第20話『最高の魔剣』
仮眠から目覚めると、辺りはすっかり暗くなっていた。俺の机の上にサンドイッチと手紙が置いてあった。
俺はその手紙に目を通した。
『あんまり根を詰め過ぎちゃ駄目よ。ミーナちゃんのために頑張るのもいいけど、食べる物はしっかり食べなさい! by偉大なる母より』
その手紙を読んで俺は思わず吹いてしまった。
「ふはは。母さんらしいな……」
俺はありがたくそのサンドイッチを手に取り食べ始めた。それはメイドの手作りではなく、母が作ったマスタードたっぷりの愛のあるタマゴサンドだった。
やはり母さんの卵料理は最高だ。
俺はあっという間にサンドイッチをすべて平らげた。
「よし! やるか!」
俺の中に気力が充満して、やる気がめらめらと湧き上がってきた。
どんなことがあろうとも、俺は魔剣を完成させてみせる。
その強い覚悟と決意を持って、収納魔法から巨人の牙とアダマンタイトと魔法樹の枝を取り出した。
それらを錬金窯へと慎重に投入していく。
ぐつぐつぐつぐつ。混ぜ混ぜ混ぜ混ぜ。
いつもの手つきで錬金窯を捏ね回す。色がどんどん黄金色に輝いて行くのが分かる。
ここで油断は禁物だ。仮眠と母のサンドイッチで回復した魔力と体力と全神経を集中して、まさに魂を込めて錬金窯をかき混ぜる。
すると黄金色の輝きが頂点に達して、ぽんっと響きのいい音が鳴り響き、一つの片手剣が飛び出してきた。
俺はそれを片手で受け止め、その刀身を見つめた。黒い色のダイヤモンドを彷彿とさせて紫色の光が漂っている破滅的な美しさのある魔剣。
これこそゲーム内でも何度も見た【魔剣ブラック・バースト】そのものだ。
俺は歓喜のあまり震えるような声で囁いた。
「……出来た。ついに出来たぞ……!」
俺は歓喜のあまりエールを飲みたい衝動に負けてしまいそうになったが、祝杯より前にやることがある。
そうこの剣の斬れ味だ。どんなにいい剣に出来たと思っていても前作の黒いオリハルコンの剣以下という可能性もある。
俺はいつもの愛剣と新たな愛剣候補を収納魔法に抑えて裏庭に出た。
そこで黒いオリハルコンの剣を取り出し、床に置き、俺は魔剣を構えた。
「……さて如何ほどの物か!」
俺はわくわくしながら新たな黒い魔剣を振り下ろした。
すると、音も鳴らすことなく、すっと豆腐のように黒いオリハルコンの剣が真っ二つになり、地面にも斬れた割れ目がミリ単位でできた。
「……想像以上だ!」
おそらく切れ味は前の三倍。前が攻撃力100だとするとこれは300くらいの代物だろう。
俺は中の上のステータスなので、レベル40で、地の攻撃力が180だとすると、攻撃力480くらいだ。
この攻撃力はゲーム終盤相当の攻撃力であり、実質覚醒した聖剣より強力だ。物理的にだけならだが。
これはレベルを20くらい底上げしている。つまりゲーム終盤の敵にも通用するというわけだ。
それでも世界を救うほどではない。ゲーム終盤の中盤くらいの強さだ。世界的に見たら上の中。
つまり今の勇者君に勝てやしないだろうし、魔王になんて勝てるはずがない。
何処まで行ってもクレイは勇者にならなければ凡人だ。実際に他のステータスはきっと四十台のクレイと同等かそれ以下。
そんな物理特化な状態では回避不能の攻撃が来た瞬間に詰む。しかし、ここは序盤の街だ。いくら英雄因子が高いからって目立つことさえしなければラスボス級のモンスターや魔族に狙われることもないだろう。
俺は魔剣を持ち何度か素振りした。
音すらならないほどの澄んだ動作で、濃縮された魔力が次元を斬った。これはもしかすると攻撃力300では済まないのではないかという気さえして来たが、おそらく気のせいだろう。
俺は魔剣を収納魔法で隠して、折れたオリハルコンの剣も回収した。
あとはこのオリハルコンの剣と魔剣を何本も複製して折れた時用と金策のためにストックしておかなくては。
俺は満足感と共に、自宅のベッドへと向かった。




