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第19話『最強武器への道』

「あそこにエリンギ竹が十個集まってるぞ!」


「あの木下だね。分かった!」


 俺たちは今日も低レベルの素材採取クエストを時短でこなしていた。


 エリンギ竹をわずか十分で採取して、今日のクエストが終わった。三つくらい掛け持ちしたが、それでも慣れてきているので、四十分程度で終わった。


 そして、素材を採取した俺たちは互いにハイタッチを交わした。


「お疲れ! ミーナ!」


「うん。お疲れ様。クレイ。これでクエスト達成だね!」


「おう!」


 今日の一仕事終えたという達成感が心地よい。最近は効率よく稼いだ金で転移石を買ったので、帰り道も楽々だ。


 俺は転移石を発動させて、『リザルトの街』の冒険者ギルドの建物の前に到着した。


 俺たちはそのままギルドの扉を開けて、受付カウンターへと向かった。


「クエスト達成しました!」


 俺たちの報告に受付のお姉さんは満足そうに頷いた。


「今日もお疲れ様です。報酬は銀貨二枚となります!」


 銀貨一枚。つまり日給一万円を僅か一時間足らずで達成した。


俺たちはギルド内では素材採取をやらせたら一番優秀な新人扱いされていたが、戦闘面では目立たないので、それほど目立つことはなかった。


 それよりもこのあとの時間の使い方だ。俺はミーナに一言声をかけた。


「すまん。ミーナ。このあと例の錬金術の勉強があるからデートできない」


 ミーナは少し悲しそうな表情をしたが、すぐに納得してくれた。


「ううん。気にしないで。それもわたしとの結婚を真剣に考えてくれてるからだよね。頑張って。応援してる!」


「ああ。ありがとう。じゃあな!」


 そのまま立ち去ろうかと思ったがミーナのことが恋しくなり、俺はミーナの元に近寄り、耳元で囁いた。


「ミーナ。俺はお前のことを愛してる」


 そう囁くとミーナはぼんっと音がするように赤面した。そして、声を荒げて文句を呟いた。


「不意打ちなんてずるいよ。もう……!」


「ミーナが可愛いから悪いんだぞ?」


「もう……クレイのばか……」


「それじゃあな」


「うん。また明日ね……」


 俺たちはそのまま手を振って別れた。去り際にミーナを見つめたが、どうやらさっきの不意打ちが効いたみたいで、少し恥ずかしそうにもじもじしていた。


(いつか必ず幸せにしてやるからな……)


 そう深く決意して、俺は自宅への帰路についた。


 ☆☆☆


 自宅へ辿りついた俺は、図書室の近くにある研究室に籠り、錬金窯を探し出し、錬金術の勉強は始めていた。


 それは全て最強の武器である【魔剣ブラック・バースト】を完成させるためだ。


 この剣さえあれば中の上しかない俺の実力でも上の中くらいまでは底上げできる。それほど反則的な攻撃力を持つ魔剣なのだ。


 その素材となるのはこの前手に入れた巨人の牙。店で売っていた魔法樹の杖を分解錬金して魔法樹の枝は入手済みだ。


 問題はアダマンタイトだ。これは西大陸でしか採取できない。つまり錬金術で生み出すしか方法はない。


 俺は今日もアダマンタイトを作成するために必死に錬金レベルをアップさせるためにオリハルコンの剣を大量複製錬金する訓練を始めた。


 俺がオリハルコンの剣を窯に入れると、ぐつぐつと沸騰してきたので、複製ジェルを投入して、魔力を込めてかき混ぜる。


 ぐつぐつぐつぐつ。混ぜ混ぜ混ぜ混ぜ。


 どんどん窯の沸騰が激しくなり黄金色の輝いた。


 ぼんっ!


 激しい爆発音と共に、窯の中から四本のオリハルコンの剣が飛び出してきた。


 俺は身体の中に熱のような弾けた感覚を感じた。


 これは錬金レベルが上がった証拠だ。


(そろそろかもな……)


 俺はそう判断した。錬金術を初めて約一か月。毎日十時間以上錬金術に時間を費やしてきた。


 そろそろ錬金レベルも40は超えているはずだ。


 オリハルコンの剣の複製はゲーム内でも最高率のレベリング法だ。


 今なら行ける。俺は感覚的に理解した。


 俺はアダマンタイトの作成に取り掛かる。オリハルコンの剣十個。魔法樹の枝三つ。ダイヤモンドの指輪。これでアダマンタイトが完成する。


 実は素材は常に複製魔法で増やしているので、失敗した時の保険も安心だ。


 俺は遂にアダマンタイトを作成するために、オリハルコンの剣を十本錬金窯に放り込み、魔法樹の枝を三つ。ダイヤの指輪を入れた。ダイヤの指輪は母の指輪を貸して貰い、こっそり複製魔法でコピーしたのだ。


 正直、複製魔法があれば働かなくてもいいくらい効率良く稼げる。


 俺も最近【魔剣士スロウ・ディストラクション】に変装して、東に進んだ先にある商業都市で、オリハルコンの剣やダイヤモンドを売ることで、金貨千枚くらいの財産を手にしていた。


 日本円にしたら、一億円だ。もう億り人と言っていいだろう。こんな阿漕な方法で金作ができるなんて、何故もっと早く思い尽かなかったのだろうか。


 つまり俺はもういつでもミーナを養えるだけの金を稼いでいることになる。しかし、それは【魔剣士スロウ・ディストラクション】として稼いだ金だ。


 下手に豪勢な暮らしやニート生活をすると、周囲に怪しまれる。


 だから念入りに、地道に錬金クエストや採取クエストでコツコツクレイとしての収入を稼いで貯金しているのだ。


 もちろん困った時は、この金貨を使うこともあるだろう。でもそれは本当に切羽詰まった時だけである。


 お金の話はこのくらいにしておいて、今はアダマンタイトの錬金に集中する。


 ぐつぐつぐつぐつ。混ぜ混ぜ混ぜ混ぜ。きゅるきゅるきゅるきゅる。


 どんどん錬金窯の中が黄金色に輝いてくる。


 いよいよだ。これで一か月の苦労が報われる。


 そして、盛大にぽんっと言う音が鳴り、ダイヤモンドのように輝く鉱石が窯から飛び出した。


 俺は魔力粘糸の魔法でそれを受け止めて、自分の元へ引き寄せた。


「……よし! できたぞ!」


 俺は自分が作り上げたアダマンタイトを見つめて、脳汁がぷしゅーと溢れ出る感覚に襲われた。


(やばい。錬金術楽しすぎだろ)


 俺はスローライフの手段としてこれを商売にするのもアリだと思った。冒険者より目立たずに実力を隠して、コツコツ稼ぐことができる。


 おおいにアリだ。俺は自分の中で稼ぐ選択肢がひとつ増えたを感じた。


 さあ。お次はいよいよ本番だ。


 俺はなるべく成功確率を最大限に上昇させるために、マジックポーションを三つほど飲んで、軽く仮眠をとり始めた――。


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