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第2話『修行開始』

 俺はあれからユニークスキル習得のための修練を開始した。


 まずユニークスキル【究極突破】。


 通常の身体強化の十倍ほどの戦闘能力を発揮できる、ぶっ壊れスキルだ。


 次に魔法系のユニークスキル【深淵】。


 全属性に二倍ダメージを与えることができるアビス系魔法を扱える、最強の魔法スキルである。


 最後に奥義系のユニークスキル【破壊】。


 クリティカルヒット必中の効果を持つバースト系の奥義を使えるようになる、究極の奥義スキルだ。


 正直ゲーム終盤で習得するスキルばかりだ。ゲーム序盤から狙うこともできるが、とてつもない時間がかかる。


 ただでさえ凡人レベルの強さなのだ。これくらいのスキルを習得しないと、正体隠して敵を追い払うなんてできっこない。


 それと残念ながら、この世界では自分のステータスを可視化する手段は存在しないらしい。


 スキルレベルが上がると、脳内に火花が散り、感覚的に、ああ、上がったなとわかるのだ。


 まず一つ目のユニークスキルの習得条件は魔石にMP一万分の魔力を蓄積させることだ。


 進行具合によって緑、青、赤、紫、黒に変色する。黒になれば【究極突破】を習得可能だ。


 続いて二つ目のユニークスキル【深淵】は、初級無属性魔法スキルをカンストさせて魔導書を読むことだ。


 都合のいいことに、その魔導書は主人公の家にある地下の禁書庫で入手可能だ。つまりいつでも覚えることができる。


 そして、三つ目の【破壊】は、初級剣術スキルをカンストして、銅の剣でオリハルコンを破壊すれば習得可能である。


 そのためにはまず【究極突破】の習得が必要になる。


 最優先事項は毎日初級剣術スキル。魔石に限界まで魔力を蓄積する。初級無属性魔術スキル。それらを最大値になるように地道な訓練が必要になる。


 というわけで俺は今日も庭で騎士である父に、剣術稽古をつけてもらったあとに、自主練で初級剣術スキルと、初級無属性魔法スキル、魔石への魔力蓄積を毎日コツコツと継続していた。


 前世で培った社畜根性と、ゲーマーとしての探究心が合わさり、修行も楽しくて仕方なかった。


 毎日自分の実力が積み重なっていく快感はなんと素晴らしいことだろうか。


 しかし、幾ら終盤のユニークスキルを習得しても、所詮はクレイだ。勇者スキルがなければただの器用貧乏の凡人。


 修行をしても世界的には中の上だ。だからやり過ぎるくらいやった方がいい。


 主人公補正が働いて、どんなトラブルを引き寄せるか分からないからな。


 また大変な思いをして死ぬのは絶対に嫌だ。


 深く覚悟を固めて、俺がコツコツ修行をしていると、母であるマシーナ・ノーマルフィールドから声がかかった。


「クレイ。ミーナちゃんが遊びに来たわよ!」


「はーい!」


 ミーナちゃんことミーナ・セントネームドは本作のメインヒロインだ。最初は落ちこぼれ治癒師だが、ゲーム終盤で覚醒して聖女へと覚醒する。白銀の長い髪に赤い瞳が特徴の、俺の最推しキャラだ。


 いくらまだ年齢が幼いとはいえ、将来あんな超絶美少女になる推しが遊びにくると知れば嬉しいに決まっている。


 俺は急いで前髪を整えていると、庭の方から白銀の髪を靡かせて、ミーナちゃんがやってきた。


「こんにちは。クレイ君!」


「ああ。こんにちは。ミーナ!」


 可愛い。いくら幼いとは言え、やはりミーナは可愛すぎる。俺はちょっと顔が熱くなる感触がした。やばい。やっぱり好き過ぎる。


 ミーナはそんな俺の様子を心配して近寄ってきた。


「どうしたの? クレイ君。顔が赤いよ?」


「いや、別になんてもないさ」


 ミーナは唇を尖らせて、俺を見つめた。


「ホント? じゃあわたしが確かめてあげるね!」


 そう言ったあと、ミーナは俺のおでこに自分のおでこをくっつけてきた。ちょ、近い、近い、近いってば。ミーナの髪がふわりと触れて、ほんのりと甘い香りがした。前世の時と同じく、また心臓が爆発しそうだった。


 どうやら肉体に精神も引っ張られてしまい、精神年齢が離れた少女にもドキドキしてしまうようだ。


 ミーナは熱を確認するとおでこを離した。


「うん。熱はないね。良かったぁ!」


 俺は今でもドキドキしていた。なんとかミーナに悟られまいと必死に隠していた。


 ミーナは俺の手を握ると、本を持ってきていた。


「一緒にご本読もうよ? あとお弁当も持ってきたの!」


 ミーナはバスケットからサンドイッチとおしぼりを取り出して俺に差し出した。


 俺はおしぼりで手を拭き、サンドイッチを思いっきり頬張った。


 口の中にクリーミーでありながら、酸味と甘みの混ざった、マヨネーズとタマゴとパンの味が口の中いっぱいに広がった。


「美味い! ミーナ! これ、めっちゃ美味いよ!」


 俺が喜んで答えると、ミーナは顔を赤くして照れ臭そうに笑った。


「……本当? よかった。おかわりあるからたくさん食べてね!」


 俺は遠慮なくサンドイッチを「美味い。美味い」と胃袋へ収納し続けた。その後、ミーナと一緒に絵本を読んで午後は修行を中断してまったり過ごした。


 そして、俺は胸に誓った。この最推しとの甘々な日常を守るためにも、さらに修行を積み重ねる。そう深く決意した。

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