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第16話『焼き肉デート』

 肉の焼ける音がする。じゅうっと焼ける快音が俺の胃袋を刺激する。まだか。まだか。必死に肉をひっくり返す。ちょうどいいくらいの焦げ目が徐々についてきたところで、俺はまずミーナの皿にトングで肉をよそった。


「ほら。塩タン焼けたぞ。食え!」


「うん。ありがと。いただきます!」


 ミーナは肉を頬張ると、まるで蕩けたように幸せな表情を見せた。


「んぅぅぅぅぅ。美味しいぃぃぃ♪」


 なんかちょっとその美味しそうに食べているミーナを見ていると、俺の胃袋も強烈に肉を欲してしまった。


 俺も塩タンを自分の皿によそい。レモン汁をかけてばくりと口にした。その瞬間、口内に幸せの旨味が広がった。あっさりとして、こんがりとした食感。その肉の旨味に俺は無表情ながらも静かに味わい、エールを一杯くいっと飲み干した。


「うん。美味い……」


 そして、二つ目のタンはサンチュに巻いて食うことにした。まずはミーナの分を作ってやって渡した。


「こうして食うと美味いんだぞ?」


 ミーナは半信半疑と言った感じだが、レモン汁をつけたあと、思いきって口内に放り込んだ。


 その時、ミーナはさっきより二割増し幸せそうに唸った。


「んぅぅぅぅぅ。これも凄く美味しいぃぃぃぃ♪」


 ミーナはまるで天国へと誘われたように昇天していた。俺も食べたくなってきたので、サンチュに塩タンを巻いて口に運んだ。サンチュのしゃきしゃき感と、塩タンの旨味が俺の舌を極楽浄土へと誘う。そのあまりの旨味に、俺は静かにエールを一口飲み。おっさん臭い雄叫びをあげた。


「ん、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 美味い!」


 俺はこの世の天国ここに極まれりと言った感じで、ミーナとひたすら塩タンに夢中になっていると、塩タンが終わる頃に、カルビが運ばれてきた。


「カルビですわん。ごゆっくりどうぞですわん!」


 薄切りであり程よくタレのついたカルビを見て、俺の食欲はさらに加速した。まずは育てなければ。


 俺はカルビを何個か網の中へと置いた。じゅうっと焦げる音と共に、俺の期待値が爆上がりした。


「ミーナ慌てるなよ。肉は焼き加減が命なんだ!」


「うん! 分かった!」


 こんがり肉が焼ける音が広がる。まるで焼肉は宇宙だ。俺は適宜、カルビの焼き具合を見ながらミーナの皿に肉を運ぶ。


 そして、ミーナが幸せそうに微笑みエールを飲む。その繰り返しだ。


 俺も久しぶりに焼き肉のタレでカルビを食べたが、あの甘じょっぱいタレがの肉を食らう度に、白米が止まらず、サンチュで巻いたり、後から届いたキャベツと交互に食べたりして、俺の満足感は最後のエールで最大級に達していた。


 そうやって肉を食らい尽くすうちに、俺とミーナは満足で腹いっぱいになった。


「クレイ。もう食べられないよ……」


「それは俺も同感だ。エールもたくさん飲んだしな。早めに店を出て、酔い覚ましに毒消しポーションを飲むか!」


「さんせーい。もうわたしも少し酔っちゃったし、吐く前に飲んどかないとね!」


「お前なぁ。吐くとか女子が気安く口にするなよ。下品だぞ?」


 俺が注意するとミーナは口を尖らせながらも、すぐ朗らかな表情になった。


「はーい! クレイの言うことはいつも正しいからね。きちんと言うこと聞きまーす!」


「ダメだ。こりゃもう完全に酔っ払いだ……」


 普段から酒を飲み慣れていない癖に、三杯もエールをお代わりするからこういうことになるのだ。


 俺はとりあえず会計を支払うことにした。


「すみません。ハウマッチで!」


「了解ですわん!」


 そう言えば転生して思ったがこの世界の言語は日本語だ。JRPGの世界なので当然と言えば当然なのだが。


 俺は金を支払いウェイトレスに礼を述べた。


「ありがとう。また来るよ!」


「はいですわん。次のご来店をお待ちしてますわん!」


 俺とミーナはそのまま焼肉屋を出てから近くの道具屋へと向かった。ミーナがでろでろだ。早く毒消しポーションを飲ませてやらないと。


 道具屋に向かう途中、冒険者の男女が噂話をしていた。


「おい。聞いたか。この辺りにジャイアントが出現するらしいぜ!」


「ええ!? ジャイアントって東大陸のモンスターよね。なんで中央大陸までやってきているのかしら?」


「それが突然の自然発生らしい。全くなんでこんな新人冒険者の街に、ツイてないぜ……」


 俺はその話題を聞き、すぐさまサーチの魔法を発動させた。遠くかなり遠くだが、確かにジャイアントらしき巨大生物の魔力反応がする。


 これは放っておくと俺のスローライフを脅かす危機となりかねない。


 俺は急ぎ足で道具屋へ向かい。毒消しポーションをミーナに飲ませて、自宅へと送った。


「せっかくの人のデートを邪魔しやがって! 社畜の意地を分からせてやる!」


 それにしても、まさかこのタイミングでジャイアントなんてな。

 これも英雄因子の影響か。クソが。

 俺のスローライフは俺の手で守り抜く。それが社畜の意地ってものだ。


 俺は裏路地に向かい、収納魔法で仮面と黒マントを取り出して装着すると、空を上昇して、ジャイアントのいる目的地まで向かった。


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