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第17話『ジャイアント』

 俺はジャイアントのいる場所へ向けて猛スピードで空中飛行した。サーチで感じた魔力反応がどんどん膨れ上がってくる。


 ジャイアントと言えば中盤のボスモンスターだ。普通は東大陸にしか存在せずこんな序盤の街に出現することはない。


 おそらく先ほど俺が仮説した通り、英雄因子により、世界が俺を主人公にさせようと習性をかけにきたのだ。


(全く面倒なことになったな……)


 本当に面倒だ。せっかくの休日ミーナとの楽しい焼肉デート。毒消しポーションを飲んだら、ようやくふたりでアイスクリームでも食べながらローストコーヒーでも飲んでまったりしようと思っていたのに。


 まだ見ぬジャイアントへの怒りが沸々湧いてくる。俺は俺のスローライフを邪魔する奴には容赦はしない。


 俺はさらに飛翔速度を高めて、ぼうっとジェットエンジンのように勢いを増した。そして、目的地であるジャイアントのいる中央大陸南東部の荒野にその姿を発見した。


 体長は約10メートル。そのでっぷり太った巨体を覆い尽くすのは、毛むくじゃらな体毛だ。目は一つ目。ゲーム内で中盤に苦戦させられた苦い思い出が脳裏を過った。


 だが大丈夫。もう俺は初見じゃなく、十回以上このゲームをプレイしているのだから、対処法も行動パターンもばっちり学習済みだ。


 俺は【究極突破】で肉体を超覚醒して、自前のオリハルコンの黒剣も最大値まで強化する。


 俺は飛翔したままジャイアントの頭部を狙った。


「先手必勝。奇襲攻撃だ!」


 俺の横回転斬りがジャイアントの脳にクリティカルヒットした。その途端、ジャイアントは動揺して、俺を敵とみなしてターゲッティングした。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」


 まるで醜いおっさんの荒ぶりだ。自分の前世を想起させて倒すのを思わず躊躇ってしまいそうになった。


 だが、こいつは俺の平和なスローライフをぶっ壊そうとしたのだ。そんな奴は俺にとって害獣でしかない。


 俺は向こうの腕の振りを空中で回避して、アビス系最大魔法を思いっきりぶち込んでやった。


「アビス・コメット!」


 俺は自分の手から巨大な隕石を出現させて、それをジャイアント目がけて飛ばした。奴は防ごうとしたが、俺が途中で魔力で軌道を変えたことにより、胴体にクリーンヒット。


 大ダメージと共にジャイアントは片膝をついた。


(いまがチャンスだ!)


 俺は全力で魔力を練り上げ、破壊系スキル最大の奥義を繰り出すためにチャージした。


 五、四、三、二、一.零を迎えたことにより、俺は黒いオリハルコンの剣を盛大に振り下ろした。


「喰らうがいい! 社畜の意地を分からせる! デスダーク・ディストラクション!」


 俺の最大にして最強の一撃が放たれた。黒い稲妻のような閃光の斬撃波に焼かれて、ジャイアントは断末魔をあげた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」


 その声と共に破壊の稲妻に焼かれて、黒い霧と共に霧散して、何かアイテムらしき物をドロップした。


 俺はゆっくりとそれに近付き、鑑定の魔法で調べると、思わず涎が出そうになった。


「こ、これは……巨人の牙じゃないか!?」


 そう巨人の牙は最強の片手剣である【ダークネス・ブレンド】の素材の一つなのだ。


 この世界で中の上くらいの実力しかない俺にとって装備の強化は必須と言っていいだろう。


 あとはアダマンタイトと、魔法樹の枝があれば、錬金術で完成させることができる。


 これは思いがけない儲けものだ。俺はスローライフを維持するためにももっともっと強くならなければならないのだ。


 もしかしたら終盤のモンスターがいまみたいにイレギュラー発生しないとも限らない。そうなれば俺の異世界スローライフはゲームオーバーだ。


 そうならないためにも強く成れる機会があるなら積極的に強くなった方がいい。


 それにゲーマーとしてキャラクターを育成するのは脳汁が出るほど楽しいのだ。


 俺は巨人の牙を収納魔法で納めて、再び空を飛翔した。ああ。もっと強くなりたい。俺は年甲斐もなく社畜生活と共に失われかけていたゲーマー魂を取り戻した。


 ~謎の女視点~


 私は思わず脳内の快楽物質が溢れ出る興奮を感じた。この辺りにとてつもない英雄因子を秘めている男性がいると察知してジャイアントを発生させてみたが、奴は思った以上の獲物らしい。


 あの英雄因子があれば私は王ではなく、神へと至ることができるであろう。この前影武者の魔王が勇者に倒されたと聞いたが、あの勇者はたいしたことはなかった。


 英雄因子の濃度が並み程度なのだ。あれが勇者などと片腹痛い。あれでは私を神への道へ至らしめることなど不可能だ。


 でもいまの奴は違う。黒装束に身を包み、まるで我ら魔族のような出で立ちでありながら、その実、英雄因子の量はまさにこの世界の救世主と言わんばかりのモンスターが見たら脳に快楽物質が走るほどのご馳走だ。


 それは我ら魔族にとっても変わらない。あの男、名は分からぬが、向かったのは『リザルトの街』の周辺だ。


 あそこを重点的にモンスターに攻めさせて、もう少し熟れてから頂く方が神へと至る確率がさらに上がるだろう。


 私は最高の獲物を前にして、抑えきれない快楽に身が焦がれそうだった。


「ああ。早く奴の魂を食べたい……」


 私はそう口にして、なんとか『リザルトの街』の様子を伺う方法はないかと思考を巡らせ始めたのであった。

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