒されたモンスターの中でも一番魂の密度が高いモンスターを東の荒野に百匹ほど大量召喚した。
これで一段階少年も完成形へと近づくことだろう。最強になった少年、いや、魔剣士スロウ・ディストラクションとの戦いを楽しみにして、私はひたすらメインディッシュを創造して、空腹時の美酒に酔いしれた。




